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翻訳、AIテレプロンプター、ナビを視界に表示する「INMO GO3」はなぜ“普通のメガネ”にこれほど近づけたのか
リアルタイム翻訳の字幕が視界に映し出され、話すペースに合わせて原稿が自動でスクロールする。AIスマートグラス「INMO GO3」が目指すのは、スマートフォンを取り出さず、必要な情報をハンズフリーで得られる体験だ。
今回は、多彩なAI機能に加え、日常的にかけられる軽さや視認性、プライバシーへの配慮まで、「INMO GO3」を支える技術について、イノモ日本の野村洋平さんと長野元親さんに話を聞いた。
AIの進化により、スマートグラスは新たなステージへ
初代モデルが2023年に登場して以来、「GO」シリーズは3世代にわたって進化を遂げてきた。その道のりは、スマートグラスが「AR(拡張現実)」から「AI(人工知能)」へと開発の主軸を移していく過程でもあった。初代と2代目はAR機能を中心としていたが、3代目となる「INMO GO3」ではAIが本格的に搭載され、飛躍的な進化を遂げたとイノモ日本株式会社の代表取締役、野村洋平さんは振り返る。「翻訳や文字起こしといった機能はGO2の時点でも搭載されていましたが、対話型AIアシスタントのような高度な機能が実用的になったのはGO3からです。これは、デバイスの進化というよりも、AIの進化が実用レベルに至ったことでプロダクトに追いついてきた、という方が正確かもしれません」

かつてのAIは、たとえば「おすすめのラーメン屋は」と尋ねると見当違いな回答を返すこともあったという。しかし、生成AIの急速な進化がその状況を一変させた。ハードウェア側の基盤が整うなかで、生成AIの進化によって対話型AIアシスタントなどの機能が実用レベルに近づいた。
GO3は、その両者が組み合わさったことで、従来のAR中心のスマートグラスからAIを活用するデバイスへと役割を広げた。
スマホを取り出さない世界――ハンズフリーがもたらす価値
では、AIにより進化した「INMO GO3」は、ユーザーにどのような新たな体験をもたらすのか。その核は、ハンズフリー体験と多様なAIアシスタント機能にある。リアルタイム翻訳は98言語に対応する。専用の「INMO Speaker」と組み合わせることで、相手の言葉を翻訳して視界に字幕表示し、自分の言葉を翻訳された音声としてスピーカーから相手に届けることができる。
また会議の文字起こしや要約機能はもちろん、話すスピードに合わせてスクロールされるAIテレプロンプター機能も搭載。会議やプレゼン、異言語での会話など、ビジネスシーンでの活用を想定している。

ビジネス以外でも、写真翻訳やナビゲーションなど、視界に情報を表示する機能を活用できる。たとえば旅行先では、スマートフォンを手に持ち続けることなく、必要な情報を確認しながら移動できる。
「これこそが新たなインターフェイスとして、メガネが優れていると考えている理由です。人間の手が塞がっている状態を、我々は望ましくないと考えています。娯楽であれビジネスであれ、手を自由にして情報を得られる手段を増やすのが、未来のデバイスの形です」(野村さん)
ガジェットに見えない「普通のメガネ」であるための設計
とはいえ、未来的な機能への期待とは裏腹に、これまで数多くのスマートグラスが市場に登場しては、その多くが定着することなく姿を消していった。営業部の長野元親さんは、過去の製品が普及しなかった理由の一つは「かけにくさ」にあったと分析する。「これまでのAIやARメガネは奇抜なデザインになりがちでした。また社内の研究により、人がかけていて負担にならない重さの目安は50g前後ではないかと我々は考えていて、それ以上重いと、外に持ち出して日常的に使うのは難しいと思っています」

INMO GO3が目指したのは、最先端のデバイスでありながら、あくまで「普通のメガネ」であることだ。ディスプレイには、光をレンズ内部で導いて映像を表示する「ウェーブガイド方式」を採用した。光学系を薄く構成しやすく、一般的なメガネに近い厚みと約58gの軽量化につなげている。
マグネット式の外付けバッテリーは軽いだけでなく、出先でも追加充電しやすい設計としている。また、過去の製品で課題となりがちだった前後の重量バランスを整え、長時間装着した際の負担にも配慮している。
デザイン面でも表面は指紋が目立たないマット加工が施され、ガジェット特有の光沢感を抑えている。さらに、アジア人の骨格に合わせて金属製のノーズパッドを採用するなど、装着感を追求している。
視界を遮らず、文字を読みやすくする光学設計
スマートグラスのもう一つの課題は、現実の風景を遮ることなく、デジタル情報をいかに読みやすく表示するかにある。「表示色の緑色の光は周囲の自然光に干渉されにくい性質を持ち、人間の目にはその光だけがくっきりと浮き上がって見えるのが特徴で、高い視認性を確保できます。また、屋外の強い日差しから薄暗い室内まで、幅広い環境で視認性を確保するため、最大1,500ニトの高輝度表示にも対応しています」(長野さん)

さらに、旧モデルでは四角形だった表示領域を人間の視野角に合わせて最適化することで、視線を大きく動かさなくても情報が自然に目に入るようになった。こうした光学設計によって、現実の風景を見ながら、必要な情報を視界の中で確認できるようにしている。
信頼を築くためのプライバシー保護機能
日常的に身につけるデバイスだからこそ、プライバシーへの配慮は不可欠だ。かつて、カメラ付きグラスが悪用された歴史を教訓に、INMO GO3はユーザーと周囲の人々の信頼を築くための機能を搭載している。その一つが、カメラ撮影時に点灯する白色のLEDインジケーターだ。これにより、周囲の人は撮影中であることを認識できる。
「さらにこのインジケーターを指などで意図的に塞ぐと、悪用防止のために撮影機能そのものが無効になる仕組みになっています。日本に限らず、世界中でプライバシーはかなり重要視されていますので、この機能を搭載することで安心して利用してもらえるよう配慮しています」(野村さん)
INMO GO3は、スマートフォンを完全に置き換えるものではない。一方で、翻訳やナビ、AIテレプロンプターによる情報を、スマホを取り出さず視界の中だけで確認できることは、スマートグラスならではの価値だ。
AI機能だけでなく、約58gの軽量設計や視認性、プライバシーへの配慮まで含めて、日常的にかけられるデバイスへ近づけた「INMO GO3」。視界そのものを情報インターフェースにするための技術が、少しずつ現実のものになっている。
PROFILE
野村 洋平(のむら ようへい)
イノモ日本株式会社 代表取締役
PROFILE
長野 元親(ながの もとちか)
イノモ日本株式会社 営業部
Text:Junko Hayashida



