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2021.11.22

スタイレム瀧定大阪による高品質デジタルファブリックのデータベース構築

近年、3DCADを用いたデジタルデータの作成は、さまざまなブランドで行われるようになった。そこで重要になるのが、デジタルのファブリックデータだ。ファブリックデータは、質感の再現度といった品質の高さが重要視されているが、これからアパレルによるデジタル活用がさらに進むにつれて、今後は多種多様なファブリックのデータを比較検討できるようなデータベースへの要望が高まることが予想される。このような問題に取り組むのが、日本のテキスタイル業界大手の繊維専門商社、スタイレム瀧定大阪株式会社(以下スタイレム社)だ。
さまざまなファブリックを取扱い、ビジネスを続けてきた同社が、なぜデジタルファブリックのデータベースの構築に踏み切ったのか。そして、どのような形でデータベースの構築が行われているのか。スタイレム社の業務推進部部長兼DX推進室室長の熊西充さんにお話を伺った。

データベース構築によるシームレスなものづくり

スタイレム社では、2019年から3D CAD導入の検討を始めた。そのなかで、情報収集や導入検証におけるファブリックデータの取り込み作業が、3Dモデリングの大きなボトルネックのひとつであることに気づいたという。
ファブリックのストック販売事業を主軸とし、多くの顧客にファブリックを提供しているスタイレム社として、顧客のために何かできることはないかと考えた結果、3DCADの活用を見越してデジタルファブリックのストックを始めた。リアルだけでなく、デジタルでも繊維業界に貢献することを目指して、データベース化を進めることを決めたとのことだ。
スタイレム社では、デジタルファブリックを手軽に利用できるプラットフォームを来春に公開すべく、現在準備を進めているのだという。提供形式はライセンス方式含め現在検討中だが、繊維業界だけではなく幅広い事業者の利用を想定している。また、3Dモデリングプラットフォームのローンチを予定している企業との連携も並行して進行中であり、同社のデジタルファブリックをより多くの顧客に便利に利用してもらいたいと語ってくれた。
データベースの構築は内製に加え、スタイレム社でパートナーを選定して提携、構築を行っているとのことだ。ここで気になるのは、データベース化するファブリックの再現性をどのように高めているかという点だ。ファブリックデータは質感を表現するテクスチャ(画像)データとファブリックの物性データを組み合わせることで作成されるが、スタイレム社では特にファブリック画像のスキャニングにこだわり、高精度のスキャナー「エックステックス(xTex)」によるテクスチャ(画像)の取り込みを行っているという。単純にスキャンするだけでは、精度の高いファブリックデータを作ることは難しいためだ。
そうして取り込んだテクスチャデータに物性値を組み合わせ、さらに実際のファブリックを見ながら最終調整を行うことで、高品質のデータをつくり出している。
デジタルデータを実物と遜色ないレベルに引き上げられるのは、ファブリックを主業とするスタイレム社ならではの強みだろう。また、スタイレム社のデジタルファブリックにはすべてフィジカルなファブリックが紐づいており、デジタルで作った商品を即時に、実際のモノづくりへ展開できる。これがスタイレム社のデジタルファブリック最大の強みだと、熊西さんは語ってくれた。

サプライチェーン全体のDX化のために

また、スタイレム社はCG技術を活用したバーチャルアパレルを展開する株式会社GOOD VIBES ONLY社との資本提携も行うという。熊西さんによれば、スタイレム社が素材という川上からのアプローチで3D活用を考えているのに対して、GOOD VIBES ONLY社は店舗・ECという川下から3D活用を見ており、この視点と強みの違いが大きなシナジーを生むと考えているのだという。
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