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2021.07.07

三田知実「都市/ストリートとファッションの現在地」

今、目に見える形で変貌を遂げている風景のひとつがファッションストリートだ。これまで、都市のファッションに敏感な人々は自らの趣味/志向に合わせてストリートに足を運んでいた。しかし、以前のファッションストリートと、ECの台頭やコロナウイルスの蔓延を経た現在の様子には、明らかに違いがある。
そもそもファッションストリートは、なぜ様々な店舗を集めて、独自のスタイルを形成していくのだろうか?そして、ECサイトの普及やテクノロジーの進化、社会情勢に合わせて、ストリートはどのような変貌を遂げていくのだろうか?このようなストリートの現在/未来について、都市社会学を専門に文化生産と都市成長について研究する熊本県立大学総合管理学部の三田知実准教授に話を伺った。
PROFILE|プロフィール
三田知実|MITA TOMOMI

1978年神奈川県生まれ。熊本県立大学総合管理学部総合管理学科准教授(社会学)。
立教大学グローバル都市研究所特任研究員。
博士(社会学)。修士(都市科学)2002年立教大学社会学部社会学科卒業。2005年東京都立大学大学院都市科学研究科修士課程修了。2012年立教大学大学院社会学研究科博士課程後期課程修了。専門は都市社会学。現在の研究テーマは、東京都渋谷区神宮前を中心とした都市細街路「裏原宿」における衣料文化生産と不動産投資。住宅街とファッショナブルな商業地区が両立してきた要因と過程について研究を行ってきた。

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まず、三田先生の研究関心について教えてください。
これまでの研究をまとめると、大きく分けてふたつあります。ひとつめは、渋谷区神宮前の都市細街路「裏原宿」の文化的変容についてです。裏原宿は1980年代後半から1990年代初頭にかけての土地資産バブルの盛衰により、住宅街から、衣料デザイナーやセレクトショップが入居する低層ビルが立ち並ぶファッションストリートへと変容しました。 それと同時に裏原宿は、地元住民が下支えする、高級衣料デザインのグロ―バルな拠点として機能していることを、文化生産と都市社会学の観点から考察づけました。
ふたつめの研究は、裏原宿の不動産投資の実態についてです。2005年に日本政府が不動産投資信託(REIT)に関する規制緩和を行いました。東京証券取引所は「J-REIT」を設置しました。 不動産業者、商社や、世界のメガバンクなどにより、多数の不動産投資法人が設立されました。 いくつかの不動産投資法人が裏原宿と表参道に着眼し、街区への投資をおこなってきました。 つまり、1990年代の衣料文化生産が都市細街路の成長を促しました。2000年代に入ると、グロ ーバル経済をけん引する不動産投資法人による投資事業が裏原宿で展開されています。こうして文化生産とグローバル経済が結びついた都市空間として、ここ数年の裏原宿を捉えています。
これまでのフィールドワークの内容はどういったものだったのでしょうか??
自分自身の調査研究の原点は、フィールドワークにあります。1990年代の裏原宿には、ヨーロッパからのインポートブランドのセレクトショップ「UNITED ARROWS」や、アメリカンカジュアルのセレクトショップ「BEAMS」が集まる街でした。それだけではなく、日本から世界的に有名になった高級衣料ブランド店「STUSSY」や「A BATHING APE」の本店である「NOWHERE」も集まっていました。そればかりでなく「LOTUS」のような空間デザイナーが経営するカフェがあり、深夜になるとファッションデザイナーが集まっていました。
調査を始めた時から、店員さんやデザイナーさんと話して仲良くなり、いろいろな情報を収集していました。裏原宿で、おしゃれな人物と狭い道をすれ違うときに「この人、すばらしいコーディネートするなあ」と感じることができます。狭い道だからこそ、お互いのコーディネートを瞬時に読み取ることができる。こうした経験も、この街ならではの都市的体験のひとつで、研究の糧になりました。またフィールドを離れ、渋谷区の統計調査の資料室で、渋谷区神宮前の社会動態や自然動態の変化を『国勢調査』を用いて調べ、衣料品店の数や、デザイナーの事務所の数、飲食店の数などを『事業所企業統計調査』(総務省統計局)や渋谷区独自の統計資料を通じて調べました。
現在の研究では、衣料品分野のひとびとだけでなく、グローバル金融・不動産の会社への聞き取りを行っています。不動産投資の手法となるREIT(リート。不動産投資信託)の内容を学習することも多いです。それと同時に、表参道と裏原宿におけるリートに関するニュースを収集し、情報をアップデートしています。
神戸「トアウエスト」(JR元町駅・北側のファッションストリート。2021.3筆者撮影)
神戸「トアウエスト」(JR元町駅・北側のファッションストリート。2021.3筆者撮影)
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