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バーチャルヒューマン「Drip」から考える、ファッション領域におけるディープフェイク

ZOZOテクノロジーズが発表したバーチャルヒューマンユニット「Drip」。前回は、迅速で柔軟なバーチャルヒューマンの制作を可能にする、独自の技術の詳細について紹介した。
今回は、この技術の中心にある「ディープフェイク」を中心にインタビューを実施。ディープフェイクはファッション領域でどのような活用が期待されるのか?前回に引き続き、プロジェクト担当者であるZOZOテクノロジーズ MATRIXの玉村雄大氏を取材した。
PROFILE|プロフィール
玉村雄大

IT系メガベンチャーにてゲーム関連の映像制作や3DCG分野の業務に従事した後、2020年にZOZOテクノロジーズに入社。XR / AIチームにて主にバーチャルファッション領域のプロジェクトを推進。メインツールはHoudini, Substance, Zbrush, UE4など。

広まるディープフェイクの活用

ディープフェイクといえば、政治家の顔をすげ替えて政治メッセージの捏造したり、フェイクポルノといった悪用の問題が話題となることが多かった。ディープフェイク自体は2017年にとあるハッカーが作ったものがリリースされ、それがオープンソースであったために広まったと言われている。
玉村氏いわく、この技術自体は悪用も良い利用法もどちらでもでき、近年では特にエンタテインメント領域を中心に、好ましい使い方も登場している印象だという。たとえば、映画俳優があたかも9ヶ国語話しているように作ることも可能で、多言語展開するような映像作品への活用が期待される。これを利用すれば、映画に有用で字幕なしで俳優が日本語を喋っているようなバージョンを作成することも可能だという。
一般的にも知られているものとしては、自分の顔を別人の顔に置き換えて撮影することができる、SnapchatのFace Swap機能があるだろう。また、自分の顔を映画やテレビなどの映像に当てはめるサービス「Zao」も話題となった。また、こういったエンターテイメント分野以外でも、医療での活用なども期待されているとのことだ。
また、近年では同技術の悪用を防ぐための開発も進んでおり、例えばFacebook社では手書きテキストの捏造のような悪用を防ぐためにディープフェイク技術を活用している。ディープフェイクを使用すると本物そっくりなクオリティが出るため、もはや何が本物で偽物かが判別不可能、そういった意味でFacebook社のような取り組みの需要は増しているとのことだ。

ファッション業界での活用への期待

では、ファッション領域ではディープフェイクという技術はどのように使われているのだろうか?ファッションは他の産業に比べると技術の導入が顕著に遅れていることから、ディープフェイク技術のファッション業界での活用事例は非常に少ないと、玉村さんは言う。
数少ない事例として、アート的な側面での表現手段でBALENCIAGAが同技術を利用した実績がある。ディープフェイクのような技術によって何が本物で何が偽物かが判別できない世の中を風刺したコレクション動画になっている。そのような中で、ディープフェイクを利用した「Drip」は、ファッション産業での活用事例としては最初期の活用事例となると考えているとのことだ。この取り組みをプロダクト化すれば、普及するきっかけとなると期待を述べてくれた。
特に、「Drip」でのバーチャルモデル生成のようなアプローチは、一度学習データ用の撮影をするだけで画像や動画が必要となるたびにモデルが稼働して撮影する必要がないため、頻繁に稼働することが困難な有名なセレブリティやモデルの労働状況の改善などにおいて有用だと考えているそうだ。例えばスーパーモデルが1日学習データ用の撮影を一度だけ行うだけで、何千、何万といったモデル着用写真や動画が生成可能になる。結果的にECサイトで販売する商品の撮影、採寸、原稿作成を行うささげ業務のコスト削減にも大きく貢献できるという。
また現時点では、ファッション領域ではコンシューマーが利用できるサービスは普及していないが、他領域のように私たち自身が活用できる日も来るのかもしれない。
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#Virtual Fitting
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