2021.04.29

【鼎談】細尾真孝・筧康明・金山裕樹「デジタルとフィジカルの融合、先駆的テキスタイル開発をめぐる思想」

#Project Foil
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ZOZOグループで初めてのテキスタイル開発であるProject Foil。株式会社 細尾ならびに東京大学大学院情報学環 筧康明研究室と共に取り組んだ「機能性と美を両立する新規テキスタイルの開発に関する共同研究」においては、伝統工芸と先端素材およびインタラクション技術を組み合わせた作品が生み出された。現在、開催中の成果展示「Ambient Weaving ── 環境と織物」 では、環境温度による色彩の変化、コンピュータ制御による 有機ELを織り込んだ生地の発光、紫外線照射による硬化など、5つの作品が公開されている。

このように伝統と先駆的技術を掛け合わせるプロジェクトは、いかにして実現したのか。 この試みの意味、そして、その先にある未来とは?今回は株式会社細尾 代表取締役社長・細尾真孝氏、東京大学大学院情報学環准教授・筧康明氏、そして株式会社ZOZOテクノロジーズ 代表取締役CINO・金山裕樹による鼎談から、このプロジェクトを導いた思想に迫っていく。

PROFILE|プロフィール
細尾 真孝

株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー 1978年、元禄元年(1688年)より京都で西陣織を手がける細尾家に生まれる。「工芸が未来をつなぐ」の哲学のもと、伝統的なきもの文化の継承と、西陣織の技術・素材をベースにしたラグジュアリーテキスタイルを展開。布を通じた美を追い求める事業を担う。 

PROFILE|プロフィール
筧 康明

研究者、メディアアーティスト。東京大学大学院情報学環准教授。博士(学際情報学)。 物理素材特性を活かすインタラクティブメディアの研究を軸に、Ars Electronica、YCAM等での作品展示を展開する。科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞、第23回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞等を受賞。 

PROFILE|プロフィール
金山 裕樹

株式会社ZOZOテクノロジーズ 代表取締役CINO(Chief Innovation Officer ) ファッションアプリ「IQON」(アイコン)を運営する株式会社VASILYを創業後、2017年10月に「ZOZOTOWN」 を運営する株式会社ZOZOに売却。現在は株式会社ZOZOテクノロジーズのイノベーション担当代表取締役として、ZOZO研究所の発足などR&Dと新規事業の創造を行なっている。 

プロジェクトの挑戦価値

ZOZOテクノロジーズがテキスタイル開発に挑む理由

金山:

我々はZOZOという(プライベート)ブランドで服を作っていた時期があったので、(このプロジェクトは)その時に始まったプロジェクトです。ZOZOが服を作るのであれば誰も見たことのないような、誰もが驚くようなもの、「ソウゾウノナナメウエ」をいくようなものを作りたいと思った時に、デザインとかではないなという風に思ったんです。

デザインはやはり、先達のファッションデザイナーさんたちが洗練されたものをたくさん作ってきたのですが、我々はソフトウェアの企業なので、ソフトウェアでものを制御し、それが価値となるようなものづくり、服作りをしたいなという風に思っていました。

その中で当時ZOZO研究所にいたメンバーから、細尾さんや筧さんをご紹介いただきました。もともと人々をあっと言わせるような服を作りたいと思っていて、そしてその手法として我々の得意なソフトウェアで服の材料を制御できるもので服作りをしたいと思いました。まだ誰もやってないものですし。最近だと、ファンがついていたり、温かくなるような機能性を追求したものがありますが、それとは違ったかっこいいもの、クールなものを作ってみたいとという根本の願望があったところでの、めぐり合わせといった感じです。

それがおふたりとやらさせていただいている理由です。お二人とも共通しているのは、会った瞬間に「やれるな」と思ったんです。なぜならお二人ともすごい考え方が柔軟で。細尾さんは今、何代目でしたっけ?

細尾:

12代目です。

金山:

12代目、そしてアカデミアの筧さん。僕のイメージだと、どうしても頑固で唯一唯我独尊みたいな方達かなと思っていたんですが、そうではなくオープンマインドでお話をしていきましょうという考え方。それ自体がもすごくクールですし、これまでの作品や商品を見させていただいても、とてもかっこいいと思ったのが二人に共通するところです。

株式会社 細尾で最初に工房見学させていただいた時に、ひとつの問いをしたんです。「細尾さんの作る西陣織の強みは何ですか?」と聞いたんです。すると秒速で、「美の追求です。美を追求してきことが、他にはない我々の強みです」と言われたんです。その瞬間に、最高のパートナーだなと思いました。なぜなら、テキスタイルや服にテクノロジーを組み込むということは、様々な人たちがやっている。例えばユニクロさんは東レさんと組んでヒートテックやエアリズムを作っていますが、それって先ほど例に挙げたような機能性、ファンクションの追求なのではないかと思っていたんです。

世の中に広く認知されているファッションテックに関わるものや高機能素材、例えばゴアテックスなどは、機能性の追求が主軸です。僕は常々、ファッションというのはファンクションだけではなくてエモーションも司るものだと思っています。どういう風に見られたいか、かっこよく見せたいなど、エモーションの部分の追求は、ファッション業界においてテクノロジーとの組み合わせではあまり無いと思っています。

そういう側面から、これまで先人たちが追求していたものは蒸れない、暖かい、濡れないなど、ファンクションの部分だけだったように思えます。
我々はエモーションの部分をテクノロジーでアップデートしたいと思った時に、エモーションの中で人間のモーションを強く揺さぶるもの、古来からあるものが「美」だったんですね。それが細尾さんの技術にはあって、我々の技術の力でファッションをアップデートしたいという思いがマッチした。それが細尾さんとの出会いであり、プロジェクトをやろうと思ったきっかけです。

筧さんは、これまでの研究を実はかなり見させていただいたんです。失礼のないように言いたいと思うのですが、とてもかっこよかったんですよ。シンプルに。いわゆる研究者の研究って、研究結果が科学として証明できて、再現性が高いことを良しとするプロジェクトが多い中、筧さんはやってきた研究をかっこよく見せている。

つまりそれは、エモーションの追求の部分や細尾さんの持っている美の追求とマッチングします。そして、我々だけで成し遂げられないような基礎的な技術やリサーチのノウハウもある。我々のベースはソフトウェアなので、素材やマテリアルの部分を、美というフィルターを通して表現できる筧さんの研究室は最高のパートナーになると思って。

この2人が関わる時点で僕らの存在というのはあまりないというか。京都ラーメンで言う九条ネギみたいな。麺とスープがしっかりしていたので、最後九条ネギ乗せたらOKだと思って、このお二方とプロジェクトを進めたいなと思いました。

織物の美を追求するためのテクノロジー進化

細尾:

今、金山さんがお話しされたみたいに、ZOZOはテクノロジーの会社として知名度があります。日本を代表する企業でもあるという部分で、非常に面白いなと思っていますね。つまり、我々西陣織はどうしても工芸。テクノロジーとある意味で対極と思われるようなところがありまして。実際そういった部分も多いです。手作業で、多くも作れない。ただ一方で、織物の歴史を振り返ってみると、人間は体を織機しながら徐々に木のフレームを作って、動力のついた織機を作っていって。身体をどんどん拡張していく中でテクノロジーを進化してきた。ある意味、織物の歴史においてテクノロジーの進化は、美の追求とともにあったと思っております。

これを現代にもう一度展開するには、テクノロジーの最先端を行っているZOZOと、我々の過去から織物という形でテクノロジーの美を上位概念に置きながら進化させる。ここが合わさった時になにが起こるだろうというのが思ったところです。そして世の中の価値観が変わっていく中で、今までと同じものが果たして良いのか。

例えば日本の着物においても最初に素材があり、素材を体を合わせてはじめて着物として成立する。おそらくは服作りにおいて、体に合わせて布をカットしたというのは日本においては比較的、近年の話です。先ほど素材とお話いただきましたが、素材にフォーカスして、そこから拡張していく。テクノロジーのあり方と素材をまず置いて、人の着るものを考えていくのはすごく面白いなと。そういった部分が、今回のプロジェクトでワクワクしている部分ですね。

画像: 右から細尾真孝氏、筧康明氏、金山裕樹
右から細尾真孝氏、筧康明氏、金山裕樹

機能と体験を接続するうえで必要なこと

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僕らはもともとデジタルテクノロジーから研究をスタートしていて、デジタルの可能性は画面の中に閉じているのがもったいないと。それをいかに物理的なリソースや世界に接続していけるか。そこが重ね合わさった時に、体験をアップデートしていけるのではないかということを、15〜20年くらい前からやっています。

最初は映像的なアプローチだったところから、徐々に物質そのものをプログラムしていかないと、デジタルとフィジカルの関係を引き出していくというのは難しいだろうと。そこに入っていくと、これまで映像やVR、ARと言われていたものとは全く違うものを作っていけるということに気がつき、物質そのものから作っていこうとこの10年程やってきたんですよね。

さっきのファンクションの話にもあったように、こんな物質ができるとか、こんな機能をつくったりできるとか。それだけだと体験には接続されなくて、機能と体験。私たちはマテリアル・エクスペリエンス・デザインって呼んでますが、そこがこれからの鍵になる。機能と体験をいかに接続できるか、それは研究だけでは成し遂げられないところ。そこには意匠だったり美が必要で、どういう風に形にしていくかを深く追求することが必要です。
エクスペリエンスを考えると、エモーションの話もそうですし、その先には生活や社会からの要請やニーズと接続する可能性を探っていくってことがすごく重要です。それが次の研究に還元されていく。そういう大きなサイクルの中で回していかないと、研究がラボの中で閉じていたら何も生まれないという時代になっている。

このふたつの組織とご一緒させていただいたことは、マテリアルとエクスペリエンスを繋いでいく意味で僕らにとっては大きな可能性で、チャレンジを可能にさせていただいていることは、これまでにはないレベルの挑戦をすることができたし、これからもしていきたいと思っています。

金山:

僕も全く同感です。デジタルは人間の可能性を拡張したと言われますが、全くされてないと思います。なぜなら、デジタルで拡張されているのは視覚情報と聴覚情報だけで、刺激の本質は全く変わってない。デジタルではない今までだったら、その空間での光と空気の振動として、視覚と聴覚としてしか捕らえられなかったものが、デジタルでスピーカーと液晶で取れるようになったと言っても、そもそもが拡張してないですよね。震源が変わっていないので。本当にデジタルで拡張するためには、五感。残りの3つの感覚っていうのをいかにデジタルで揺さぶっていくかっていうことをやらないと、本質的な体験にはならないと思っていて。今後はみんな飽き飽きしてくるんですよ。視覚と聴覚だけのものは、刺激として弱いんです。

どんなにブロードバンドになっても、YouTubeで観ている動画が何テラバイトとかにはならない。今ここで、例えばテキスタイルから発せられる情報って、全部デジタルにしたら何テラバイトにもなるくらいの情報量がある。そういったものを我々は五感を使って感じるからはじめて体験と言える、脳にガツンときて感動が生まれたりとか、次の行動が生まれたりすることがあると思っていて。

僕も、筧さんがおっしゃるようにデジタルは閉じちゃだめだと思っていて。今後フィジカルの世界にも、逆にデジタルが染み出して混ざっていって、その先に何か面白い、楽しい世界が待ってるんじゃないかなと思っています。そういう共通の思いは、話さなくてもあったんですね。

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今、話を聞いてても、同じだなと思って。

デジタルとフィジカルなアプローチの交差点、人間の身体との調和

細尾:

確かに思うところはあるんですよね。視覚情報とか身体の拡張に感じますけど、仮にそれを拡張としても調和が取れていない問題があって、結局身体化されてないということですよね。そういう意味では布という、常に人間の身体とともにあるものを通してそこの調和を考えていくっていうのは非常に面白く、さらにそこにテクノロジーを入れて自分の身体と調和させていくのが、これからの時代かなという気がします。

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今回僕らは、最終的には物理的な布というもののを作っているんですけど、基本的には「関係性」というところを見ていて。物理的にもすごい布ができてワクワクしているんだけど、その先にある人と環境のインタラクションの変化や、布を介して環境への意識が変わることに興味を持っています。それはインタラクションデザインの考え方そのものではあるんですけど、物質性を介することで、これまで繋がらなかった五感も含めて接続することが、僕らの感覚が開いていくようなところを狙って、今回のプロジェクトを設計しました。まさにデジタルなアプローチとフィジカルなアプローチの交差点というか、重ね合わさったところの実装であり、成果物であると。

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テクノロジーと手を組むことをめぐる思想

テクノロジーの民主化する力と希少性の担保

金山:

お聞きしてみたいのが、このプロジェクトそのものとは少しだけ離れてしまうんですが、おふたりがやられていることは基本的に職人や研究者という専門職ですが、僕らやデジタルに携わる人間がやっている仕事って、基本的に民主化だと思っています。民主化の方法は、コストを下げることです。時間やお金をインターネットを使って究極的に0に近づけることで、様々な人が情報やモノへのアクセスに繋がることができる。これまで限られた人しか使えなかった、見ることができなかったものが、ソフトウェアやインターネット、デジタルで数多の人に提供できてしまう。

しかし、おふたりがやっていることって逆だと思うんですよね。突き詰めるからこそ、自分たちにしかできないものをここで見つけ、美しいものができた。とんでもないマテリアルが生まれたってことを、デジタル産業のど真ん中にいる我々は聞き出してみんなにばら撒いてしまうんです。

こういった相反することに対して、普通だったらデジタル、広くいうとインターネット業界と組まない方がいいと思うんです。たとえばこれまで研究者の勘と、何回ものトライアンドエラーでしかできなかった染料の調合が、コンピューターのアルゴリズムで数分でできてしまう。職人にしか織れなかったものが、ロボティクスによって誰でも織れるみたいに、インターネットやデジタルを使えば使うほど、僕らはどうしても民主化の方向を向いてしまうんですね。いろんな限定的で希少性が高いものを民主化してみんなに配ってしまう。

そこに対して抵抗感や違和感を感じられたことがお2人は無いからこそ、一緒にやってるのかなと思ったんですけど。

細尾:

西陣は1000年間、一般大衆化されなかったんですよ。限られた人に究極の美を提供してきた。ちゃんとお金を払ってくれる人がいて、一年かけて究極の美をお届けして、またお金をいただいてということを積み上げてきた。

それが西陣の歴史ですが、やはり時代の流れとともに変わり、一番の展開期は明治ですね。今までクライアントであった将軍家がいなくなってしまって、天皇家も東京に移ってしまった。高い西陣織をオーダーをする人がいなくなったわけですね。そのときに西陣は旦那衆がお金を出して3人の若い職人を、当時の最新の織物技術のあるフランスのリヨンに送り込んで、ジョゼフ・マリー・ジャカールさんによって生み出されたジャガード織機という最先端の織機を持ち帰った。これまでは縦糸の上げ下げを人が上に登って織っていたものを、パンチカードというコンピューターの原型にもなったものを使って、人の動きをプログラム化したものを持ち帰ったんです。その当時の最先端のテクノロジーですよね。それによって技術革新を起こした。ここで面白いのは、通常近年の考え方だと、大量生産技術革新と言うと、量産として多くのものに安く届けていくために大衆化させていく。クオリティーもそこそこにして量産化していく。

西陣の挑戦は美しい美はそのままに、それをテクノロジーによって多くの人に届けること。日本において西陣織って帯のイメージがありますが、それはこの100年、ジャガードが入ってきたことによって高級帯というランクではありますが、一般の人が頑張れば手の届く憧れの存在として一気に広がっていった。

金山:

100年もだいぶ昔ですけどね。笑

細尾:

西陣織、錦織は「故郷の錦を飾る」という言葉にもなっているように、基本的には一部の人しか買えなかった。それには当然、ヒエラルキーのある社会がありましたが、社会構造が突然と変わったわけですね。そこで西陣はテクノロジーを持ち込むことで、美はそのままに次の社会に適応させていった。そういった考えでいくならば、今やってることも次の転換期と考えるならば、美のクオリティは落とさずに、テクノロジーによってアップデートしながら多くの人に届けていく。それが西陣の自然な形だと思っています。

金山:

なるほど、すごく理解できました。

制約があるからこその必然性

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僕も全く抵抗はなくて、何でもやっていいよとなると何も生まれてこない。新しいものはどこか制約を作っていかなきゃいけない。もちろん技術の民主化も、そこに色々な人が入ってくるのはすごく重要なことで、それはベースとしてある。

その上で制約や必然性を抽出していくこと自体が、これから1番重要となってくると思っていて。僕らはこのコラボレーションを、制約として捉えています。この関係だからこそ生まれてくるものをいかに抽出してできるかってこと。それが無いと何でも作れてしまう、でも何を作ろうかってなってしまう。ここの制約は良い意味での制約です、「constraint」ですね。そこをある種のドライビングフォースにして、新しいものができていく。そうしてまた、新しいものと組み替えていく、自在に組み替えていくことがすごく重要です。心地よい作り方だけしていると、そこで終わってしまうんですね。

僕らで言うと、画面の中で全てを作ってしまうとそこで終わってしまう。だから、フィジカルでの制作はものすごく作りにくいんですよ。デジタルのプログラムと比較すると、ものすごく手間かかるし、身体的労力を使って疲れてしまう。でも、それだからこそ乗り越えられるものがある。それで言うと、逆に難しいところにどれだけ入っていけるかに意識を持たないと、新しいものは生まれないかなと思っている。そういう意味で、コラボレーションは僕らにとっては手っ取り早く制約が生まれるやり方です。

金山:

日本人はそういう制約におけるクリエイティビティが1番うまいと思います、俳句とか茶道とか。一方で、アメリカ人はむしろ制約なしのほうが強い。西部開拓時代から、制約のない中で自由に作った後に、自分たちのやりやすいように制約をつけるみたいな。面白いですね。

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未来への展望

持続可能な研究開発のためのビジネス展開

金山:

次の展望としては、素晴らしい研究・成果物ができましたが、これを継続的に進化・発展させていくには、世の中の仕組みに乗らないといけない。それは我が国であれば、資本主義です。つまりビジネスとして、価値として認められなければいけない。価値とは諸説ありますが、「売れる」ということだと思います。人々に価値として認められるようなものを作り、その価値から対価を得て、再投資をして進化していくのが基本的な今のものづくりや研究の1番ベーシックなやり方だと思っていて。

僕は民間の企業の代表としてやっているので、そこを追求しています。この素晴らしい研究やクラフトマンシップに溢れる成果物をいかに次に、倍プッシュで賭けることができるようにビジネスに落とし込んでいくか。世の中のみなさんの欲求の消化や課題の解消、そういったものに落とし込むために、我々がバトンを引き継いで、次の軍資金を貯めないといけないと思っています。軍資金が貯まったら再投資して、次のものを作ってもらう。それをまた見せてもらって、我々はビジネスとして価値に変えていかないといけない。

価値というのは、再投資していける形の価値です。価値に変えて再投資して、どんどんとプロジェクトを推し進めていきたいなと思いますし、そこは企業がやるべき使命なのではないかと思っています。簡単にいうと、これがどれだけ売れるかというところに僕らは軸足を置いていきたいなと思っています。生産および研究は引き続き一緒に続けていきたいなと思っていますが、一方で僕らは、どう商売に持っていくか。商売というと、今の大学もそうですよね。そこの部分をいかに効率的に社会に正当な形で価値として還元して、感謝の気持ちを再投資していってというのは、我々がやらなければやらないミッションかなと思っています。

細尾:

そうですね、そういう風に準備いただいたものをどんどん投入していただきたいですね。西陣織が1200年間やってきたことって美の追求なんですね。時代によって天皇家がバックアップにつくときもあれば、将軍家がバックアップついたりとか、その時代ごとの社会との関係、パートナーがいる中で究極の美を追求し続けてきた。

これを現代的に捉えると、今、金山さんがお話しされたようなことかもしれない。そんな中でも我々が1200年間変わらなかったことは、今まで誰も見たことのなかった美というものを様々なリソースを全部入れながら実現させていくこと、それをまた未来に繋いでいくこと。ここしかないなと思っていまして。ですから本当に今回のプロジェクトの座組みというのは、西陣の歴史でも積み重ねてきた最高の座組みなんじゃないかなって思いますので、引き続き前を向いてやっていきたいなと思います。

ハイブリッドクラフトの可能性

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研究の立場から言うと、今回はコンピューターに接続される布というわけではなくて、コンピューテーショナルなファンクションが内包された布、あるいは糸から作るってことにチャレンジしてきたんですよね。もっとプリミティブなところまで立ち帰っていって、そこから新しい価値に引き上げていくっていうことをやってみたいなと思っていて。織機そのものをつくる、作るための道具をつくることが次の挑戦としてあります。さらに、今回深いコラボレーションして気がついたのは、職能がオーバーラップしていくというのがすごく面白くて。僕らが手作業でクラフトを体験するということの逆として、職人さんがデジタル技術を理解してそこからアイデアが出てくるところが混ざっていくと、あたらしい職種・職能が生まれてくるんじゃないかなと思っています。ある種のハイブリッドクラフトとも言えるような分野を作っていくってことだったり、そういう新しい領域を先導する人や人材が生まれる、教育を含めた場づくりに可能性を感じています。

どちらもの素養をもち、知恵をもち、アイデアをもつ。そこから出てくる新しさ、掛け合わせたことで全く違うオルタナティブなものを作っていくためのことを、研究としてもっと深めていきたいなという風に思います。

#Virtual Reality#Wearable Device#Smart Textile
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