ダウンジャケットのルーツはアウトドアウエアにある。
あくまで防寒ギアだから、保温性を高めるために、大量のダウン(羽毛)を充填する必要がある。すると、当然シルエットはボリューミーなものになり、洗練されたイメージは犠牲になる。
最高級のホワイトグースダウンやテーラリング技術が駆使されたダウンジャケットは、冬のフィールドに対応できる暖かさと、都会の街並みにもなじむ洗練されたシルエットを兼ね備える。
今回紹介する「
DOMIZIANO(ドミッツィアーノ)」は、そんなTATRASの叡智が結集された定番モデル。数あるラインナップの中、長らく人気ナンバーワンに君臨し続けるその実力を明らかにしよう。
3ヶ国のデザインチームによるプレミアムアウターブランド
TATRASは、ミラノを拠点に、イタリア、ポーランド、日本とのコーポレートブランドとしてスタートしたイタリア発のアウトフィットレーベルだ。
ブランド名はポーランド南部からスロバキア北部に広がるタトラ山脈に由来。
「in everywhere」をコンセプトに、「機能的」、「洗練」、「唯一無二」という3つの普遍的テーマを生かした造形美を追求する。生産はポーランドにある自社工場を中心に行っている。
本格アウトドアブランドのダウンに引けをとらない暖かさと、ドレッシーなスーツにも合うスタイリッシュなシルエットをあわせ持つダウンジャケットは、ファッションフリークたちの目に新鮮に映った。
日本ではブランドの始動と同時に展開が始まり、有力セレクトショップのバイヤーやスタイリスト、ファッションエディターたちの間で人気を博し、大人のダウンブランドとして認知された。
現在は、百貨店やセレクトショップでの展開のほか、南青山をはじめ、渋谷、日比谷、名古屋、大阪に直営店を構える。
ブランドの看板というべきベストセラーモデル
そんなTATRASの歴史を語るとき、「DOMIZIANO」の名は外せない。「DOMIZIANO」は、ブランド独自のパターンに加え、身頃に配されたダーツや前振りのアームといったイタリア仕込みのテーラリング技術によって、体にぴったりと沿う立体的なシルエットが生み出される。
その流れるようなラインを描くシルエットは、「着用時だけでなく、ハンガーに掛けたときも美しい」といわれるほどだ。
フィット感は時代に合わせてミリ単位でアップデートが繰り返され、現行モデルでは、ジャケットやニットなどのインナーにも対応できるようややゆったりめに調整されている。
ただ、スリムなダウンジャケットを作るには、ダウンの量を減らす必要がある。そこ でデザインチームは、ダウンの質によって保温性を高めたという。
TATRASが目をつけたのはポーランド産のホワイトグースダウンだ。
一般的にグース(ガチョウ)はダック(アヒル)より体が大きく、より大きく質の高いダウンボールを採取できる。そのため、ダウンボール内に大量の暖かい空気を蓄えることができるため、少量でも十分な暖かさを担保することができるのだ。
さらにこのホワイトグースダウン90%にフェザーを10%ミックスするという黄金比率によって、アウトドアブランドのダウンにも引けをとらない暖かさを実現する。