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極寒地のカウボーイのために生まれた「Rocky Mountain Featherbed」 日本で復活し世界へ広がる名作ダウン
1980年代に一度姿を消したアメリカのアウトドアブランド「Rocky Mountain Featherbed(ロッキー マウンテン フェザーベッド)」。日本での復活を実現した背景にあったのは、ヴィンテージへの深い愛情と、ものづくりへの探究心だった。
一枚革のヨークや独特のナイロン生地、手間暇をかけたダウンの製法。かつての魅力を受け継ぎながら、現代にふさわしい一着を生み出し続けている。
今回は、ブランドを展開する株式会社サーティーファイブサマーズの信岡 淳氏に、ブランド復活の背景と、そのものづくりについて話を聞いた。
極寒の地で生まれた、一枚革のレザーヨーク
ブランドが生まれたのは1960年代後半、アメリカ・ワイオミング州ジャクソンホール。ロッキー山脈の麓に位置し、冬には厳しい寒さに見舞われる土地だ。カウボーイの防寒着として誕生したRocky Mountain Featherbed(以下、RMFC)を象徴するのが、ウエスタンカットのレザーヨークである。肩に継ぎ目のない一枚の牛革を使い、機能性と独特の存在感を両立した。「肩にハギ(縫い目)がない一枚革をウエスタンヨークとして施した仕様はRMFCの多くのアイテムに見られるのですが、いくつかあるラインナップから定番的な「Down Vest(ダウン ベスト)」と「Down Jacket(ダウン ジャケット)」をご紹介します」
信岡氏によると、当時の関係者はこのヨークを親しみを込めて「One Nappa(ワン ナッパ)」と呼んでいたという。単なる装飾ではなく、カウボーイのための防寒着というブランドの出自を今に伝えるディテールだ。その特徴的な姿は、ヴィンテージ市場でも長く愛されてきた。
ヨークの曲線はウエスタンウエアを思わせる一方、ダウンベスト全体の印象を決定づける。時代が変わっても、ひと目でRMFCと分かる理由のひとつだ。



この2型は街でも映える鮮やかな配色が見られ、ボタンはブラスキャップのスナップボタンを採用している。ボタンの間隔が均等ではなく、上部のボタンを開けて着た際の快適さなどが当時から考慮されていたものと推測される。もちろんこの独特なピッチも再現している。
なお、袖付きのDown Jacketはブランド復活後に考案されたモデル。過去の意匠を守りながら、現代に必要な形を加える姿勢もRMFCの特徴だ。

一枚革のレザーヨークやブラスキャップのドットボタンの仕様が見てとれる



ブランドの原点「Christy Vest(クリスティー ベスト)」
RMFCの代表作として知られるのが、襟に天然ムートンを配した「Christy Vest(クリスティー ベスト)」だ。信岡氏によると、Down Vestの鮮やかな配色に対し、Christy Vestは自然になじむアースカラーの配色であるのも特徴のひとつだという。
ボタンもブラスキャップのものとは違い、Christy Vestにはパールドットボタンが採用されている。

天然ムートンを襟に配し、アースカラーの配色とパールドットボタンが特徴的
RMFCへの愛がブランドを復活させる
RMFCは1980年代後半に歴史の表舞台から姿を消した。しかし、ブランドへの想いを持ち続けた人物がいた。サーティーファイブサマーズ代表の寺本 欣児(てらもと きんじ)氏だ。「弊社の代表である寺本が、もともとRMFCが大好きで集めていたんです。そして『Rocky Mountain Featherbedという名前のままで、自分が復刻したい』と、2000年頃からずっと言い続けていました」
その想いが実現したのは2005年、日本と同時に本国アメリカの、ロンハーマンやフレッド・シーガルなどのセレクトショップにて復活させた。それは単に製品を世に出すのではなく、ブランドそのものを取り戻す挑戦だった。
70デニールのナイロンに宿る、復刻への執念
復活にあたり大きな課題となったのが、ヴィンテージ特有のハリとコシを持つナイロンの再現だった。2000年代のダウンウエアは薄く光沢のあるナイロンが主流で、かつてのRMFCに用いられたような中肉の生地は市場から姿を消しつつあった。「僕らが復刻しようとした2005年頃、世の中の生地メーカーは、もう中肉のナイロンを作らなくなってきていたんです。なくなってしまうなら、自分たちで作るしかないと」
そこでヴィンテージの生地を分析し、70デニールの高密度ナイロンを独自に開発。羽毛の吹き出しを抑えながら、ダウンが膨らむために必要な空気の通り道も確保する。生地の密度と通気度を両立させるため、試行錯誤を重ねた。ドットボタンをはじめとする付属パーツもオリジナルで作製し、細部まで当時の風合いに近づけていった。
オリジナルに近い素材が手に入らないなら、現代の既製品で代用するのではなく、素材そのものを作り直す。その選択には、ヴィンテージの真の風合いを次の世代にも届けたいという強い意志がある。

ダウンパックを使わない「ダウンウエア」
素材だけでなく製法も徹底している。近年の一般的なダウンウエアは、羽毛を詰めたダウンパックを表地と裏地の間に挟む手法をとっている。一方、RMFCはパックを使わず、表地と裏地の間に直接羽毛を入れる、手間のかかる製法を守り続けている。「ダウンパックを入れると生地が4層になってしまうんです。1960年代はパックなしで作っていました。僕らは今も、その製法を貫いています」
これは職人が羽毛を均一に延ばしながら縫い上げる熟練の技術を要する。内ポケットの底が浅いのも、この製法に由来する。ダウンを押さえるステッチがポケットの底を通るためで、現代の基準では不便にも思えるが、ヴィンテージの仕様を尊重した結果だ。
両端をあえてストッパー金具で止めたコンシールファスナーなども同様。効率だけでは測れないディテールに、ブランドの思想が表れている。手作業で羽毛を扱う工程は大量生産には向かない。それでも生地の層を増やさず、オリジナルの着心地と構造を守るために製法を守り続けている。こうした細かな仕様の積み重ねが、復刻品としての説得力を生む。

ヴィンテージの色を楽しむカスタムオーダー
色を選ぶ楽しさを広げながら、基本のディテールは変えない。その姿勢が、新しいファンにも魅力を伝えている。カラーを自由に組み合わせられる仕組みは、復刻を完成形として固定せず、着る人自身が参加できるものづくりへと広げている。「今はそのカスタムできるようになっています。公式サイトに入ってもらうと、もう自分で好きな配色を選べるんです」
当時にはなかった色の組み合わせも、歴史ある素材やディテールを通して楽しめる。忠実な復刻と新しい着方の提案は、矛盾するものではない。ブランドの魅力を次の世代へつなぐための、新たなアプローチといえる。
こうしてブランドへの強い想いで復活したRMFCは、リスタートから20年を超えた。失われたナイロンを作り直し、ダウンパックを使わない手作業を守り、一枚革のヨークを今に受け継ぐ。そこにあるのは、懐かしさだけを追う姿勢ではない。なぜその素材や構造が選ばれたのかを理解し、現代にも通じる価値として届けることだ。
カウボーイの防寒着から始まった一着は、時代と場所を越え、今も新たな着こなしへと受け継がれている。
PROFILE

信岡 淳(のぶおか じゅん)
株式会社サーティーファイブサマーズ
ホールセール & プレス
愛媛県松山市出身。高校を卒業し地元の古着屋でアルバイトをしながら、買い付けなどにも携わる。服飾専門学校を卒業後、レディスのOEM会社に入社しものづくりのイロハを学びその後サーティーファイブサマーズに入社。「アナトミカ」や「ロッキー マウンテン フェザーベッド」「ビッグ ヤンク」のホールセールとプレスをメインに幅広く活躍中。







