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【連載インタビュー】chlomaデザイナー・鈴木淳哉が語る「デジタルファッション」の現在地

「デジタルファッションの時代」連載の第1回は、ファッションブランド・chlomaのデザイナーである鈴木淳哉氏のインタビューをお届けします。
chlomaは、鈴木氏と佐久間麗子氏によるファッションレーベルであり、2011年にスタートしました。ブランド開始当初から現在に至るまで、テクノロジーと人、インターネットと人との関係性に着目し、リアルとバーチャルとの架橋を目指して、現実で着用できるフィジカルのウエアとバーチャルウエアのそれぞれを手がけています。
そこで今回、長年にわたってデジタルファッションや、「VRChat」を中心としたバーチャルなコミュニティにも関わってきた鈴木氏に、デジタルファッションの今とこれからについて伺いました。

chlomaのブランドとしてのあり方

鈴木さんには、以前も当メディアでインタビューを実施していますが、改めてchlomaというブランドについて読者に教えてください。
chloma official web store イメージビジュアル。フィジカルの服とバーチャルウエアが併売されている
chloma official web store イメージビジュアル。フィジカルの服とバーチャルウエアが併売されている
「情報の世界とリアルの世界を境なく歩く現代人のための環境と衣服を提案する鈴木淳哉と佐久間麗子によるファッションレーベル」をコンセプトとして活動している、デザイナーズブランドです。
私たちは肉体を持った物理的な動物でありながら、同時に情報の集合体としても存在します。どちらか片方だけでは現在の人間を説明することはできません。ファッションを通じて、それらの狭間にある現代人の存在を探求しています。
デジタルファッションに取り組み始めているブランドは世界的に増えていますが、お客様とコミュニケーションを取って売買をし続けているブランドはなかなかないと思います。
「デジタルファッションでかっこいいビジュアルを作りました」ということだけではなく、フィジカルとバーチャルともに、ちゃんと着られるファッションを提供してお客様とつながり、実績を積み重ねてきたことがchlomaにとって一番の強みだと思っています。
鈴木さんがデザイナーを目指した経緯について教えてください。
私は幼少期から、人、人以外を問わず、アニメやゲームに登場するキャラクターという存在が好きで、特定の作品にのめり込む「オタク」でもありました。高校生、大学生の頃は自分自身の存在を確立したい願望に駆られ、ファッションに傾倒し、大学卒業後に服飾の専門学校に入学しました。
そこでオリジナリティを求められた際に、自身の美意識のルーツを探究した先にあったのがキャラクターでした。ファッションも、キャラクターも、一つの生命体の身体表現です。私にとってそこに垣根はなかったのですが、世の中を見渡してみると、いわゆるファッション界とアニメ/イラスト/ゲーム界とでは目指している美が異なり、それに違和感を持つようになりました。
ブランドのコンセプトにも繋がる話なのですが、その垣根を取り払えたら日本は文化的にもっと強い国になれるのではないかと思い、そのためのデザインを志すようになりました。
私は、機能性を持った利便性の高い衣服に、夢を見られるようなファンタジー性を持たせた衣服をデザインすることを心がけています。それがSF的な衣服だと受け取られることが多いですね。
SF作品は科学的根拠とフィクションが混在しており、そのリアリティラインがchlomaの目指すリアリティに近いと感じています。
chloma “”Quantum Foam”(2022-2023) model: Cuma, Uta
chloma “”Quantum Foam”(2022-2023) model: Cuma, Uta
chlomaが現在に至るまでの、具体的なファッションデザインの変遷についてお聞かせください。
2018年のコレクションからY2Kの美観を積極的に取り入れるようになり、ブランドイメージが刷新されたと思います。
きっかけは世界的に活躍する音楽プロデューサーであるPorter Robinsonの別名義プロジェクト“VIRTUALSELF”でした。日本のゲームなどから多大な影響を受けたと思われる2000年前後の雰囲気を全面的に打ち出したMVやビジュアルは非常に斬新で、今でもその完成度を超えるY2Kリバイバルプロジェクトを見ることはありません。
そこから触発され、chlomaも2000年前後の日本文化をクリエーションに取り入れる挑戦を始めました。それが2018年に発表したコレクション“Virtual Universe”です。
chloma “Virtual Universe”(2018) model: Chiaki Saisu
chloma “Virtual Universe”(2018) model: Chiaki Saisu
このコレクションがきっかけでVIRTUALSELFとコラボレーションを行うことになりました。世界中の方々にchlomaを見ていただくことになった大きな転機です。
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