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名古屋・大須の老舗が語る60s&70sの世界 — 古着店「the other(ジ・アザー)」31年の軌跡
全国各地の古着エリアのなかでも、名古屋・大須は個性豊かな古着屋が集う。そのなかでも、大須に詳しい人ならば、「the other(ジ・アザー)」のお店を知っている人は多いだろう。
ジ・アザーは、「60s&70sファッション、音楽、サブカルチャーのトータルショップ」のテーマを掲げて大須にオープンし、古着屋という枠を超え、音楽レーベルまで立ち上げた異色な経歴を持つお店だ。
SNSでも人気のジ・アザーは、大須の街でどのような歴史を刻んできたのだろうか? 今回は同店の店長である鈴木さんにお話を伺った。
PROFILE
鈴木 隆浩(すずき たかひろ)
the other 店長
昭和40年代のファッション、音楽、サブカルチャーを愛し続けて37年。最近ではマイペースにレコード・セレクター活動も再開。
1994年にオープンした、60s&70sファッションの専門店
ジ・アザーは、レコードショップの2階からスタートし、大須商店街で2号店・3号店を経て、現在に至る。どのような経緯で、ジ・アザーのお店をオープンすることになったのだろうか。
「当時は、60年代、70年代をコンセプトにしたお店はまだなかったんです。自分も若い頃は、60年代のモッズファッションのシーンにいたので、専門的なお店を作りたいと思ってお店を始めました。
最初から、お店をやるのなら絶対に大須でやりたいと思っていましたね」
その後、さまざまな理由で移転しつつ、それでも大須の場所にこだわるのには、この街にしかない雰囲気と「昭和」の香りが残っているからだという。
「自分が60年代ファッションに興味を持ったときに、昔の商店街にあったような紳士服屋や婦人服屋などに服を探しに行っていました。
今では観光地化されていますが、90年代の大須はまだ昭和の香りが残っている雰囲気でしたね。おじいちゃんやおばあちゃんしかいないような、寂れた商店街でしたが、その分、デッドストックの掘り出し物もいっぱいありました。
90年代の大須は栄とは違う雰囲気で、古着好きが集まる個性的な人が多い街でした」
オープン当初から、名古屋初の60s&70sファッションの専門店として話題になり、かつての2号店では、古着以外にも超貴重なレコード盤や書籍も扱っていたため、コレクターやDJの間でも話題になった。
全国各地の60s&70sのファッション好きやコレクターが集うこともあり、一見すると敷居が高い印象があるが、ジ・アザーを訪れる年齢層は非常に幅広い。
「今年の3月でオープン31周年になりました。
オープンから来ていただいているお客様もいますし、子育てなどで一時的に古着を離れていた方や若い世代も遊びに来てくれるので、お店の購入層は、ぐちゃぐちゃな感じですね(笑)。10代の若者からおばあちゃんまで遊びに来てくれます」
オーナー鈴木さんが培ってきたカルチャーと経験が詰まった店内ジ・アザーはコンセプト通り「60s&70sファッション、音楽、サブカルチャーのトータルショップ」として、ファッションだけでなくカルチャーも提供してきた。
特に「音楽」はジ・アザーにとって欠かせない要素のひとつだ。オープン当初から数多くのライブ&DJイベントを主催し、常に名古屋の60s&70sシーンを牽引するショップとして活動を続けてきた。
「お店をやる前からバンドやDJをやっていたので、お店ができてからは企画イベントを始め、さらに人が増えていきましたね。一時期は『ジ・アザーレコード』というレーベルまで立ち上げました。
60s&70sバンドも全国から呼んで規模が大きくなっていきましたが、ジ・アザー11周年記念の『アングラポップ』というイベントを最後に落ち着きました。現在は古着に特化していますが、今でもイベントに呼ばれるとたまにDJもしています」
また、鈴木さんが個人で運営しているXアカウント『昭和元禄アングラポップ』も人気だ。昭和レトロのファッションを鈴木さんのシンプルな言葉で紹介し、フォロワーから熱い支持を得ている。
鈴木さんのXでジ・アザーを知り、60s&70sファッションに興味を持った人も多いだろうが、Xでの大きな反響に対しては意外な言葉が返ってきた。
「Xに投稿している写真は、すべて私物の雑誌からです。最近はインスタグラムがメインで、ストーリーに好きな音楽を流したりして楽しんでいます」
ジ・アザーが提供する60s&70sのヴィンテージは海外のものだけでなく、日本の昭和レトロも取り扱っている。一見、互いに雰囲気が異なるように思えるが、ジ・アザーでは、それぞれが見事に調和しているのが不思議だ。
昭和レトロを取り扱うにも、鈴木さんのこだわりがあるという。
「最初はブリティッシュばかりを掘っていましたが、日本の60年代、70年代も実はとてもクールだったんですよね。そのシーンをよく見ると、宇野亞喜良や岡本忠成、寺山修司、山本寛斎、コシノジュンコがいます。
ファッションだけでなく、そのような文学的な背景も知るようになってから、日本の昭和レトロも見直して掘り下げるようになりました」
60s&70sのカルチャーを肌で感じるお店として
現在のジ・アザーの店舗は、赤と黒のコントラストが印象的な店内が特徴だ。60s&70sのモッズスタイルをはじめ、サイケデリック、ヒッピーなどディテールに凝ったデザインの服が揃い、オリジナルワンピースも販売している。「60s&70sファッションもトレンドとして度々注目されますが、今後も変わらずジ・アザーならではのヴィンテージ・ファッションを提供していきたいと思います。
日常のライフスタイルに取り入れて、60s&70sファッションを楽しんでいただけたらうれしいです」
1994年にスタートし、今年で31周年を迎えたジ・アザー。オープン当初からさまざまな活動を経て、これからも年代を問わず多様なお客さんと楽しみながらお店を続けていきたいという。
「今のお店はサロンのように、ゆっくりとお客さんと話せる雰囲気が楽しいですね。常連のお客さんはもちろん、新しいお客さんも気軽に遊びに来てほしいです」
長年、大須で60s&70sファッションシーンとカルチャーを牽引してきたジ・アザーには、全国各地からお客さんが訪れる。それは、ファッションだけでなく、鈴木さんの人柄や、その時代のカルチャーを肌で感じられるからだろう。
ファッションと音楽、60s&70sの豊かなカルチャーが融合したジ・アザーは、31年の歴史を超えて、今なお色褪せない時代の魅力を発信し続けている。大須の街に根付いたこの老舗は、単なる古着店ではなく、カルチャーの継承者として、これからも新たな世代に時代を超えた刺激を届け続けるだろう。
Text by Tajimax










