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時代に流されない「街の洋服屋」、Pt.Alfredが30年以上貫くもの作り

2026.10.09
1994年、東京・恵比寿にオープンした「Pt.Alfred(ピーティーアルフレッド)」。30年以上にわたり、変わらぬチノパンを作り続けてきた。
流行や効率を追うのではなく、丈夫な生地、サイズごとの型紙、変わらない品揃えを守り続けている。その姿勢は、一本を長く愛用してほしいという店主の考えに貫かれるものだ。
オーナーの本江 浩二氏に、チノパン作りと「街の洋服屋」を続ける理由を聞いた。

ジーンズの販売から培った「実用品」への考え方

本江氏の原点は、高校時代に始めたジーンズショップでのアルバイトだ。卒業後に上京し、アパレルの世界へ進んだ。
ジーンズショップでは、ワークウエアだったデニムがファッションアイテムとして支持を広げる過程を体感した。この経験が、後のチノパン作りにつながっていく。
「本来ジーンズはワークウエア、チノパンはミリタリーウエア。実用品としての衣料をファッションに落とし込むのがいいんですよね。
チノパンにオックスのボタンダウン、グレーのスウェットを重ねて、ネイビーブレザーを羽織る。そういうスタイルを突き詰める方が面白いと考えたんです」
Pt.Alfredオーナーの本江 浩二氏

アイビーでもトラッドでもない“3型”というスタイル

「自分で作ったものを、自分で売りたい」と、ジーンズショップの次はトラッド、アイビー、パンツメーカーなどで経験を重ねた。独立前にはデザイナーブランドの生産管理を担当し、服作りを学んだ。
そして1988年、自身の会社「ジャックロビー」を設立する。
「昔は“1型・2型・3型”という言い方があったんですよ。1型がアイビーで、2型がトラッド。3型はそれらの変形で、もっと砕けたスタイル。意識的に僕がやってきたのは、その“3型”のつもりです」
伝統を踏まえながら、型にはまりすぎず自分なりに解釈する。それが本江氏の言う“3型”だ。華やかなDCブランドブームとは距離を置き、「実用品衣料」を軸にした服作りに注力した。

10年履いてもへこたれない、高密度チノクロス

1988年の会社設立当初からチノパンを作り、1991年には現在も核となる高密度チノクロスを完成させた。
「目が詰まっていて、がっしりしている。10年履き込んでもウエストやポケット口、裾あたりが少し擦り切れる程度。本当にしっかりした生地なんです」
本江氏が目指したのは、チノパンを「究極の実用品」として磨き上げることだった。
30年以上の間には機屋の廃業や染工場の変更もあった。そのたびに生地感や色についてのテストを重ね、同じ質感と色味を再現してきた。変わらない定番は、作り手が変わるなかでも品質を守るための積み重ねに支えられている。
本江氏の理想の生地で作られるPt.Alfredのチノパン 24,200円(税込)

「効率の悪いことでは、誰にも負けない」型紙は全サイズ手引きでグレーディングをする

1994年、本江氏は恵比寿に「Pt.Alfred」をオープンした。自らを「恵比寿のチノパン屋」と称する店には、その哲学が隅々まで行き渡る。
Pt.Alfredの接客は、ただ商品を売るだけではない。顧客が「どんな格好をしたいか」「何に合わせたいか」を丁寧にヒアリングする。もし顧客が合わせたい服を具体的にイメージできていなければ、「今度それを持ってきてください」と、その日は何も売らずに帰すことさえあるという。
「合わなかったから誰かにあげるとか、売っちゃうとか、そういうのは絶対勧めません。駄目になるまで履いてもらいたいんです」と本江氏は語る。
定番のチノ生地は9色、サイズはSから3XLまで。さらにオーダーメイドにも対応する。特徴的なのは、全サイズの型紙を一から手引きしていることだ。
「ワンサイズずつ型紙を作らないと、ウエストに合わせてグレーディングしたら、大きいサイズは裾幅まで太いパンツになってしまう。だから、どのサイズでもシルエットが綺麗に見えるように作っているんです。効率の悪いことでは、誰にも負けませんよ」
この「非効率」が、サイズが変わっても美しいシルエットを守る要となっているのだ。
現在の店舗の2階にあった1990年代のPt.Alfred
現在の店舗、写真向かって右上:紺のブレザー 48,400円(税込み)もPt.Alfredのオリジナルアイテム
右下:店内奥には種類ごとに積まれたチノパンが大量に陳列されている。

同じ生地から生まれる「ARMY ONE」と「AMERICAN STRAIGHT」

100種類以上に及ぶパンツの中で、ブランドの原点といえるのが「ARMY ONE(アーミー ワン)」だ。誕生以来、微妙な仕様変更はあったが変わらずに作り続けている。
「映画『大脱走』でスティーブ・マックイーンが履いていた、シュッとしたパンツがイメージソース。両サイドやピップは巻き縫いで、ワークウエア由来の頑丈な仕様です」
30番手の太い糸による力強いステッチが特徴。10年履いた私物も、生地は体に馴染みながら高密度な綾目を保っていた。
ARMY ONE 24,200円(税込)
細めの両玉縁(りょうたまぶち)のヒップポケットや巻き縫いの仕様そしてタフなステッチが見て取れる
もう一つは「AMERICAN STRAIGHT(アメリカン ストレート)」。ARMY ONEとまったく同じ生地を使いながら、その佇まいは大きく異なる。こちらはスラックスなどを手掛けるドレスパンツ工場で縫製されており、ポケットはドレッシーな片玉縁仕様に。使われる糸も50番手の細いものを採用するなど、随所にエレガントなディテールが光る。
「生地は一緒でも、作っている工場も、使っている糸も、仕様も違う。もうまったく違うものを作っているんです。このドレスパンツを、洗いざらしでラフに履くのも格好いいでしょう」
同じ生地でも、縫製と仕様でまったく異なる表情を生む。Pt.Alfredのもの作りの幅が見える2本だ。
AMERICAN STRAIGHT 24,200円(税込)
尻ポケットのD閂(カン)やベルトループの仕様、腰裏のマーベルトの手仕事などもドレスパンツ仕立ての縫製となっている。タフな生地でエレガントなディテールという二面性のある特徴を持つ

30年以上前のチノパンが今も買える、変わらない品揃えの強さ

Pt.Alfredの強みは、定番を作り続けていることにある。
「ネットで昔の記事か何かを調べて、『これありますか?』と来店される方がいます。大概のお店ではないじゃないですか。うちは『あるよ』って言えるんです。たとえば25年前、2000年代に買われたモデルを探しに来店されても、ちゃんと継続しています」
体型が変われば、昔の一本に近い別サイズや、年齢による体型変化を考えたモデルも選べる。長く同じ店に通える理由の一つだ。
古くからの顧客に加え、各種媒体を見て来店する若い世代も増えているという。
「どこかで全部つながってくるんですよね」と本江氏。人と服、人と人の関係も、この店に流れる時間の中で積み重なっていく。
定番を守る一方、近年は太めの「CLASSIC 2PLEATS(クラシック 2プリーツ)」も展開。ARMY ONEの無骨さとAMERICAN STRAIGHTのエレガントさを併せ持つ。
深い股上とプリーツによる腰回りのシルエットに、定番を守りながら今の気分も取り入れる本江氏の姿勢が表れている。
CLASSIC 2PLEATS 26,400円(税込)
インプリーツに深めの股上で、こちらもオリジナリティーあふれる仕様とシルエットになっている
効率やトレンドより、一人ひとりに合う一本を作り、「駄目になるまで履いてもらいたい」と考える。Pt.Alfredが守ってきたのは、服と長く付き合うためのもの作りだ。
30年以上前のモデルが今も買え、体型が変わっても次の一本を選べる。人生の相棒となるチノパンを探すなら、本江氏を訪ねてみてほしい。

PROFILE

本江 浩二(ほんごう こうじ)

有限会社ジャックロビー代表

70年代中盤ジーンズショップのアルバイトからキャリアをスタートし、アイビーやトラッド、洋服の生産管理などさまざまな会社でキャリアを積み、1988年に独立し、有限会社ジャックロビーを立ち上げる。1994年には、自らのショップPt.Alfred(ピーティーアルフレッド)を恵比寿にオープンし現在に至る。ライフワークとして雑誌2ndの連載「The Biography」、著書には『オヤジの着こなしルール』がある。

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