JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

Articles

素材と縫製をとことん追求してヴィンテージを再現、「WAREHOUSE&CO(ウエアハウス)」が30年貫く“完全なる復刻”

2026.10.20
ヴィンテージ古着の風合いを糸一本から忠実に再現する、日本発のアメカジブランド「WAREHOUSE&CO(ウエアハウス)」。その原点は一本のチノパンだった。効率よりも「完全なる復刻」を追求し、細部まで妥協しないものづくりを続けてきた。
今回は、広報の藤木 将己氏に、ブランド誕生の背景から、「完全なる復刻」を支えるものづくりについて話を聞いた。

「ヴィンテージの倉庫」を目指して。1995年、ウエアハウス設立

1980年代終わり、日本のファッションシーンはヴィンテージブームに沸いていた。大阪では、後に海外で「大阪ファイブ」と称されるデニムブランド群が台頭。そのなかで、WAREHOUSE&CO(以下、ウエアハウス)の創業者である塩谷 健一(しおたに けんいち)氏と塩谷 康二(しおたに こうじ)氏の兄弟は日本のデニムメーカーでの在籍中に、ものづくりから営業、販売、生産管理までを経験する。
一方、兄弟は中学時代からヴィンテージ品を解体し、ボタンやリベットの構造に至るまで研究を重ねていた。既存のレプリカの枠を超え、より深く、より忠実に再現したい。その探究心から独立を決意し、1995年にウエアハウスを設立した。
ブランド名は、独立直後に訪れたアメリカでの体験に由来する。現地のディーラーに「お前たちが探しているものはWAREHOUSE(倉庫)に行けばある」と案内され、膨大なヴィンテージ品を目にしたことがきっかけだった。
「ヴィンテージを手に入れて、そこから再現していくという意味で、その倉庫であるウエアハウスという名前をつけたんです。アメリカのWAREHOUSEに入ったときの感動を、製品を通して伝えたいという思いです」
単に見た目を似せるのではなく、素材や縫製、その服が生まれた背景まで掘り下げる。この姿勢が、ブランドのものづくりの土台となった。
創業間もない頃のフラッシャーと革パッチ
現在展開されているWAREHOUSE&COの製品、ここから詳しく掘り下げていこう

デニムではなく「41型」チノパンから始まった創業期

ウエアハウスが最初に市場へ送り出したのは、意外にもジーンズではなくチノパンだった。デニムには革ラベルやリベットなど、オリジナルで用意すべき部材が多く、創業時の規模を考えてのことだったという。
「デニムというのは、顔となる革ラベルだったり、リベットだったり、オリジナルで作るパーツがたくさん必要であり、開発の期間や費用などを考えた結果、最初はデニムと変わらないぐらいの知識があったチノパンからつくり始めたと聞いています」
そこで手掛けたのが「41型」と呼ばれるモデル。生地の風合いから縫製仕様まで徹底して研究をしていたことで、当時の最高のクオリティを追求したものが出来上がった。
創業時からその姿勢に妥協はなく、デニム開発へと歩を進め、現在もブランドのアイコンである「Lot 1001XX」が誕生する。
CHINOES 25,300円(税込)
ウエポンクロスと呼ばれる双糸で織られた生地や、手作業で作られる細幅の両玉縁仕様のヒップポケット、巻縫いの縫製やボタンフライなど、US ARMYの41型の仕様が高いクオリティで再現されている
1001XX 29,700円(税込)
ヴィンテージを徹底して再現したオリジナルセルビッチデニムは、全て綿糸の異番手によって縫製される。オフセットのベルトループやヒップポケット裏の隠しリベットなど現行のジーンズには無い仕様が細部まで再現されている
Lot 1001XXを5年ほどはき込みエイジングさせたもの

インチ規格の縫製を再現。「ミシンの神様」との出会い

1990年代中盤、多くのブランドがヴィンテージデニムの「生地」の再現に取り組むなか、塩谷兄弟が目を向けたのは「縫製」だった。ヴィンテージジーンズを解体すると、現代の効率性とは異なる縫い方や構造が見えてくる。そのメカニズムまで再現しなければ、本来の表情にはならないと考えた。
最大の壁は、当時のアメリカ製衣料特有の「インチ規格」だった。日本のミシンはJIS規格のミリ単位が基本で、そのままではヴィンテージ特有の縫い幅やステッチのピッチ、経年による独特の「アタリ」まで再現できない。そこで彼らが選んだのが、ミシンそのものを改造するという方法だった。
まだ20代前半だった創業者の2人は、ウエアハウス設立前からお世話になっていたベテランの職人を訪ね、実物のヴィンテージを見せながら相談を重ねた。
後に「ミシンの神様」と称されるその職人は、若者たちの熱意と発想の合理性を理解し、前例のないアメリカのミシンへの取り組みを引き受ける。
「その方は日本人ですから、当時のアメリカのことはわからないですけど、ミシンを見れば、『Union Special(ユニオン スペシャル)』(※アメリカの老舗ミシンメーカー)がどのような理由でそれぞれのミシンを開発したかを理解された。だから我々がやろうとしていることの合理性も理解してくれたんです」
ユニオンスペシャルの修理から、時にはパーツの自作や改造を重ね、ヴィンテージジーンズと同じ規格の縫製を可能にする環境が整った。
重要なのは、完成時の見た目だけではない。着用を重ねた先に生まれるパッカリングやアタリまで見据え、当時と同じ結果に近づくために工程そのものを再現する。
その発想こそ、ウエアハウスの「完全なる復刻」を象徴している。

吊り編み機とシャトル織機で再現するスウェットとネルシャツ

その探究心はデニムだけに留まらない。30年近くつくり続けるスウェット「SET IN FREEDOM(セット イン フリーダム)」は、セット イン スリーブとフリーダム スリーブを組み合わせた、1930年代後半に実在した希少な仕様を再現している。
「おそらくディテール的につくりにくかったんだろうと推測できます。このデザインのヴィンテージスウェットは数年で生産されなくなったんです。それを僕らは30年つくり続けているんです。他のメーカーさんでは見たことがないですね」
生地も、ヴィンテージ特有の縦に筋が走る「タテ目」を再現するため、表糸・中糸・裏糸のうち中糸だけを細くし、編み機は旧式の「吊り編み機」を使用している。
筒状のまま裏起毛をかけられる工場は日本でもごくわずかで、ひとつの製品が完成するまで1年近くかかることもあるという。
SET IN FREEDOM 20,900円(税込)
10年以上着用したウエアハウスのSET IN FREEDOMスウェット。ダークネイビーが褪色してナスコンになるそのフェードの過程は、染色では出せない色である。
ボディの脇の下部分が袖口に向かって伸びているのが特徴的な仕様だ
こだわりは「FLANNEL SHIRTS(フランネル シャツ)」も同様だ。現代では非効率とされる昔ながらのシャトル織機で生地を織り、表ではなく肌に触れる裏側だけを起毛させ、ボタンの素材や形状も、再現する年代の柄に合わせて変える。
ジーンズで確立した「細部への執念」は、すべての製品に貫かれている。
FLANNEL SHIRTS 32,450円(税込)
写真 向かって左:シャツの裾に付けられたセルビッチ生地のマチ
写真 向かって右:バイアスにとられたポケットの柄取りと、ボタンは年代に合わせて様々なバリエーションがつくられ使用されている
20年ほど着用しているウエアハウスのフランネルシャツ 裏側の起毛が取れ、表側は褪色が顕著に進んでいる

増産より品質を優先。約30年続く非効率な生産

創業から約30年。世界的に日本製デニムへの需要が高まる一方、ウエアハウスは簡単に生産量を増やせない。創業以来、特定の工場で専用の織機を確保して生産を続けてきたため、需要が増えても急な増産には対応できないからだ。直営店でも、各品番の全サイズが揃うことは近年ほとんどないという。それは守るべき品質を優先した選択だった。
さらに現在は、デニムづくりを支える職人や、吊り編み機を扱う職人の高齢化にも直面している。「次の世代に技術を受け継いでいかないといけない段階に入りました」と藤木氏は語ってくれた。それでも安易な効率化は選ばない。時間がかかり、品薄になっても、その手間をかけた工程こそが製品の価値を生み出しているからだ。
現在は卸売のほかに全国に6店舗の直営店を展開し、むやみに規模を広げるのではなく今は情報発信を強化している。なぜこれほど生産に時間がかかるのか。その理由を「価値」として伝え、手にしたときの喜びにつなげたいという。
一本のチノパンで始まり、失われつつある技術と向き合いながら約30年。効率とは逆方向に進むようなものづくりこそが、WAREHOUSE&COを支えてきた。その探究は、これからも一着一着の細部に刻まれていく。
ウエアハウス東京店
東京都渋谷区恵比寿西1-29-8 恵比寿ウエスト1F
03-5457-7899

PROFILE

藤木 将己(ふじき まさき)

1974年京都府生まれ。

1997年WAREHOUSE入社。2004年、東京事務所の設立に伴い上京。現在は広報・営業を中心に事業運営を担当。趣味は古本収集。

Tags

Related Articles

Related Database