渋谷に旗艦店「On Tokyo」をオープンし、ランニングやトレイルランだけでなく、街履きとしても人気が浸透してきたOn(オン)。その人気の秘密は、ブランド独自で開発したクッション性に優れるソール形状「CloudTec®(クラウドテック®)」にあった。特許技術でもある「CloudTec®」の何がスゴいのか、その真の実力に迫るべくOn JapanのPR&Events Leadを担当する前原靖子さんにお話を聞いた。
元プロアスリートたち3人がカタチにした革新的なテクノロジー
後にOnを創業することになるオリヴィエ・ベルンハルドはデュアスロンで3度の世界チャンピオンに輝き、アイアンマンレースでも何度も勝利を収めたプロアスリートだ。怪我がちだった彼が、友人のデヴィット・アレマン、そしてキャスパー・コペッティとともに着地の衝撃を和らげるクッション性を重視するための試行錯誤から生まれたのが、Onのシューズだったという。「Onは2010年に生まれたスポーツブランドとしてはまだ新しいブランドです。最初はランニングシューズを展開したのですが、その最初のランニングシューズにはすでに「CloudTec®」が搭載されていました。創業者のオリヴィエ・ベルンハルドは、慢性的なアキレス腱の痛みを抱えていて、着地の衝撃を和らげるためにいろいろ試したそうです。その中で生まれたのが、ランニングシューズのアウトソールにゴムのホースをシューズ幅に合わせ輪切りに切って、いくつかくっつけたものだったのです」
スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の協力を得て、共同開発で生み出されたのがOnのテクノロジーの根幹となる「CloudTec®」というわけだ。
「CloudTec®」とは、Onのシュ ーズのアウトソールに搭載される空洞の形をした筒状のCloudパーツが垂直方向、水平方向に収縮することで柔らかな着地を生み出し、またそれが元に戻る反動で、強い推進力を生み出すテクノロジーのこと。もちろん技術特許も取得している。前原さん曰く、
「OnのシューズにはこのCloudパーツが搭載されることで、運動消費エネルギーを抑え、ランニング効率を引き上げてくれます。実際に履いてみると、そのクッション性はまるで雲の上を歩いているような感覚を味わえるはずです」。
「CloudTec®」とともに重要な「Speedboard®(スピードボード)」
ブランド創業から3年後の2013年には、スイス出身のトライアスリートで、オリンピックチャンピオンのニコラ・スピリグが、Onのシューズを着用し、大会で優秀な成績を収め、そのテクノロジーの高さを証明した。また同年11月にはベルギー出身のアスリート、フレデリック・ヴァン・リルデがアイアンマン世界選手権でOnのCloudracerを着用し、優勝。そこから一気にトライアスリートだけでなく、シューズ業界でも注目を浴びるようになるのだ。「『CloudTec®』の凄いところはクッション性と反発力だけではありません。このCloudパーツはどの角度で着地しようが同じようにパーツがつぶれるため、着地の角度によってクッション性や反発性が損なわれることがないのです。だからこそ、オーバープロネーション[1]やアンダープロネーションといった走り方の癖によってOnのシューズを選べなくなる心配がないのです」
前原さんはOnのシューズは常に進化を続けていて、「CloudTec®」だけでなく、ブラ ンド独自のテクノロジーが搭載されていると語る。
「『CloudTec®』の機能性の高さが証明されてから、これまでゴムだったCloudパーツの素材がEVAに進化します。そこでより軽量化することに成功しました。例えば、当時の「Cloudsufer(クラウドサーファー)」というシューズが290g、EVAソールで最初に開発した「Cloud(クラウド)」が198gで高いクッション性と軽量性の両立を実現しました。「CloudTec®」と同じように重要なのが、「Speedboard®」の存在です。「Speedboard®」はOnのシューズに搭載される反発力の高いプレートのこと。Onでは2012年に誕生したレース用シューズ「Cloudracer(クラウドレーサー)」からこのプレートを取り入れています。この二つのテクノロジーが、クッション性と驚異的な反発力を生み出し、アスリートの期待に応えるシューズに成長していったのです」
いち早くプレートを搭載したシューズを世に輩出してきたOn。その進化はとどまるところを知らない。