篠原テキスタイルが織りなす、デニムの多彩な表情とその魅力
2023.07.27
篠原テキスタイルが織りなす、デニムの多彩な表情とその魅力
誰もが一着は持っているであろうデニム素材を使って縫製された洋服。そのデニム素材にあらためて目を凝らしてみると、そこには職人の技が輝いている。
デニムは素材だけでなく、織り方などの工程によっても様々な表情を見せる。そんなデニム生地の製造に特化しているのが、広島県福山市にある篠原テキスタイルだ。同社は1907年に創業し、備後かすり製造からスタート、現在のデニム製造にいたるまで115年以上にわたり織物製造を続けてきた。
特にテンセル™やリサイクルポリエステルなどの素材を用いた、上品な表情を持つデニムを得意とする。デニムの深い魅力について、同社の代表である篠原由起さんにインタビューを実施。デニムの奥深さに触れるほど、その魅力に魅了され、デニムへの愛情はますます深まるだろう。
PROFILE|プロフィール
篠原 由起

篠原テキスタイル株式会社 代表
福山市駅家町で生まれ育ち、英数学館中学校・高等学校を経て大阪工業大学を卒業。その後、大正紡績を経て篠原テキスタイルに入社。
2022年7月1日付けにて篠原テキスタイルの5代目代表取締役社長に就任。

かすり織物からデニム製造へ

篠原テキスタイルは創業115年を超える老舗です。まずは、篠原さんが代表になるまでの経緯についてお聞かせください。
私はこの福山の街で生まれ育ちました。弊社が営むデニム工場の隣に実家があり、幼い頃から窓から工場の景色を見ることが日常でした。高校卒業までは福山で過ごし、その後大阪の工業大学に進学。卒業後には「いずれ実家を継ぐのであれば、生地の前工程である糸を学びたい」と思い、大正紡績に就職しました。

この紡績会社は、織物や編み物工場からのオーダーに応じて生地をつくるのに必要な糸を提供するだけでなく、生地、製品まで含めた糸の提案を行う特殊な企業でした。ここでは綿から製品ができるまでの全体的なプロセスを考え、どのような手順で製品を作っていくのかを様々な企業に提案しています。

大正紡績ではいろいろな産地を勉強させてもらい、様々な糸を販売しました。デニムの産地である岡山や広島に加えて、今治のタオル業者や和歌山のニットメーカー、奈良の靴下メーカーなどにも足を運びました。ここにいた7年間、工場の機械メンテナンスから商品開発、営業など多くのことを経験しました。

その後、あらためて篠原テキスタイルに入社し、生地製造の全ての工程を学び、2022年に社長に就任。現在は2人の弟と私を含めて、兄弟3人揃って篠原テキスタイルで活動しています。
大正紡績で培われたネットワークは今でも生かされることがあるのでしょうか。
そうですね。当時やりとりしていたお客さんや企業の方々からは、今でもたくさんのことを学ぶ機会をいただいています。

今治(タオル)や和歌山(丸編み)、奈良(靴下)などデニム以外の繊維産地にも行かせていただき、情報交換をさせていただいたり、共通の素材でモノづくりを行ったりしています。

日本国内には色々な繊維産地があり、各地で特徴のある生地が作られています。それら各産地の技術と我々デニム産地、特にデニムに用いられるインディゴロープ染色という色落ちして変化していく技法はこの産地(広島、岡山)特有のものです。

それを各産地の技術と組み合わせてデニム以外の生地の開発を進めていたり、編み物用のやわらかい糸を使ってデニムを織ったり、新たな可能性を日々探っています。

そこで出来上がった生地を共同で販売させていただいたり、生地の売り買いを含め、お互いに協力し合いながら、より良い製品を作り上げるための関係が築かれていますね。
1 / 4 ページ
この記事をシェアする