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29,800円でも予約殺到! なぜワークマンの「ペルチェベスト」はプロに選ばれるのか?
ワークマンは、半導体技術を用いて体を直接冷却・温熱する「ウィンドコアアイス×ヒーターペルチェベスト7個式スペシャルエディション」を開発した。
保冷剤がすぐに溶けてしまう過酷な酷暑課題を解決するため、なぜ彼らは風を送るファンウエアではなく、高価格帯となる「着る冷凍庫」の自社開発に至ったのか。
この記事では、株式会社ワークマン製品開発部第1部の土井健太郎さんの話から、次世代暑熱対策ウエアの技術的進化と現場のリアルな声から生まれた独自の設計思想を読み解く。
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倉庫作業の課題から生まれた「溶けない保冷剤」
今回の製品のコンセプトと、開発の経緯について教えてください。
外気温が35度を超えるような過酷な倉庫作業では、従来の保冷剤を用いた対策だとすぐに溶けてしまうという課題がありました。そこで、熱中症対策として継続的に効果を発揮できる製品を作りたいと考えたのが出発点です。半導体に電流を流すことで冷却や温熱ができる「ペルチェ技術」を採用しています。小さい冷蔵庫が冷えるのと同じような仕組みで、電流の方向を変えるだけで冷たくなったり温かくなったりする素材をウエアに組み込んでいます。
最速約1秒で冷却できるとありますが、なぜこれほど速く冷やすことが可能なのでしょうか。
ペルチェ素子の特性もありますが、無理に大きなものでなく程よいサイズのデバイスを使用し、周りのプレートで冷やせるようにしているから、というイメージです。何か特別な設計によって速度が向上しているというよりは、デバイスを適度な大きさに留めている結果だと思います。
動脈を冷やす「7つのデバイス」と現場の声

今回、ペルチェデバイスを7個搭載していますが、背中・腰・前面・首元という配置はどのように決めたのでしょうか。
人体設計に基づいています。開発段階でさまざまな場所にデバイスをつけて試した結果、一番効果的だったのが首でした。「動脈を冷やした方が体全体が冷える」というお客様の声も反映しています。また、背中は肩甲骨に当たって体の動きを妨げない位置を、前面は極限まで脇に寄せつつも作業の邪魔にならない位置を、作業員の方々の動きを想定して慎重に選びました。

現場の作業員を意識した設計のアップデートは他にもありますか。
安全帯(ハーネス)をつけられないという声があったため、背中のデバイス位置を上げてハーネスを通せるように工夫しました。また、バッテリーが発熱して胸元が熱くなるという課題に対しては、ポケット部分に断熱材の「X-Shelterβ」を採用しています。さらに、昨年のモデルでは側面に隙間が空いて冷たさを感じにくいという女性のお客様からの指摘を受け、今年はしっかりと体にフィットするように構造を改良しました。冷たさに慣れさせない「ゆらぎ」とダイヤル機構
右肩のダイヤルによるデバイス位置の調整機構はユニークですが、どのような課題から生まれたのでしょうか。
常に同じ場所を冷やし続けると、体が冷たさに慣れてしまって効果を感じにくくなるという課題がありました。そこで、右肩のダイヤルを回すことで、腰後ろのデバイス位置を約5センチ上下に調整できるようにしました。場所を変えることで再び冷たさを実感できますし、体に密着してフィット感が増すというメリットもあります。同じ理由で、5分ONと1分OFFを繰り返す「ゆらぎモード」も搭載しており、体を冷えに慣れさせない工夫をしています。ずっと冷やし続けると低温やけどのリスクもあるため、それを防ぐ意味合いもあります。

デバイスのプレート素材にグラファイトメタルを採用した理由は何ですか。
熱伝導性の効率を上げるためです。過去にはアルミやステンレスも試しましたが、アルミは熱伝導性が良すぎて冷たさが分散してしまい、逆にステンレスだと一部しか冷たくなりませんでした。数字上の性能だけでなく、実際に着てみて「どこがどう冷たいか」という体感を重視し、素材の変更とテストを繰り返した結果、グラファイトメタルに行き着きました。表面もツルツルからザラザラした点タッチ仕様に変更し、熱の伝わり方を調整しています。.jpeg?w=902&fm=webp)
29,800円への挑戦と広がる用途
デバイスの数が増えたことによる重量(約950g)や、ペルチェ特有の排熱の課題にはどう対応していますか。
重さに関しては、付属の延長ケーブルを使って胸ポケットのバッテリーを腰のポーチやズボンのポケットに移すことで、体感の負担はかなり軽減できます。排熱については、ペルチェの特性上、レインコートのような風を通さない服を上に着ると熱がこもって冷えなくなってしまいます。そのため、ファン付きウエアのように風が抜ける服との併用が効果的ですが、一番冷たさを実感できるのは、コンプレッションインナーの上から直接着て密着させる方法です。

29,800円という価格はワークマンとしてはかなりの高価格帯ですが、どのような戦略があるのでしょうか。
初めはこれほどの価格で出すつもりはなく、大きなチャレンジとなりました。しかし、プロの作業員が使うモデルとして価値を高めようと、夜間の視認性を上げるLED点灯機能や延長ケーブルを追加し、徹底的に機能を追求しました。結果として、先行予約の段階で19,800円のモデルと同じくらいの予約が入り、高い需要があることがわかりました。
最後に、開発者としておすすめの使い方があれば教えてください。
ペルチェベストは冷却だけでなく温熱モードもあるので、冬場の展示会やキャンプでの防寒対策としても非常に役立ちます。ジャケットの下にこっそり着込んで暖を取るなど、アイディア次第で無限の使い方ができます。今後もユーザーの皆様から新しい使い方を教えていただきながら、さらなる進化を目指していきたいです。「着る冷凍庫」として進化を続けるペルチェベストは、風を送り込むファン付きウエアとは異なり、人体を直接冷却するというアプローチで、過酷さを増す日本の労働環境に新たな選択肢を提示している。
現場のリアルな声を拾い上げ、配置や素材、フィット感に至るまで改良を重ねてきたペルチェベストは、29,800円という価格にも納得の理由がある。そこには、単なる冷却ウエアではなく、プロの作業環境を支えるための試行錯誤が積み重ねられていた。
PROFILE

土井 健太郎(どい けんたろう)
株式会社ワークマン
製品開発部第1部 (ワーク&アウトドア)







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