2022.12.13

カラーメイクを無数にシミュレーション:Maison KOSÉ銀座「COLOR MACHINE」

株式会社コーセーは、東京工業大学の渡辺義浩研究室が保有する最先端の高速プロジェクションマッピング技術と、同社で開発した色補正技術を組み合わせ、実際の顔で体験できるリアルなメイクシミュレーションシステムを開発した。

このシステムはコーセーの直営店Maison KOSÉ銀座で“ビューティーアトラクション”として展開中の「COLOR MACHINE」に応用されている。このCOLOR MACHINEは、今年8月の店舗リニューアルの際に設置されて以降、毎月の予約がすぐに埋まってしまうほどの人気アトラクションとなっている。

COLOR MACHINEはどのようなサービスで、そこに搭載されている技術はどのようなものなのか。今回はコーセー マーケティング戦略部 グループマネージャーの杉﨑さん、COLOR MACHINEの技術開発に携わったコーセー研究所 メイク製品研究室の大石さんに話を伺った。

PROFILE|プロフィール
杉﨑 洋
杉﨑 洋

すぎざき ひろし
2002年入社。営業職、ブランド企画職を経て、現在はマーケティング戦略部に所属し、マーケティング領域を担当しながら、子会社であるコーセープロビジョン(株)の代表を務める2019年にコーセーのブランドを横断したMaison KOSÉオンラインを立ち上げ、同名のストアを銀座と表参道に展開し、独自性の高い美容サービスを提供。

PROFILE|プロフィール
大石 郁
大石 郁

おおいし かおる
2015年入社。メイク製品研究室に所属し、ベースメイクアイテムの製剤化研究開発に従事し、製剤の基礎研究から商品開発までを幅広く担当。COLOR MACHINEの技術およびサービス開発を担当。

自分で試せるミックスドリアリティ

2022年8月にMaison KOSÉ 銀座の1階フロアを全面リニューアルしたとのことですが、その内容について教えてください。
杉﨑

2019年にコンセプトストアとしてMaison KOSÉ 銀座をオープンしました。コンセプトには「Find Your Own Beauty」を掲げ、それぞれのお客さまにあった美の提案を行ってきました。今回は1階部分をメインにリニューアルし、新たに「COLOR MACHINE」のほか、不要になったメイクアップ化粧品をアップサイクルした絵具でアート体験ができる「GREEN ATELIER」を新設しました。

リニューアルは年に1、2回行っており、その都度お客さまに伝えたいトピックスや実際に試してもらいたい新しいサービスやモノを集約する場所として運営しています。

COLOR MACHINEの特徴について教えてください。
大石

COLOR MACHINEは当社研究所と東京工業大学が共同開発した、3D高速追従プロジェクションマッピング技術を活用した最先端のメイクシミュレーターです。実際の自分の顔の上にアイシャドウ、チーク、リップを自由に投影することができ、8000通り以上のカラーの組み合わせから自分の好きなメイクを瞬時に体験することができます。

顔の動きや、表情に合わせてメイクも追従するので、本当に顔の上にメイクをしているかのような自然な仕上がりが体験できます。

これまでのメイクシミュレーションは、画面上などの2Dで行うものがほとんどで、シミュレーション時と実際に顔に使用した時の印象が違っているということもあったのですが、今回の技術により、自分の顔に直接メイクが投影されることで、似合うカラーアイテムを納得性高く選べるサービスとなっています。

つまり、実際の自分の顔ならではのミックスドリアリティ(複合現実)でのメイク体験がお楽しみいただけるわけです。

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COLOR MACHINEを体験する際は、どのような流れなのでしょうか。
大石

まず、体験の前に簡単なカウンセリングを行い、ベースメイクと眉メイクのみの状態になっていただきます。そこにMaison KOSÉが提案するパーソナルカラー別にカテゴライズされた色パターンをCOLOR MACHINEで投影していきます。最後に、投影したアイシャドウ、チーク、リップの組み合わせからベストルックを決め、それらのデータに基づきビューティコンサルタントが実際にそのルックを再現したメイクを施す流れになっています。

シミュレーション後に現実でメイクを仕上げる、というところもこのサービスの肝となっていて、COLOR MACHINEで体験したことを実際に顔に反映できるところがお客さまの満足度に繋がっているのではと思います。

短時間で無数にカラーメイクが試せて、リアリティのあるシミュレーションができるので、体験される方はこれまで使ったことがない色に挑戦される方も多いです。ビューティコンサルタントがアドバイスや実際の商品を紹介するプロセスもあるので、開発した最先端技術と当社の強味であるカウンセリングによる相乗効果があるサービスとなっています。

画像: メイク投影イメージ
メイク投影イメージ
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大石

先ほどカラーの組み合わせは8000通りとお伝えしましたが、チークを入れる場所やアイシャドウを広げる幅なども選択できるため、その全てを組み合わせると、実は204万通りになるんです。そのため、それぞれのお客さまにぴったり合ったカラーメイクを提案することが可能となっています。

サービスは無料で体験いただけ、1回90分の枠を設定しています。元々リップだけ買う予定だった方が、アイシャドウも購入してくださったりと、多くのお客さまにメイクの楽しさを実感いただけていると感じています。

実際に体験したユーザーからはどのような声が届いていますか。
大石

多くのお客さまが「今まで挑戦できなかった色を気軽に試すことができたので、新しい自分に出会えた」というようなコメントを寄せてくださっています。事後アンケートにおいても、サービス全体の満足度については「非常に満足」を10点満点として平均9.8点、「シミュレーションはメイクとして自然に見えますか?」という評価も「非常に自然」を10点満点として平均9.3点と、非常に高い数字をいただいております。

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ちなみに、COLOR MACHINEを体験される方の年齢はどの層が多いのでしょうか。
杉﨑

20代のお客さまが最も多いです。自分に似合うメイクやトレンドメイクなど、色々試してみたいという方が多いようです。

来店される方の年齢層も若年層の方が多い傾向にあり、実際に店舗で実物を見て自分に合ったものを見つけたいという気持ちが大きいのかもしれません。今はさまざまな情報をリサーチしたうえで商品を選ぶことができるため、失敗することに慣れていない世代でもあると思っています。

そのため、来店される方は自分に合うと思う化粧品を事前に見つけた上で、特定の商品を買いにくる方が多いです。“指名買い”とも言われますが、みんながいいと思う化粧品だけでなく、本当に自分に合ったものを買うことができる手助けにCOLOR MACHINEがなっていけたらと考えています。

新しい自分に出会うきっかけになるサービスを目指す

COLOR MACHINEはコーセーの研究所と、東京工業大学が共同開発に至ったとのことですがこちらの開発背景について教えてください。
大石

当社ではかねてより、肌に光をあてた時の見え方や印象に関する研究を進めていたのですが、今回共同させていただいた渡辺先生の研究室では、追従性が高いプロジェクションマッピング技術を開発されていました。そこで同じ光を扱う技術として、何かしらのメイク体験に応用できるのではと考えていました。ちょうどそのタイミングで、渡辺先生がシンポジウムに出られるという情報をキャッチし、直接会いにいったことから共同研究がスタートしました。

渡辺先生の技術を応用することで、COLOR MACHINEでは秒間1,000回以上の速度で映像を更新し、顔の動きに応じて瞬時に生成されたメイクを約6ms(ミリ秒)の遅延で投影しています。これは人間の目では認識できないくらいのスピードであり、このように顔の動きにぴったり追従する投影に、弊社の色補正技術を加えることで実際の自然なメイクと印象を近づけることに成功しました。

開発上、難しかった点はどの辺りになりますか。
大石

当社ではメイク投影における色補正などを担当していたのですが、光でメイクを再現するという前例がないため、メイクのパーツや色の再現が特に難しかったです。たとえば、白い紙に黄色を当てれば黄色が出ますが、肌に黄色を当ててもそのままの色では発色しません。肌の色に対応した色補正をするなど、本当にメイクしているような色の再現に試行錯誤しました。

肌の色が違うとメイクの再現も異なります。現在は日本人など、アジア人向けの色補正を搭載していますが、さまざまなスキントーンへの対応がこれからの課題です。

いまは人種や性別、年齢などにとらわれず自分らしさを大切にする時代です。そのなかでメイクも1つの自己表現になるツールだと考えています。COLOR MACHINEも、そういった個性を引き出したり、新しい自分に出会うきっかけになるサービスを目指していきたいです。

開発にはどれくらいの期間がかかったのでしょうか。
大石

正式には2020年4月から共同開発を始めたので、2年ちょっとでCOLOR MACHINE をローンチしています。これにはかなりのスピード感をもって行いました。これから、さらなる進化、アップデートをしていきたいと思っています。

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最後に、今後のビューティーテックに関する市場がどのように変化していくのか、御社のお考えを教えてください。
杉﨑

コロナ禍でMaison KOSÉ銀座をリニューアルしましたが、来店されるお客さまの反応を見ていると、体験型のビューティーストアの需要が非常に高くなってきていると感じます。今回のCOLOR MACHINEではテクノロジーだけでなく、ビューティコンサルタントによるタッチアップを一緒に提供しており、お客さまのニーズをうまく捉えられたのではと思っています。

これまで、コロナ禍でも十分感染対策を行った上でメイクイベントを実施していましたが、すぐに満席になってしまうほど人気でした。コロナ禍を経て、プロにアドバイスを聞きたい、教えてもらいたいというニーズが高まっているのを実感しています。

ビューティーテック市場ではスマホやPCなどで体験できるメイクアップサービスが多くリリースされてきていますが、どんなにテクノロジーが発達しても、実際に美容部員とコミュニケーションをとったり、店舗で商品を見ることへのニーズはなくならないと考えています。弊社としても、オンラインは今後も活用していきますが、リアルで体験できるビューティーテックも提供し続けたいと考えています。

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