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2023.05.24

Z世代・α世代に人気の体験型美容テーマパーク『Tierland』の新しいコスメ販売のカタチ

昨年11月、最新コスメを試すことができる体験型美容テーマパークとしてオープンした『Tierland』は、Z世代、α世代を中心に来場者は1万人を突破。だが、そんな『Tierland』は商品の販売を主とはしていない。『Tierland』はリアル店舗での体験データを同名のアプリで集計し、出展メーカーに提供するビジネスを展開。今や、大手をはじめ多くのメーカーに採用されている。気になるその仕組みについて、同ショップ・サービスを運営する株式会社トレンドキャスケットCEOの二階堂京介氏に話を聞いた。

テクノロジー×小売りでユーザーデータを可視化

テクノロジーやデータを活用した小売システムを他社に提供する「RaaS(ラース)」が注目されている。「Retail as a Service」の頭文字を取った略称で、直訳すると「小売業のサービス化」となる。『Tierland』も、リアル店舗での体験とアプリで得られるデータを提供するRaaSモデルのサービスである。
「ビジネスの仕組みとしては、各メーカーさんと月額契約を結び、ECへの送客や店頭での体験機会を提供しています。たとえば大手のコスメブランドの場合、これまではメーカーと生活者の体験機会はデパートしかありませんでした。『Tierland』はデパートとドラッグストアの中間の位置づけとなり、『試す』『体験できる』場所を設けつつ、そこで得たZ世代、α世代のデータをメーカーに提供しています」
『Tierland』の設計はこうだ。まずメーカーはリアル店舗『Tierland』に売り出したい商品をフルラインナップで出展する。ユーザーはアプリを通して予約をして来店し、そこでサンプルを試したり、体験イベントに参加したりすることができる。そして店頭ではアプリがリサーチツールとなり、ユーザーへのアンケートを自動的に分析し、その結果をメーカーにレポーティングする。この一連の仕組みは『Tierland』の特許システムとなっている。
こうしてメーカーはユーザーと商品の接点を得られるだけでなく、来店したユーザーのリアルな声によるSNSでの拡散が期待できる上、アプリで集められたアンケート結果や行動データのレポートを商品開発やマーケティングに活用することができるようになる。
質の高いデータを集めるには大きな母数が必要だが、『Tierland』は店舗への高い集客を実現している。
「リアル店舗を『体験型の美容テーマパーク』と位置づけ、無料で受けられるネイルやメイクアップ体験、肌診断のサービスなどを用意しています。ユーザーはメーカー提供の商品を体験してSNSで発信したり、アンケートに答えたりすると、この無料サービスが受けられるシステムになっています。この無料サービスが高い集客力につながっていて、アプリのダウンロード数の実に35%がアクティブユーザーになっています」

D2Cブランドや海外メーカーが重視する「体験」ニーズ

『Tierland』のユーザーのほとんどはZ世代やα世代であり、コスメの情報収集をSNSで行い、そのままECで購入することも多い層だ。
「この世代は、圧倒的にTikTokを情報源に購入するケースが多いです。憧れのインフルエンサーがおすすめする商品をそのまま購入する『推し買い』も起きています。しかしその一方で、試さずに買ったコスメが自分に合わないという事例も増えています。ですので、スマホひとつで完結してしまう『認知・共感』から『購入』のプロセスの間に、『体験』の機会を置くことが重要だと考えています」
この「体験」は、既存の大手ブランドだけでなく、ここ数年で台頭した国内D2Cブランドにおいても課題となっており、「一度は新商品を試してもらいたい」というニーズとマッチした。さらに中国系ブランドなど日本初上陸の海外メーカーにとっても「体験」の場は貴重であり、まさに『Tierland』がその場所を提供している。
「『Tierland』の実店舗に来るユーザーたちは、滞在時間が長いのも特徴です。ショップには常時30強のメーカーが出展しています。店頭では自分のお目当て以外の商品にも出会い、試してみて購入につながるケースも多いです。また肌診断や、定期イベントの“基礎化粧品講座”などの『体験』を通して選ばれた商品は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が長くなる傾向もあります」
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