戦前の1933年、近代化とともにその歪みが現れる中、
東京美容科学研究所(当時の名称はゼノア香粧品化学研究所)が誕生した。
「化粧品とは本来、人の肌を健康的に美しく保つためにあるものだ」
この理念を掲げ、小澤王晃氏が設立した東京美容科学研究所は、皮膚科学に基づいた基礎化粧品の研究開発や、健やかな肌づくりの啓蒙活動を続けている。
今回は、現代表の小澤貴子さんに取材を行った。研究所としての取り組みや、長年化粧品とヒトの肌に皮膚科学の視点から向き合ってきたことで得られた知見、さらに正しいスキンケアについてお話を伺った。
PROFILE|プロフィール
小澤 貴子(おざわ たかこ)
株式会社 東京美容科学研究所 代表取締役
上智大学理工学部化学科卒業後、応用化学修士課程を修了。その後、大手化学会社で研究員を務めたのち、上智大学理工学部化学科非常勤助手として研究に従事。理学士、工学博士(応用化学専攻)
鉛に水銀、タール色素…化粧品の品質に疑問を投げかけ創業
東京美容科学研究所は、株式会社ゼノア化粧料本舗の研究機関として、小澤王晃氏により設立された。現在の代表である小澤貴子氏は、創設者の孫にあたる。
「今年で創業92年を迎える当研究所は、祖父が化粧品本来の役割に疑問を持ったことから始 まりました。創業当時は近代化への歪みが現れ出した頃で、美容に対する科学的な見方もま だまだ希薄で、化粧品に鉛や水銀が含まれる可能性があった時代です。
また、海外から原料や化粧品が流入したことで、安全性を判断することが非常に困難な状況でもありました。当時は禁止されていなかったタール色素による健康被害も報告されていたのです。