「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と国連のグテーレス事務総長が会見で述べたのは昨年7月で、確かに地球沸騰化(Global Boiling)を実感するような炎暑がその前後に数ヶ月も続いた。手持ち式や首掛け式のファンを使う人の姿が珍しくなくなり、ファン付きベストも普及したが、作業用ベストはバックパックを背負うと空気の循環が妨げられるのが難点だ。
左右非対称に配置したファンが風を循環させ、気化熱の働きで涼感を得る
「暑い夏でも快適に登山を楽しんでほしいという思いで、約2年かけて開発した製品です。最大の特徴は、左右非対称に取り付けるファンの配置ですね。通常の作業着であれば、左右同位置にファンを取り付けて問題ありませんが、登山の場合、バックパックを背負うのでショルダーハーネスが風の流れを遮断してしまいます。この問題を解決するためにフィールドテストを繰り返し、ファンをどのような配置にするとアウトドアのアクティビティ時に快適なのか、最適解を探求した結果がこの『ファンブロー ベスト』です。別売りの専用ファンと専用バッテリーを取り付けて着用するとわかりますが、背面に向かって左側のファンをやや上に、右側のファンをやや下に配した独自構造になっています」
着用して電源を入れると、2つのファンから送り出される空気がウエアの中を循環し、主に襟首と脇の下を風が抜けて涼しい。バックパックを背負った状態でも、この空気の循環が妨げられず、山歩きで発汗しても気化熱で体温調節が効率よく行われるのを感じる。
「バックパックによる背面の圧迫を軽減し、背中部分にも空気の通り道を確保するため、取り外し可能な3Dバックパネルをウエアの内側に装着してあるのもオリジナルの工夫です。肌触りがよく、つぶれにくく、通気性が高くて乾きもいい素材です」
海から山まで夏のアクティビティの選択肢を広げる、暑熱対策の新しいツール
標高2,000m以上ある高地を歩くなら真夏でもある程度涼しく、むしろ防風や防寒のためにアウターなどを取り出す機会も多いが、そこまでのアクセスに時間がかかり、頻繁に避暑を楽しむことはなかなか難しい。一方、天気と相談しながら気軽に出かけられる低山歩きは地球沸騰化の暑熱対策が課題で、「ファンブロー ベスト」が一つの解決策になる。