道端や店先に、何気なく捨てられた段ボール。島津冬樹さんは、目を輝かせてそれらを集める“段ボールピッカー”として活動し、多くの人が見向きもしなかった素材を、財布やカバンなどの作品に生まれ変わらせている。渋谷にある自身のアトリエや、国内外で行われるワークショップには、毎回多くの人が足を運んで大賑わいだ。
彼が思う段ボールの魅力はもちろん、段ボール財布が生まれるまでの詳細な工程や、こだわりを聞いた。
PROFILE|プロフィール

島津 冬樹(しまづ ふゆき)
1987年生まれ。多摩美術大学卒業後、広告代理店を経てアーティストへ。2009年の大学生在学中、家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったのがきっかけで段ボール財布を作り始める。 2018年自身を追ったドキュメンタリー映画『旅するダンボール』(監督:岡島龍介 / 配給:ピクチャーズデプト)が公開。SXSW(米)でのワールドプレミアを皮切りに日本でも全国ロードショー。著書として「段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル」(柏書房) / 「段ボール財布の作り方」(ブティック社)がある。 2023年度より横浜美術大学非常勤講師を務める。
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温かみのあるデザインに惹かれる
島津さんは多摩美術大学の在学中に、段ボールで作品を作り始めたそうですね。
はい。情報デザインを学んでいた大学2年生のとき、家にあった段ボールで財布を作ったのが最初でした。自分の財布がボロボロにな ってしまって、買うお金もなかったので、とりあえず間に合わせで作ろうと。他の財布を参考にしながら、段ボールを切って、のりと両面テープで接着して……。1ヶ月もてばいいだろうと思ったら、なんと1年も使えたんです。すごく驚きましたね。同じように財布を作って、学祭で1つ500円で販売してみたら、すぐに30個ほどが売れたんです。とても手応えを感じて、「自分の道は段ボールしかない」と思うようになりました。