ここ数年、目に見えないほどの微細針(マイクロニードル)を配合したニードルコスメが幅広く展開され、従来からあるシートタイプに加え、美容液やクリームなどがラインナップされている。
美容機器で知られる「ヤーマン」も「ニードルコスメ」を発売しており、今回取り上げる「メディリフト ニードルリフトクリーム」を含むシリーズの累計出荷数は60万個[1]を超えた。果たしてニードルコスメの実力とは? 同製品の企画開発に携わったヤーマンの川辺氏に話をうかがった。
肌表面に「塗るスキンケア」に対し、ニードルコスメはマイクロニードルを肌に「刺し」、角質層に直接美容成分を届けることができるというメリットがある。
かつてニードルコスメといえば、ほうれい線や目元など部分的にアプローチするシートタイプの商品が中心だったが、近年はマイクロニードルが化粧水や美容液、クリームにも配合され顔全体をケアできるようになった。マイクロニードルの成分も、一般的なヒアルロン酸のほかにも研究・開発が進んでおり、ニードルの原料や配合される美容成分がそのまま商品の差別化につながる。
「当社のニードルコスメもヒアルロン酸を針状にしたシートタイプからスタートしており、使用した翌朝の肌のハリ感の違いを実感していました。スペシャルケアだけではなく、毎日のスキンケアでも手軽に取り入れられるものを作れないかと考え、まったく新しいマイクロニードルを探していました。そんなとき『スピキュール』に出会ったことから、『メディリフト ニードルリフトクリーム』の開発が始まります」
「スピキュール」は海洋生物由来のマイクロニードルで、その細さ髪の毛の10分の1程度。表面には無数の穴が空いていて、その穴に有用成分を入れることができる。
そんなスピキュールの特徴と、社内に蓄積されたスキンケアの知見や技術を組み合わせ「メディリフト ニードルリフトクリーム」は生まれた。3つのステップで働く美容成分浸透[2]までの流れはこうだ。
【やわらげる】まずは同時配合されているヒアルロン酸[3]とコラーゲン[3]が肌をやわらかくして、ニードルが刺さりやすい状態を作る。
【届ける】そこにコロイド化(ナノレベルに粒子化)された純金24K[4]に美容成分を、被覆させた独自原料「ゴールデンニードルコンプレックス」をまとったスピキュールが角質層に刺さる。
【放つ】角質層に直接刺すことで、効果的に美容成分を導入する。
クリームに配合されている5つの美容成分が、毛穴、乾燥によるくすみといった肌悩みにアプローチし、乾燥による小ジワを目立たなくすることも期待できるのだという。同クリーム1個当たりには、美容成分をまとったマイクロニードルが約100万本[5]も入っている。
「メディリフト ニードルリフトクリーム」はその名の通り同社の大ヒット商品「メディリフト」の化粧品ライン。「メディリフト」は表情筋をEMSで刺激しリフトケア[6]する商品で、使用後の変化はもちろん、筋肉がピリピリ、トントンと刺激され、しっかりケアしている感覚を「 体感」できることも人気の秘訣だ。
「化粧品は美容機器と違ってなかなか体感が得られないということで、ヤーマンが新たに化粧品を開発するなら、従来のスキンケアより一歩踏み込み、美容機器のように角質層の奥に成分を届けながら、しっかりと体感も得られる製品を開発できないかと考えていました。
スピキュールを配合したクリームは、美容機器でケアしているような体感を得られやすくなります。ピリピリとした体感とハリがアップする感覚は『メディリフト』のコンセプトにもぴったり合うと考え、『メディリフト』のラインで発売することになりました」
スキンケアにも体感を重視した発想はヤーマンらしいもの。実際、パール大のクリームを肌になじませていくと、ピリピリとした刺激を感じる。ニードルが肌に刺さり、しっかり働いてくれているような感覚になる。主力商品の「メディリフト」の名前を使ったのも納得だ。
もうひとつヤーマンらしい点は、「スピキュール」「コロイド化した金」「独自の美容成分」など別々の成分や技術をかけ合わせる発想。様々なテクノロジーを組み合わせて作られるヤーマンの美容機器にも通ずるものであり、それこそが商品の差別化、強みにもなっている。
肌に触れるものだから刺激と効果、安心のバランスを測るため、丁寧に時間をかけて試行錯誤したという同クリーム。
「ただニードルの量を増やせば効果が上がるか、というとそうではないんです。私自身も肌があまり強い方ではないので、使ってみて翌日の肌の状態がどうか、長期間使ってもトラブルがないかなど、様々な試作品を自身の肌でも試しています」
昨年9月には消費者のニーズに応える形で高保湿タイプの「メディリフト ニードルリフトクリーム ディープモイスト」をリリースした。こちらはニードルの本数はそのままに、美容成分をリッチにさせた商品だ。
今年5月に設立45年を迎えるヤーマンの特許取得数は累計308件[7]にものぼる。「まだ誰も足を踏み入れていない未知のエリアにユニークな価値をつくる」ことをモットーに、今後も商品開発をしていくとのことだ。
[1]2019年9月〜2022年7月末までのメーカー出荷数累計(メーカー調べ)
[2]角質層まで
[3]保湿成分
[4]整肌成分
[5]製造上、本数には若干の変動があります
[6]引き上げるように動かすこと
[7]2022年4月末時点での取得済みの特許権の累計数
ヤーマン株式会社 化粧品企画室
美容機器のメーカーとして知られる同社のコスメブランドの開発企画に関わる。2019年に『メディリフト』のスキンケアラインを立ち上げたほか、昨年15周年を迎えたミネラルコスメブランド「オンリーミネラル」、料理家など手を使うプロの現場で愛されるハンドクリームが人気の「プロ・業務用」、塗るよりキレイな浴びるだけのミネラルファンデーションミスト「ミネラルエアー」などに携わる。
Text by Junichi Suzuki(ALTANA inc.)