空間に漂う香りは、そこを訪れる人々の記憶に密やかに寄り添う。高級パフュームのように、一瞬で場所の印象を決定づける力を持つ空間の香り。沖縄を拠点に250以上の施設の香りづくりを手がける「Gotas(ゴタス)」は、空間デザインを香りで表現することで、新しい価値を生み出し続けている。 その特徴は、天然の香料を用いた独自の香りづくりにある。内装の質感や色彩を香りに変換し、空間に溶け込むような繊細な表現を実現。決して主役にならず、しかし確かな存在感を放つその香りは、多くの高級ホテルから支持を集めている。
空間に合わせて香りをデザインする。その一見シンプルな営みの中に、デジタル時代だからこそ光り輝く、オートクチュールのようなリアルな価値が隠されている。
そこで今回は、ゴタスを創業した富田さんに、香りづくりへの想いとアナログな感覚の可能性について話を伺った。
PROFILE|プロフィール
富田 唯(とみた ゆい)
株式会社Gotas代表取締役
1982年生まれ 沖縄県出身
ゴタスの調香術
子育てをきっかけに始めた香りの勉強。それが、250以上の施設に香りを提供するまでの事業に発展するとは、富田さん自身も予想していなかった。さまざまな業態で香りの可能性を模索していくなかで、最終的にホテルという場所に行き着いた。「いろいろと試した結果、多くの人が喜んでくれたのがホテルでの空間演出でした」と富田さんは振り返る。