ファストファッションのユニクロから高級ブランドのGUCCIまで、各社で取り入れられる島精機製作所のホールガーメント® 。メリットとしてはシルエットや着心地の良さが取り上げられるが、これを難なく実現しているかのように思わせる「技術」に注目してほしい。
今回はファッションテックの視点で、ホールガーメント®の3つのメリットを紹介する。
1.受注生産が可能になる
2.サステイナブルである
3.スマートウェアとの親和性が高い
ホールガーメント®とは?
そもそもホールガーメント®とはどんな技術だろうか?ホールガーメント®とは1回の編み上げで縫い目のない製品を作りあげる技術だ。通常のニットは前身、背中、両方の袖と4枚のパーツを組み合わせて作るが、島精機製作所が開発した特殊な編み機「ホールガーメント®機」を使えば一着まるごと編み上げることができる。 そのためこれから紹介する3つのメリットが可能になる。 1.受注生産が可能になる
従来のアパレルブランドでは服の製造に、多大な時間的・人的コストがかかっていた。商品の企画側と生産側で柄やシルエット、配色などのデザインを決定するため確認や修正を繰り返し行うこと、生産がASEAN諸国などの海外であるということが理由だ。 しかしホールガーメント®機を使えば、糸とデザインをプログラムするだけでデザイン通りの服を生産することができる。最新のホールガーメント®機であればシンプルなセーターを1枚20分で編みあげ、注文から納品までも1週間で終わらせることができるという。そのため大量生産も可 能だ。
またリアルなシミュレーションができることもポイントだ。ホールガーメント® はデザインシステム(SDS-ONE APEX3)があってはじめて服を製造できる。このデザインシステム上では、柄作成だけでなく配色や生地、糸を選ぶことも可能だ。着用感やしわを再現できるほどのリアルな製品イメージを製作できるから驚きだ。
このシステムとホールガーメント®機を使えば、イメージ画像のみでネット販売を開始し、オーダーがきてから生産する、受注生産もできるようになるという。
以前の記事で紹介したようにアパレル産業は在庫過剰が問題になっている。消費者の嗜好も多様化している中で、デザイン通りの効率的な製造ができること、リアルなシュミレーションができることは、今必要とされている受注生産を後押しする技術ではないだろうか。
2.サステイナブルである
現在アパレル製品の
国内の生産量は約3%で、縫製のほとんどはASEAN諸国やアフリカで行われている。労働環境も問題になっており、2013年に1,137人の死者がでた
ラナ・プラザ縫製工場崩壊事故は記憶に新しい。
それらをホールガーメント®機が代替できるのであれば、労働問題の改善に繋がるだけでなく、国内生産の割合も上がっていくだろう。
またホールガーメント®の特徴としてカットロスを大幅に減らすことができる。 従来の製造方法では30%程度のカットロスがあったが、ホールガーメント®ではそれがない。
さらに、パーツを縫い合わせる必要がないため、ロスが出る縫い代も発生しない。 縫い代は1着につきA4サイズ程度のロスが出ることから、機械だけで大量生産でき、縫い代がないホールガーメント®がいかに環境に良いかがわかるだろう。
3.スマートウェアとの親和性が高い
ホールガーメント®がスマートウェアに活かされていることをご存知だろうか?例えば水を通す管をニットに組み込み服に冷却機能をつけた例や、
ミツフジ製の銀メッキ繊維「AGposs」を編み込んだ
hamon®を作成した例がある。