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2020.10.28

プロセスの再構築でクリエイティブは加速する 「MAGARIMONO」が挑む新しいものづくり(後編)

2020年6月、クリエイティブとテクノロジーを掛け合わせたフットウェアブランド「MAGARIMONO」がローンチされた。ファーストコレクションである"MAGARIMONO ORIGINALS"では、3Dプリンタを使って生産した4型のフットウェアを販売。独自の生産・販売プロセスで生み出されたその独特なデザインからは、これからのものづくりへの可能性が感じられた。
そこで、「MAGARIMONO」を立ち上げたフットウェアデザイナーの津曲文登さん、デジタルデザイナーの小野正晴さんのおふたりにインタビューを実施した。
後編では、これからのブランドの展開やテクノロジーを活用することで生まれるクリエイティブの可能性、これからのファッション業界と「MAGARIMONO」の展望について伺った。

テクノロジーもあくまで手段でしかない

ファーストコレクションは3Dプリンタを活用されていますが、今後レーザーカッターなどほかのテクノロジーを活用する予定はありますか?
津曲ファーストコレクションは3Dプリンタの技術をベースにしていますが、素材などの限界も出てくるはずです。また、あらゆるテクノロジーは進化していきますし、扱える素材も自ずと増えていきます。なので、活用する手段を僕ら自身が制限する必要はないかなと。新しいテクノロジーが出てきたときに、それを扱っていく人がどんどん生まれて、プロダクトに落とし込んでいかないと生み出せるものの幅が狭まってしまうと思います。
小野3Dプリンターを使ったから面白いのではありません。3Dプリンタをよく考えて使ったから面白いのであって、その使い方を考えないとだめなんです。全ては手段でしかないので、レーザーカッターを使おうが3Dプリンタを使おうが、何でもいいと思っています。
我々は、単にテクノロジーを使って表現することではなく、そのプロダクトが存在するまでの過程や存在する理由そのものを根本から変えることを目的に始めました。既存のやり方やルールをどれだけ壊せるかを判断基準にしているので、それに適しているのであればほかのテクノロジーだけでなく、もしかしたら既存の職人さんと組んでやるかもしれません。あくまでアイデア次第かなと。3Dプリンタなども根本からひっくり返すことができるという利点があるから使っているだけであって、デジタルテクノロジーオンリーというわけではありません。

プロセスから見直すものづくりが新しいプロダクトを生む

たしかに、目的と手段が入れ替わってしまい、デジタルテクノロジーを使うことだけを優先してしまうことはあると思います。
津曲我々の場合は、僕が靴づくりについて、小野がテクノロジーについてしっかりとした知見や技術をもっているから靴の耐久性や履き心地を担保できています。なので、なにかしらの手に職がある技術者同士がうまくマッチングできていれば問題はないのだと思います。
小野表層の表現だけに囚われるのではなく、それをつくり出すまでのプロセス全てに関心を持っていないと新しいことはできないと思います。単にカッコいいものができたからいいのではなく、そのカッコいいものがどうやってできたのかを考える。つくり方がわかっていれば、工程の無駄を見直すこともできるはずです。方法が変わればアウトプットも変わるので、プロセスから見直すようなマインドがないと新しいものはつくれないんじゃないでしょうか。

ふたりの専門性を1人が実現することは可能か?

ものづくりの専門性とデジタルテクノロジーに関する専門性を同時に習得することは可能でしょうか?

小野テクノロジー側に関してはどんどん使いやすくなっているので、さまざまなハードルは下がっていって、将来的に両方のノウハウを持つ人が出てくる可能性はあるかもしれません。しかし、ある程度の専門性は大事だと思います。ひとつの領域について掘り下げるには時間もかかるし経験も必要なので難しいかもしれません。もちろん、僕らのようなものづくりのあり方を僕らが広めていくことで、テクノロジー側に寄った靴職人のような存在が出てくる可能性もあるかもしれません。
津曲手広くやろうとすると知識も経験も表面的になってしまいます。靴に関してもすでにあるデジタルテクノロジーを使えば一体成形のサンダルのようなものは簡単につくれるかもしれませんが、よりよいものをつくるためには、ある程度深掘りした専門性が求められるはずです。異なる専門を持つ個人個人がいることで超えられるものもあるのかなと思います。
小野僕らは、知ってることとできることの間には大きな谷があるという話をよくします。ある物事についての知識と実際にできたという経験は全く別物ですよね。もちろん、知識がなければできないのですが、知っているからといってできるわけじゃない。やはりそのできたという経験の方が大事だと思います。
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