2021.03.15

美容で重要視される「活き活き感」とは?コーセーの「感性評価AI」

株式会社コーセーは先端的なテクノロジーを導入し、美容業界の新しい可能性の開拓に挑んでいる。これまでもネイルブランド「NAIL HOLIC」のバーチャルネイルなど、新たなサービスを提供している。
そんなコーセーが現在挑戦しているのが、AIを使用した顔の「活き活き感」の測定だ。活き活き感とはどういった指標なのか、そしてどのようなサービスに繋がるのか。株式会社コーセー研究所 先端技術研究室の黒沢正治さんに話を伺った。

「活き活き感」の解明と応用

今回コーセーが着目した活き活き感とはどのような指標なのだろうか?活き活き感とは、コーセーの美容専門家であるビューティーコンサルタントが大切にしている印象の指標であり、顧客にとっても重要な指標だ。
しかし、活き活き感の印象につながる要素は人によって異なり、活き活き感の実現に至る美容方法の提案などは熟練のスキルや経験が必要だった。これをAIを活用し数値化することで、的確な美容提案をいつでもどこでもできることを目指すのが今回の試みだ。

コーセー研究所では、活き活き感を、年齢や性別、人種などを問わず、これからの時代の基盤となるウェルネスやウェルビーイングの価値観を反映する感性的な印象指標のひとつと捉えていると黒沢さんは教えてくれた。

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では、どのように活き活き感を測定し数値化することができるのだろうか?黒沢さんによると、これまでは主に平均顔を用いた比較手法や画像局所特徴量または目視評価による特徴量(頬部の赤味など)を用いた手法などにより「活き活き感」の評価や予測を行ってきた。

しかし実際に人間が行う印象評価は高次な感性的評価であると同時に、評価者の主観や経験にも左右されるものであるため、活き活き感評価を通じた美容提案に活用できるレベルにするには、感性評価の確実度や予測精度の面で研究の工夫の余地があったのだという。

このような背景からコーセーは、長年培ってきた感性評価に長けた美容専門家のスキル・経験と画像データを元にした特徴量設計(特徴の数値化)と予測モデル構築技術を組み合わせるアプローチを採用することとなり、ディープラーニングなどの技術に長けた電気通信大学大学院情報理工学研究科 庄野逸教授との共同研究によってこれを実現させた。

美容専門家の経験を反映した「感性評価AI」の誕生

今回の試みは「印象評価に長けた美容専門家による、高い再現性と客観性を有する評価をAI化する」という点を重要視しており、まずは印象評価の経験が比較的豊富な日本人女性を対象として顔画像の取得と評価値基準設定を行うこととしたようだ。

黒沢さんによると、AIの開発は以下のような流れで行われた。10代から70代までの日本人女性377名の顔画像(正面・真顔)に対し、カウンセリングや肌診断に長けた熟練の美容専門家が「活き活き感」の度合いを7段階に評価する。

画像: ※画像はイメージです
※画像はイメージです

このデータセットに、「活き活き感」評価を再現するために特徴の数値化・予測を行う「深層学習技術」と、少数のデータセットに対しても効率良く学習を行うための「転移学習技術」を適用することで、「活き活き感」評価値を画像データから高い精度で予測できる「感性評価AI」を構築した。

さらに、構築した「感性評価AI」の推定値に影響を与えている顔部位を可視化して「活き活き感」推定値と併せて活用することで、一人ひとりに合わせた美容提案に繋げることができる。この「感性評価AI」を用いた美容カウンセリング手法については特許出願済みなのだという。

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もちろん、このサービスは女性や日本人のみに収まるものではない。今後は男性や国外の人々を対象にすることを想定し、開発が進んでいるようだ。研究としては、今回の研究で得たフレームを活用しつつ、適切なデータの取得や解析アプローチの再考を重ねた上で繋げていきたいと黒沢さんは語ってくれた。

ビューティーケアだけではなくヘルスケア/メンタルケアへ

このように、ビューティーケアにおいて重要な指標となりうる活き活き感だが、コーセー研究所ではこれを単なる顔特徴ではなく、心身の健康を色濃く反映するバロメーターとしても捉えているとのことだ。特に、新型コロナウイルスの影響も鑑みて感染リスクのケアに伴って身体だけでなくメンタルを含めた「心身のケア」の必要性が強く求められており、その際に活き活き感を測定し改善することは、その解決の入り口になり得るかもしれないと黒沢さんは語ってくれた。

「確かにマスク着用や外出機会が減ったことで美容の必要性が問われていますが、今だからこそヘルスケア及びメンタルケアにおける美容の新たな価値を見出すチャンスであると考えています。ただし、その価値を世の中に普及させるにはデータとしての数値化や可視化を通じてエビデンスや透明性を確保した研究をすることが重要であり、そうした研究開発を進めていく使命があると感じています」

具体的には、今後消費者に届く形として店頭機器での使用やオンラインカウンセリングサービスなどでの使用が想定されており、実装に向けて検証を進めていくようだ。今回の研究開発の発展だけではなく、ヘルスケアやメンタルケアなど分野を乗り越えた応用にも注目だ。

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