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2019.06.18

ファッションテックから読み解く、島精機製作所ホールガーメント​®の3つの利点

ファストファッションのユニクロから高級ブランドのGUCCIまで、各社で取り入れられる​島精機製作所のホールガーメント​® 。​メリットとしては​シルエット​や​着心地​の良さが取り上げられるが、これを難なく実現しているかのように思わせる「技術」に注目してほしい。 
今回は​ファッションテックの視点で、ホールガーメント​®の3つのメリットを紹介する。 

1.受注生産が可能になる
2.サステイナブルである
3.スマートウェアとの親和性が高い

ホールガーメント​®とは?

そもそもホールガーメント​®とはどんな技術だろうか?ホールガーメント​®とは1回の編み上げで縫い目のない製品を作りあげる技術だ​。通常のニットは前身、背中、両方の袖と4枚のパーツを組み合わせて作るが、島精機製作所が開発した特殊な編み機「ホールガーメント​®機」を使えば​一着まるごと編み上げることができる。 そのためこれから紹介する3つのメリットが可能になる。 
Image Credit : 島精機製作所
Image Credit : 島精機製作所

1.受注生産が可能になる

従来のアパレルブランドでは服の製造に、多大な時間的・人的コストがかかっていた。商品の企画側と生産側で柄やシルエット、配色などのデザインを決定するため確認や修正を繰り返し行うこと、生産がASEAN諸国などの海外であるということが理由だ。 
しかしホールガーメント​®機を使えば、糸とデザインをプログラムするだけでデザイン通りの服を生産することができる。最新のホールガーメント​®機であればシンプルなセーターを1枚20分で編みあげ、注文から納品までも1週間で終わらせることができるという。そのため大量生産も可能だ。
  
またリアルな​シミュレーションができることもポイントだ。ホールガーメント​® はデザインシステム(SDS-ONE APEX3)があってはじめて服を製造できる。このデザインシステム上では、柄作成だけでなく配色や生地、糸を選ぶことも可能だ。​着用感やしわを再現できるほどのリアルな製品イメージ​を製作できるから驚きだ。
このシステムとホールガーメント​®機を使えば、イメージ画像のみでネット販売を開始し、​オーダーがきてから生産する​、受注生産もできるようになるという。
Image Credit : 島精機製作所
Image Credit : 島精機製作所
以前の記事で紹介したようにアパレル産業は在庫過剰が問題になっている。消費者の嗜好も多様化している中で、デザイン通りの効率的な製造ができること、リアルなシュミレーションができることは、今必要とされている受注生産を後押しする技術ではないだろうか。 

2.サステイナブルである

現在アパレル製品の国内の生産量は約3%で、縫製のほとんどはASEAN諸国やアフリカで行われている。労働環境も問題になっており、2013​年に​1,137​人の死者がでた​ラナ・プラザ縫製工場崩壊事故​は記憶に新しい。 
それらをホールガーメント​®機が代替できるのであれば、労働問題の改善に繋がるだけでなく、国内生産の割合も上がっていくだろう。
  
またホールガーメント​®の特徴として​カットロスを大幅に減らす​ことができる。 従来の製造方法では30%程度のカットロスがあったが、ホールガーメント​®ではそれがない。
さらに、パーツを縫い合わせる必要がないため、ロスが出る縫い代も発生しない。 縫い代は1着につきA4サイズ程度のロスが出ることから、機械だけで大量生産でき、縫い代がないホールガーメント​®がいかに環境に良いかがわかるだろう。 

3.スマートウェアとの親和性が高い

ホールガーメント​®がスマートウェアに活かされていることをご存知だろうか?
例えば水を通す管をニットに組み込み服に冷却機能をつけた例や、​ミツフジ​製の銀メッキ繊維「AGposs」を編み込んだ​hamon®​を作成した例がある。 
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