Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo
2020.10.26

プロセスの再構築でクリエイティブは加速する 「MAGARIMONO」が挑む新しいものづくり(前編)

2020年6月、クリエイティブとテクノロジーを掛け合わせたフットウェアブランド「MAGARIMONO」がローンチされた。ファーストコレクションである"MAGARIMONO ORIGINALS"では、3Dプリンタを使って生産した4型のフットウェアを販売。独自の生産・販売プロセスで生み出されたその独特なデザインからは、これからのものづくりへの可能性が感じられた。
そこで、「MAGARIMONO」を立ち上げたフットウェアデザイナーの津曲文登さん、デジタルデザイナーの小野正晴さんのおふたりにインタビューを実施した。
前編では、ブランドの立ち上げの経緯から「MAGARIMONO」の生産プロセスの特徴、ファッション業界の課題や異なる専門性を掛け合わせるメソッドまでを伺った。

プロダクトの生産・表現プロセスの再構築・再提示

まずは、フットウェアブランド「MAGARIMONO」のブランドコンセプトや特徴について教えてください。
津曲「MAGARIMONO」は、“異端が未来のスタンダードになる”という意味を込めて、「STEP DIFFERENT」をコンセプトに掲げたブランドです。従来のフットウエアだけではなく、あらゆるプロダクトの生産・表現プロセスの再構築・再提示にアプローチしていこうと考えています。
「STEP DIFFERENT」というコンセプトを思いついた経緯をお聞かせください。
津曲個人規模の組織でも何か新しいものを生み出し異端を発信し続けることが、何十年後かの未来のスタンダードになっていくだろうと考え、我々は「STEP DIFFERENT」と付けました。たとえば3Dプリンタ技術は、すでに大手メーカーなどが取り入れているかと思いますが、テクノロジーをうまく使えばプロダクトの生産工程は全て新しくつくり変えることができるはずです。そして、それは我々のような小さいメーカーやブランドの規模でも実現できることなので、デザインや機能性はもちろん、生産プロセスをふくめた新しいプロダクトづくりに挑戦しています。
どのような経緯でブランドを立ち上げられたのですか?おふたりのバックグラウンドもふくめてお聞かせください。

津曲僕はもともと一般企業で働いていたのですが、靴づくりに携わりたいと思い退職して専門学校に靴専攻で入学しました。その後クリエイターとして活動していたのですが、3Dプリンタなどのテクノロジーを使えればできることが増えるなと考えるようになりました。ただ、自分自身データを扱えなかったりと、1人で製作する困難さで悩んでいたときに、前職で小野と出会いました。
小野僕自身はメイカーズムーブメントに触れて、ものづくり領域における3Dプリンタなどのテクノロジーの可能性に興味を持ちました。特に、ひとりひとりがユニークなかたちを持っている人体に関わるものへのアプローチとして3Dプリンテイングに着目して、個人で服づくりなどの活動をしていました。そのなかで、製品として実装するハードルを越えたい、それを越えることが一番面白いと考えるようになり、最も実現可能性が高いと感じていた靴の領域で一緒に取り組めるクリエイターを探していたところ津曲と出会ったのでブランドを設立しました。

これまでのつくり方を超える新しい靴づくり

「MAGARIMONO」の生産プロセスの特徴を教えてください。
津曲従来は補強用の芯材や装飾用の素材、ベースとなる生地や皮などの複数のパーツをひとつひとつ組み合わせて靴をつくっていましたが、我々の製法では補強材も装飾材も一体成形で出力するため、素材の端切れなどの材料のロスが一切発生していません。また、従来の靴づくりに比べて、パーツの点数や組み立ての工程が大幅に省略されています。最後は職人の手で仕上げるのですが、我々はこれまでのつくり方とは異なるプロセスで靴をつくっています。
当初はソールのみを3Dプリンタで出力して、従来の製法でつくったアッパーを貼り合わせようとしていましたが、工数や素材の確保などに課題が多く、安定供給することが難しいと判断したので、アッパーも3Dプリンタで出力する方法に早い段階で切り替えました。
小野パーツ定数を減らしたことはもちろんですが、1つのパーツに複数の機能を持たせられるようになったことが大きいです。また、工場に設置されている大がかりな設備を使わずにプロダクトをつくれているので、1点からの受注生産も可能になっています。
1 / 3 ページ
#FactoryTech
#3DCG
この記事をシェアする