多くの工程を経て、職人の手で作り上げられる久留米絣
池田絣工房の事業が始まったきっかけと、生産している織物について教えてください。
池田絣工房の創業は、1919年(大正8年)です。もともとは私の曽祖父が城島町の造り酒屋に丁稚奉公に行ったことがきっかけで筑後地域にやってきました。当時は絣業が盛んだったので、造り酒屋から絣業へと奉公先を変え、手に職をつけて独立、当工房が誕生しました。
当工房は、主に藍染めと手織りで生産しています。久留米絣には手織りと機械織りがあり、それぞれ織る工程が少し違うのです。そのため、模様の均一性や繊維の密度、生地自体の強度(引き裂き)にも違いが生じます。
手織りの良さは、曲線や細い線、緻密な模様を表現できる点ですね。模様は少し不揃いになるのですが、そこに手織りならではの味わいが出るのです。実際に使っていくと、「強度が保たれていて、均一性がなく、いい意味で遊びがあるから良い」という手織りの魅力が、よく現れてきますよ。
手織り機には、投げ杼(なげひ)と足踏みの2種類あるのですが、当工房ではどちらも扱っています。
また、手織りの織元(織物の製造元)は、基本的に藍染めしかやらないところが多いです。しかし、当工房は一般的な反応染料や、色が長持ちしやすい染料なども使用します。もちろん、藍染めはこだわって行うのですが、そこに固執してはいません。最近は洋服需要がほとんどですから、需要に合わせたもの作りをしているところが、当工房の特徴です。