2022.11.11

最新のAI&AR技術でメイクやアクセサリーのバーチャル体験を提供:パーフェクト社

ARビューティーアプリ「YouCam メイク」を筆頭に、高度な顔認証技術とAI技術でメイクやアクセサリーのバーチャル体験を提供するパーフェクト社昨年の取材から1年、新技術の開発とともに新たなサービスを次々とリリースしている。

コロナ禍を経て、いっそうビューティーテック市場は盛り上がりを見せているが、パーフェクト社では一体どのようなアップデートが行われたのだろうか。今回は同社の代表取締役である磯崎順信さんに、AI&AR技術を導入した企業の実績や新技術について話を伺った。

PROFILE|プロフィール
磯崎 順信

デジタルメディアテクノロジー関連の外資系ベンチャー企業の日本代表等を経て、2015年にPerfectCorp.の日本法人の立ち上げより現職で参画。バーチャルメイクアプリ「YouCam メイク」をはじめ、AI/ARによる新しい消費者エンゲージメントプラットフォームを多くのブランド・小売店・メディアに向け提供し、エコシステムを確立。

質の高いエンゲージメントを提供

これまでAI&AR技術を導入した企業に、どんな好影響がありましたか。

導入いただいた会社様の流入を増やすことはもちろん、一度入ってきたお客様を捕まえる力があるというのはこの1〜2年で立証されてきています。

たとえば、ブランドECサイトの滞在時間が2〜4倍に増えたクライアント様が増えてきていますね。また、通常のオーガニック流入と比較した際に、バーチャルメイクを経由した後のお客様は非常にコンバージョンが上がりやすく、購入に繋がったり、ブランドや商品を好きになっていただくためのきっかけになっていると言えます。

なかには店頭で導入された会社様の実績で、売り上げが130倍も伸びるというケースもありました。アイシャドウが1日に1、2個売れるくらいだったのが、導入後は約300個売れたということですね。こういった形で色々といい結果には繋がっていますが、我々が提供しているのは「質の高いエンゲージメント」に尽きます。それをうまく使いこなしていけば非常に大きい結果に繋がるということですね。

現時点では11か国に拠点を置き、450以上のブランドさんとお取り組みをさせていただいています。

バーチャルトライオン機能を導入することで、テスター廃止・削減や返品率低下による廃棄量削減、輸送によるCO2排出量の削減なども支援しているとお聞きしました。

そうですね。消費者向けのカラー剤を提供している会社様の多くで、弊社の髪色シミュレーションARをご利用いただいており、これまで店舗に置いていた毛束色サンプルはすべてまたは一部を撤廃しています。

これにより、花王さんでは年間で56トン排出していたプラスチックゴミを0できたそうです。他の会社様を合わせると、肌感覚的には100トンほどのプラスチックゴミを削減することに貢献できたかなと思います。

バーチャル試着は、実際のECの売り上げにも繋がっているのでしょうか。

いえ、実はバーチャル試着をサイト上で体験しても、そのまま商品を購入することはほとんどないんです。これは日本ならではの特徴で、国内の消費者はいまだに9割以上が店頭でショッピングをしているというデータもあります。

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年間のEC率の推移を見ると、2019年と2021年でほとんど変わっていないんですね。コロナ禍前後でも変わらないということは、そもそもEC率は上がりづらいものなのかもしれません。

日本の消費者は実際に商品を手にとって、ものを確かめるという行動がそもそもハードルの低いものだと感じており、また買い物がそれほど不便ではないことも要因としてあると思います。欧米ではハイブランドコスメの買い物をするとなると、少し離れた大型商業施設に行かないといけなかったり、普段の動線からかなり外れないと店舗に訪れることができないケースが多いのです。

しかし、日本の場合は、特に都市では駅中や駅近など日常の動線上にさまざまなショップが存在しているため、実物を見ないで買うことのリスクを取る必要性が比較的低くなります。

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実際にクライアント様にも「スマホでアクセスできるバーチャル体験だからといって、無理にECに連れてこようとすると逆効果になりますよ」と伝えているんです。つまり、これは1割に満たない人に対する施策を優先してしまうことになるので、それであれば購入方法はオフラインでもオンラインでも「いい試着体験」を提供していく方がいいですよね。

バーチャルトライオンのデータを見ると、グローバルの1位、2位を占めるのが日本で人気のブランドさんなんです。つまり、日本の消費者はデジタルツールに関しては積極的に使ってくれる傾向がありますので、エンゲージメントツールとして活用できるんですね。その上で実際に買うのは店頭というのが、日本の消費者の最大の特徴なんです。

そのため、我々のツールを使っていただき、口コミサイトなどで情報収集した上で実際に店頭で購入することになると思うので、消費者の頭の中のほしい物リストの上位に入ることを目標にツールを活用されるのがいいと思います。

やはり、実店舗では実際に試着された方が購入に繋がりやすいということを、販売側としても熟知されていますし、1色でも、一品でも多く試してもらいたいのが前提にあると思います。より実体験に近いリアルな状態でAR試着ができるようになれば、デジタル上でも同様の心理が働くので、エンゲージメントを高めるツールとして活用いただければと思います。

よりリアルな試着体験ができる新技術

前回のインタビューでは主にメイクやスキンケア領域でのサービス概要をお聞きしました。今回、新たにアップデートされた内容について教えてください。

まずは、メイクのなかでバージョンアップした「YouCam チュートリアル」になります。こちらは、メイクチャートとHow toをARでユーザー自身の顔の上で表現できるツールになります。骨格診断や肌色診断などのAI機能を駆使して、お似合いのメイクルックをを提案した後に、実際にユーザーが自身の顔にメイクを再現する際の「壁」を乗り越えていただくために考案されました。

YouCam チュートリアルは、メーキャップアーティストがメイクの仕方を細かく説明する対話型ARメイクの仕方ビデオで、ユーザーの顔をベースに化粧品をどのように使えば上手にメイクを施せるかを学ぶことができるものです。

これを活用することで、実際にパーソナライズされたレコメンデーションで購入いただいた商品と、このビデオコンテンツが再生できるスマホなどのデバイスを鏡の前に持っていくことで、実際にメイクルックを再現できるのです。

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技術面ではいかがでしょうか。

AgileHandTMという機能ですね。元々AgileFaceという技術がありまして、顔の特徴点を106ポイントのランドマークとしてトラッキングしているんですが、それに加えてGoogleARコアと同じようなメッシュ型のもので、かつはるかにメッシュの数が多い擬似3D化した顔のトラッキングを行っており、それと同じものを手に当てはめてAgileHandTMという技術を生み出しました。

こちらは手指の位置だけでなく、関節や手首の隆起の部分も捉えますし、手の回転にも自然に対応できるようになっています。

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それに新たに加えたものがPBR(物理ベースレンダリング)/IBL(イメージベースライティング)という技術になります。元々は映画やゲームのCGで使われていた技術ですね。

本物と見分けがつかない、よりリアルなものを投影できるんですが、それをARで、かつリアルタイムで映し出すには最適化が非常に難しく、高度な技術を使っています。これを搭載することによってスマホ一つで、サイトから誰でも簡単に本物に近い試着体験が可能となりました。

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PBR/IBLを搭載すると、金やプラチナなど表面のテクスチャーや、ガラスやダイヤモンドの質感、反射の仕方、屈折率のパラメーターをつけることができます。ARの画面上でも見た目で違いが感じられるようになっているんです。

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イヤリングの場合はそれぞれの重さに合わせたパラメーターが設定できるので、物理的に正しい揺れ方をARで体験できます。

特に驚かれるのは、見えていない部分もきちんと反映されていることです。例えば片方の耳をよく見るために顔をカメラに近づけると、もう片方の耳は画面からほとんど見えなくなりますよね。その見えない耳の部分にもPBR/IBLなど複合的な技術を搭載したARイヤリングがきちんと反映されているんです。これはかなり高度な技術で、まだ活用されているところもほとんどないのではと思います。

また、アクセサリーの他にもアイウエアや腕時計にもこれらの機能を搭載しています。さらにネイルでもPBR/IBLを搭載していく予定がありまして、対応テクスチャーであるシアー、クリーム、ジェル、マット、メタリックのネイルを手の上に載せたときに質感がよりわかるものになっています。他にもメイクアイテムで使われている「ラメ」にも応用する予定がありまして、今後も反射や屈折率などがあるアイテムに関してはどんどん搭載していく予定です。

スマホの処理能力や通信環境などの観点では、実現できることについては常にその時代との交渉にはなりますが、我々は最終的には頭の上からつま先まで全てバーチャル試着がスマホの中で完結できるような未来を目指しています。

#BeautyTech
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