今回は、この技術の中心にある 「ディープフェイク」を中心にインタビューを実施。ディープフェイクはファッション領域でどのような活用が期待されるのか?前回に引き続き、プロジェクト担当者であるZOZOテクノロジーズ MATRIXの玉村雄大氏を取材した。
PROFILE|プロフィール
玉村雄大
IT系メガベンチャーにてゲーム関連の映像制作や3DCG分野の業務に従事した後、2020年にZOZOテクノロジーズに入社。XR / AIチームにて主にバーチャルファッション領域のプロジェクトを推進。メインツールはHoudini, Substance, Zbrush, UE4など。
ファッション業界での活用への期待
では、ファッション領域ではディープフェイクという技術はどのように使われているのだろうか?ファッションは他の産業に比べると技術の導入が顕著に遅れていることから、ディープフェイク技術のファッション業界での活用事例は非常に少ないと、玉村さんは言う。数少ない事例として、アート的な側面での表現手段でBALENCIAGAが同技術を利用した実績がある。ディープフェイクのような技術によって何が本物で何が偽物かが判別できない世の中を風刺したコレクション動画になっている。そのような中で、ディープフェイクを利用した「Drip」は、ファッション産業での活用事例としては最初期の活用事例となると考えているとのことだ。この取り組みをプロダクト化すれば、普及するきっかけとなると期待を述べてくれた。特に、「Drip」でのバーチャルモデル生成のようなアプローチは、一度学習データ用の撮影をするだけで画像や動画が必要となるたびにモデルが稼働して撮影する必要がないため、頻繁に稼働することが困難な有名なセレブリティやモデルの労働状況の改善などにおいて有用だと考えているそうだ。例えばスーパーモデルが1日学習データ用の撮影を一度だけ行うだけで、何千、何万といったモデル着用写真や動画が生成可能になる。結果的にECサイトで販売する商品の撮影、採寸、原稿作成を行うささげ業務のコスト削減にも大きく貢献できるという。
また現時点では、ファッション領域ではコンシューマーが利用できるサービスは普及していないが、他領域のように私たち自身が活用できる日も来るのかもしれない。