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2024.05.01

ワークマン独自開発の新素材「オニテックス」開発者のこだわりが生んだ、強くて軽くて涼しいカーゴパンツ

2024年2月に開催されたワークマンの2024年春夏新製品発表会で、ひときわ来場者の目を引いたのが、今季から新たに展開されたシリーズである「クロスランダー」を紹介するブースである。
ワークマン2024年春夏新製品発表会会場
ワークマン2024年春夏新製品発表会会場
「クロスランダー」の製品は、ワークマンが独自開発した新素材「オニテックス」が用いられている。
「鬼のパンツは破れにくい」というキャッチコピーが付けられた「オニテックス」は、20万回の耐摩耗試験をクリアし、ワークマン基準で摩耗強さは約4倍、引き裂き強さは約2.6倍、引っ張り強さは約3倍という高い耐久性の上に、約130%の横方向ストレッチ、接触冷感、吸水速乾と、多彩な機能を備えている。
ワークマン2024年春夏カタログ
ワークマン2024年春夏カタログ
今回はワークマン製品開発第1部チーフバイヤーの川田真之輔さんに、ワークマン公式アンバサダーで「クロスランダー」シリーズの共同開発者でもある山田耕史が、製品開発の裏側をお聞きした。

車いじり好きの上司が企画の出発点

山田耕史(以下、山田)「クロスランダー」の企画はどういったところから始まったのですか?
川田真之輔(以下、川田)私の上司は車が好きなんですが、ガレージで車やバイクをいじっていると、膝や肘を地面に付けたり、車の下に潜ったりすることがあります。そうすると、どうしても服を地面に擦ったり、突起物に引っかけたりして、生地を破いてしまいます。そういったシーンでの着用に適した、「破れない」、「引き裂きに強い」服をつくりたい、ということが「クロスランダー」の出発点です。
山田ということは、「オニテックス」は「クロスランダー」に向けてつくられた生地ということですか?
川田そうです。「破れない生地」というコンセプトで、これまでなかった完全に新しい生地を、生地メーカーとつくりました。
山田「クロスランダー」はカタログだけでなく、製品タグにも「オニテックス」の摩耗強さや引裂強さについての数値が明記されています。
「クロスランダー」製品に付けられたタグ
「クロスランダー」製品に付けられたタグ
川田「オニテックス」の組成はナイロン95%、ポリウレタン5%ですが、非常に強い強度のナイロン糸を使うことで、高い耐久性を実現させました。生地のスペックの数値を出しているというケースは非常に珍しいと思います。「20万回こすっても、生地に穴が空きにくい」という具体的な数値があると、説得力が違いますから。
山田強靭さを誇る生地、ということで思い浮かぶ有名メーカーの生地を使用した製品と比べると「クロスランダー」は圧倒的に低価格です。その秘訣は何でしょう?
川田「クロスランダー」は、本来なら現在の倍くらいの価格になってもおかしくないでしょう。
さまざまな努力により低価格を実現させていますが、もっとも大きいのはやはり「量の強さ」です。大量に製品をつくるから、その分安くなるというシンプルな構図です。
たとえば、「オニテックス」はこの「クロスランダー」だけでなく、職人向けの作業服「プロコア」にも使われています。
ワークマン2024年春夏カタログ
ワークマン2024年春夏カタログ
ワークマン2024年春夏カタログ
ワークマン2024年春夏カタログ
川田多くの製品に生地を使うことで、コストが低減されます。
また、生地メーカーでも有名ブランドになると、「ブランド料」のようなコストもプラスされてしまいますが、ワークマンではそういうことはありません。
さらに、今後の製造量の多さを見据えた上で、安くしてもらっている、ということもあります。しばらくの間は「オニテックス」を使った製品をつくり続けたいと思っているので。とはいえ、売れてもらえないと続けられないので、ぜひ売れてほしいと思っています(笑)。

ワークマンで夏に売れる服の絶対条件

山田僕は最近、「オニテックスクロスランダーベイカーパンツ」と「オニテックスクロスランダーカーゴパンツ」を、普段着としてほぼ毎日愛用しています。カタログやタグではアピールされていませんが、「軽さ」も「オニテックス」の大きな魅力だと思います。
ワークマン×山田耕史共同開発「オニテックスクロスランダーベイカーパンツ」
ワークマン×山田耕史共同開発「オニテックスクロスランダーベイカーパンツ」
川田ワークマンの夏物は、生地の薄い服が圧倒的に売れます。特に体を動かす現場の職人さんにとって、夏場の涼しさは絶対条件ですから。
当たり前の話ですが、生地の耐久性を高めようとすると、どうしても分厚くなってしまいます。なので、「オニテックス」の生地をオーダーするときは、薄さ、軽さにも非常にこだわり、何度も試作を繰り返しました。
ですが、ただ生地を薄くするだけだと、汗をかいたときにベタついてしまうことがあります。ですので、気持ち程度のシャリ感を出すことに加え、接触冷感素材を使うことで、強靭なのに薄くて軽くて涼しく着られる生地に仕上がりました。
「クロスランダー」は近年のファッショントレンドも反映させて、どの製品もある程度ゆったりとしたシルエットにしているんですが、着心地のよさや使い勝手を追求するとやはり必要だということで、ストレッチ性の高さにもこだわりました。最近の市場では気楽に着られる服のシェアが広がっていますが、「着ててストレスにならない」という点は重要だと思います。
山田「ストレス」は、今後の衣料品にとって大切なキーワードになると思うので、ぜひともワークマンにはその分野で業界をリードしていってもらいたいです。
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