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2022.05.25

「分かりやすさ」と繁華街のファッション:佐々木チワワが描く“ぴえん系女子”と歌舞伎町

若者のファッションは激しく移り変わる。そして、若者のファッションには拠点となる場所がつきものだ。たとえば銀座、原宿、渋谷などさまざまな街と特定の流行が結びつけて語られてきた。そのなかで、近年着目を集めるのが新宿・歌舞伎町やトー横(歌舞伎町のTOHOシネマズ横の広場)にいる若者たちと、そのファッションスタイルだ。
さまざまな社会背景が変化している今、現代のファッションスタイルを形作る都市や繁華街が持つ独特の力とはなんだろうか。今回は、新宿・歌舞伎町へのフィールドワークから若者の消費について描いた『「ぴえん」という病 SNS時代の消費と承認』(扶桑社)の著者で、ライターの佐々木チワワさんに、「ぴえん系女子」や歌舞伎町のファッションと、その特性についてお話を伺った。
PROFILE|プロフィール
佐々木チワワ
佐々木チワワ

2000年生まれ、東京都出身。10代の頃から歌舞伎町に出入りをし、自殺を止めたことをきっかけに「歌舞伎町の社会学」を研究。その傍らライター・コメンテーターとして多数のメディアに執筆・出演中。著書に「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認がある。グランドジャンプにて「ヤマアラシのシーシャ」、週刊FRIDAYにて「令和4年、歌舞伎町は今」連載中。

Image Credit:@tsubasaworks_12

歌舞伎町における「ぴえん系女子」と「地雷系/量産型」ファッション

佐々木さんのご活動について簡単に教えてください。
慶應義塾大学の総合政策学部に通っています。大学で新宿・歌舞伎町の社会学というテーマで研究をしている傍ら、ライターとして週刊誌に記事を書いたり、最近は漫画の原作や、歌舞伎町のカルチャーや現代若者論の論客としてコメンテーターなどもしています。
もともと文章を書くのは好きで、高校生からコラムを書くライターのバイトをしていました。大学に入って何をしようかなと思っていた時に、歌舞伎町で現実逃避をしていて(笑)15歳から歌舞伎町には通っていましたが、18歳になって遊ぶ幅が広がっていったとき、たまたま自殺の名所と言われているビルで女の子の自殺を止めた経験がありました。そのときに「お金使ってなきゃ私って生きてる意味ないじゃないですか」と言われ、そこから「歌舞伎町における価値と消費とはなんだろう」と思い始めたのが活動のきっかけです。
「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認
「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認
著書では、ぴえん系女子がトピックの1つとなっていますが、改めて簡単にご解説いただけますでしょうか。
「ぴえん」はもともとは悲しい感情を表す言葉で、一時期から、絵文字と同じように(🥺)ぴえん顔という表象が漫画などで行われ始めました。そこから派生して現在では、ぴえんという言葉を「それはまじぴえんだわ」などの言葉として使ったり、ぴえんっぽい言動をしそうな人を「ぴえん」と代名詞、記号として使われることがあります。その「ぴえん」を指すもののなかに、ファッションも一部含まれています。
「地雷系」とか「量産型」のファッションをしているだけでは、そう呼ばれることはありませんが、たとえばその子が歌舞伎町という場所にいて、リストカットした跡があって、ストロング缶を持って酔っ払って「推ししか勝たん」と言っていたら、ぴえん系と言えるわけです。つまり、ファッションと行動様式を組み合わせた結果、彼ら/彼女らは「ぴえん系」女子とカテゴライズされているということです。
量産型、地雷系などのファッションを簡単に教えていただけますか。
「量産型」という言葉は、「秋葉原(に多い)」「女子大生(に多い)」「AKB的」ファッションなどで使われる言葉だったのですが、ある時からオタクファッションにも使われるようになりました。アイドルの現場に行く女の子が、ニコイチで同じ服装をしているとき、この本では「量産型」と説明しています。具体的には、白とかピンクのフリルなどが特徴です。
対して「地雷系」というのは、髪の毛が真っ黒か派手髪が基調で、メンヘラっぽい要素があります。その中でも「甘め地雷」など、新しいカテゴリも出てきています。それも2019年〜2021年くらいがピークだったので、最近はラフになり変わってきた印象を受けますが、最初はメンヘラカルチャーやバンギャ(バンドギャル)的なもの、メン地下(メンズ地下アイドル)、ジャニーズなどの「オタク」に由来があると思います。
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