街を歩けば、アウトドア用のシェルやバックパック、シューズなどを身に着けた人を当たり前のように目にする。ただ、「
ARC´TERYX(アークテリクス)」ほど街並みにも溶け込むアウトドアギアはほかにそうそうない。
1989年にカナダのノースバンクーバーで創業した現・アークテリクスは、止水ジッパーやラミネート加工、熱成型といった革新的なテクノロジーを次々と世に送り出し、さらにモードな雰囲気さえ感じさせる洗練されたデザインによって、アウトドアギアの概念を一変させた。
今回フォーカスするのは「
アロー 22」。発売から26年が経った今もなお、人々を魅了し続ける定番バックパックの魅力を探ろう。
もの作りの原点は自転車に使われる熱成型の技術を取り入れたクライミングハーネス
アークテリクスの起源は、ロック・ソリッドというガレージブランドにある。同社は1991年に新型のクライミングハーネスを発売する。クライミングハーネスとは、岸壁をよじ登る際に、腰に装着するギア。クライマーでもあるデザイナー陣が開発した「ヴェイパー ハーネス」は、自転車で使われている熟成型の技術を取り入れており、当時は画期的な技術だった。
そして、軽くて頑丈、そして美しいフォルムを持つクライミングハーネスの評判は、クライマーたちの間に急速に広まっていった。
同年、このプロダクトが象徴 する進化のマインドを、岩を登り、自由な空へ羽ばたこうとする始祖鳥(アーキオプテリクス)になぞらえ、社名がアークテリクスとあらためられた。
数々の先進機能をまとった美フォルムのバックパック
「アロー 22」が登場したのは1998年のこと。当時のアークテリクスのデザイナーが、ノースバンクーバーでは移動手段として日常的に使われていた自転車での通勤時に使えるバックパックとして開発した。
デザインのコンセプトは「まだ誰も見たことのないバックパック」だ。
通常のバックパックは表と裏、左右のサイドのパネルを基本構造とするが、「アロー」はラミネートされたTPU素材が硬く、縫製が難しかったこともあって、左右のサイドパネルを折り紙のように内側に折り込んだ。
こうして自然界の造形物を思わせる独特の曲線フォルムを持つバックパックが生まれた。試作品を目にした人々はこぞって驚きの声を上げたという。
もっとも目を引くのは、縦向きに止水ジップが配された前面のカンガルーポケットだろう。口が大きく開くため、荷物の出し入れがスムーズにでき、かつひと目でアークテリクスのプロダクトだとわかる存在感を放つ。