つまるところ、Tシャツは消耗品なのだろうか? せっかくお気に入りのTシャツを手に入れたのに、夏の間中着ていたらヘタってしまった……。そんな経験を持つ人は少なくないはずだ。
1990年代からこのTシャツを販売し続ける、東京・代官山にあるアメリカのベーシックアイテムを追求するショップ「
HIGH! STANDARD」の小関啓人さんとともに、CAMBERのタフさの秘密を紐解こう。
PROFILE|プロフィール
小関 啓人(こせき ひろと)
HIGH! STANDARD ショップマネージャー
CAMBERならではのメイド・イン・USAのプロダクトが持つ雰囲気をこよなく愛する。
メイド・イン・USAを守り続ける硬骨なブランド
そもそもCAMBERとはどんなブランドなのだろうか。「CAMBERの歴史は創業者であるバリー・シュワルツさんの家族がアメリカのペンシルバニア州で生地の生産工場を発足した1948年まで遡ります。1982年より現在のラインナップに通ずるTシャツやスウェットアイテムの生産を手掛けはじめ、1992年にはCAMBERとしてオリジナルレーベルを開始しました。
当初は学生のスポーツチーム向けのウエアやトレーニングウエアなどを生産していましたが、その丈夫さが過酷な環境で働くワーカーたちの間でも評判になりました」
創業以来、メイド・イン・USAを貫くブランドとしても知られている。
「1990年代は、多くのアメリカブランドがこぞって生産拠点を他国に移しました。しかし、CAMBERはアメリカ製にこだわり、今もなお本国の自社工場で生産を続けている稀有なブランドです。現在はTシャツのほかに、スウェットやサーマルなども展開しています。工場は小規模で、従業員は40人ほどのため、生産数は限られています」
日本への上陸は1990年代の半ば頃。同時期に、HOLLYWOOD RANCH MARKETやHIGH! STANDARDの母体である聖林公司が取り扱いを始めた。以来、HIGH! STANDARDの棚にはずっとこのTシャツが並んでいる。
「日本で知られるようになったのは、 1990年代のストリートファッションのブームがきっかけです。たしか、いわゆる裏原ブランドもCAMBERのボディを使ったTシャツを作っていましたね。ブームが終わっても、アメ カジ好きの間に口コミで広まり、愛用者がだんだん増えていきました」
ボディは超厚手の8オンスコットン
そんなCAMBERのマックスウェイトの看板モデルが、「302」という胸ポケット付きの半袖Tシャツだ。「Tシャツの生地のスペックを表すには、厚みや密度を示す『オンス』という単位が使われるんですが、このモデルはおよそ8オンス。一般的なTシャツは4〜5オンス程度ですから、ほぼ2倍です。ギシッと目の詰まった厚みのある生地は、洗濯を繰り返しても型崩れやヘタリが起こりにくく、長く愛用することができます」
タフさの秘密はボディの素材だけじゃない。Tシャツの弱点である首元には肉厚のリブが使用され、首から肩にかけては2本針ステッチで補強されている。
「あまり知られていないのですが、ネックのリブには細いゴムが仕込まれているんです。このおかげでネックの伸縮性がアップして、より丈夫な作りになりました。この作業は技術的に難しく、かつ手間がかかるため、他のブランドは真似できません」
ヘビーオンスのボディはファッショ ンにも恩恵をもたらす。
「8オンスのヘビーウェイトコットンは、洗濯を繰り返すごとに目が詰まっていき、表面には独特の凹凸が生まれます。この凹凸によってできる陰影がまた味わい深い。また、ステッチ部分にできるパッカリングという縮みもこなれた雰囲気を漂わせます」
ちなみに、小関さんは乾燥機による経年変化が好みだという。
「乾燥機でギュッと縮ませると、凹凸がはっきり出るんです。縮みによってサイズはひと回り小さくなるため、ワンサイズ大きめを選ぶのがコツです。ただ、やり過ぎると生地をいためる恐れもあるので、あくまで自己責任でお願いします(笑)」
同じTシャツを着ていると、デザインに飽きてしまうということもあるだろう。その点、「302」は基本的に無地で、デザインといっても、胸に大ぶりのポケットがついているくらい。ゆえに飽きを感じにくく、トレンドにも左右されない。