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【連載インタビュー】アダストリアがメタバースファッションで生み出す「新たな顧客接点」

デジタルファッションの時代」連載の第2回は、ファッション企業大手・アダストリアにおけるメタバースファッションの取り組みをお届けします。
アダストリアは、中期経営計画において4つの成長戦略を策定し、その1つに「デジタルの顧客接点、サービス」を掲げ、2022年の7月からメタバース事業での新しい顧客接点作りをスタートさせました。
同年10月にはメタバースファッション第1弾として、外部の人気クリエイターたちと「 .st(ドットエスティ)」のオリジナルアバターとスキンを製作。さらに、今年4月からはメタバースファッションのクリエイターであるenu.さんを採用し、メタバースファッションの自社製作をスタートしました。
そこで今回、同社のメタバースプロジェクトマネージャーを務める島田淳史さんと、3DCGデザイナーのenu.さんに、メタバースファッションへの取り組みの現状とこれからについて伺いました。

メタバースプロジェクトの背景

はじめに、アダストリアのメタバースプロジェクトの目的について教えてください。
島田アダストリアでは1600万ユーザーを抱える公式WEBストア「.st」を運営しており、さまざまなブランドと、さまざまなターゲットのお客様との接点を持っています。
成長戦略である「デジタルの顧客接点、サービス」の1つの挑戦として、メタバースに進出することで、今まで顧客接点を持っていないユーザーさんに、アダストリアのブランドを知ってもらいたいという目的でスタートしました。
メタバースファッション第1弾は「.st」のオリジナルアバター「枡花 蒼(ますはな あお)」でしたが、アバター製作からスタートした理由について聞かせてください。
島田リアルの世界でもモデルやインフルエンサーが着ている洋服が売れるように、メタバースの世界でもファッションのアイコンとしてアバターという存在を介して認知が広がっていくと考えました。そこで、われわれの取り組みのファッションアイコンとしてアバターを製作するに至りました。
私はターゲットを一番重要視しています。この世界でどんなユーザーがいて、何を求めているかリサーチをしたうえで、どんなアバターが良いか、メタバースの世界を理解していて人気のあるクリエイターさんが良いものを作れば、絶対良いものができると考えていたからです。
そのなかで、メタバース上で人気のクリエイターさんであり、デジタルでのものづくりに対して非常にストイックな「ひゅうがなつ」さんと出会い、絶対に良いものができるという直感でお願いしました。
最初にひゅうがなつさんから上がってきたデザインは、ほぼ完成形でした。私はクリエイターさんが製作したものに対して多くを注文するのは違うと考えております。クリエイターさんの感性が良いと思ってご依頼しているので、私から特に注文という注文はしておりません。

性別を問わずにリアルとバーチャルで楽しめる洋服作り

プラットフォームとしては「VRChat」を選択されましたが、ターゲットについてどのように理解したのでしょうか。
島田VRChatで取り組むとなった際、私自身もVRChatをやりながら、ユーザーさんがどんなアバターが好きか、どんな洋服が好きか、数多くのユーザーさんと話しながら徹底的にリサーチしました。
VRチャットのユーザーさんは男性が8割くらいだとされておりますが、まずはメインとなる男性ユーザーさんにアダストリアのどんなブランドが興味を持っていただけるかを考えました。
ただ、この1年間の取り組みを経て、われわれのメタバースファッションを購入する層は、肌感ではありますが男性6割、女性4割ぐらいで、女性比率が多いと感じています。
リアルとバーチャルは隔てて考えられがちですが、バーチャルの世界も私たちの日常と変わらない地続きな世界だと感じております。
特にファッションは分かりやすく、ユーザーさんは夏になると半袖を着ますし、冬になるとアウターを羽織るなど、シーズンごとのファッションを楽しんでいます。
そのため、次はどんなアイテムを作るかを考える際は季節やトレンドを重要視しています。さらに、われわれはリアルとバーチャルで一緒にファッションを楽しんでほしいので、すべてではないですが、男女問わずに着ることができる洋服作りが重要だと考えています。
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