

服と人
河合郁人──古着がつないだ出会いと、僕のスタイルの原点
人気ヴィンテージショップ『ベルベルジン』ディレクター・藤原裕さんをホストに迎え、藤原さんとゆかりのあるゲストが登場し、“服と人”との関わりを深く掘り下げていく対談連載。今月のゲストは、タレントの河合郁人さん。古着との出会いから、今のスタイルを形づくった憧れの存在、そして“自分にとって服とは何か”まで、河合さんの現在地に迫った。
PROFILE
河合 郁人(かわい ふみと)
タレント
アイドルグループ・A.B.C-Z(2008年に改名)として活動。2023年にグループを脱退し、現在は個人として活動。番組MCからバラエティ番組、舞台と幅広く活躍。自身のYouTube番組「かわいたちチャンネル〜Purple Rain〜」は、古着ラバーを中心に人気を博している。
PROFILE
藤原 裕(ふじはら ゆたか)
ベルベルジン・ディレクター
原宿のヴィンテージショップ『ベルベルジン』店長。ヴィンテージデニムマイスターとしても認知されている一方、多くのブランドでデニムをプロデュースするなど、現在のデニム人気を担っている。
最初の憧れは木村拓哉さんではなかった!?
藤原今回のゲストは河合郁人くんです。河合くんとは出会って2年くらいだけど、こういった対談やお互いのYouTube番組の撮影を何度もやらせてもらっているから、もっと昔から知っているような感覚です。
河合うれしいです。僕にとって藤原さんはデニムの神様であり先生みたいな存在ですから。今日もよろしくお願いします!
藤原こちらこそ! ではさっそく対談のテーマが「服と人」ということで、河合くんの“服事情”から聞かせてください。よく考えたら、“古着好き”とか“木村拓哉さんに憧れている”ということ以外、河合くんのファッションの歴史みたいなことは何も知らないなと思いまして……。

河合確かにそうですね。じつは僕、木村さんに憧れて“木村さんっぽい”服装をするようになる前に、もうひとつ大きな影響を受けている人がいるんです。それが、小学5年生のときに観た当時カミングセンチュリーの初主演ドラマ『PU-PU-PU(プープープー)』で、森田剛くんがめちゃくちゃアメカジ古着スタイルで登場していて。
そのかっこよさに衝撃を受けたのが、古着にハマった最初のきっかけでした。兄貴のお下がりのプーマのグレーパーカに、ベイカーパンツみたいなものを穿いたりして、ドラマでの剛くんっぽい感じを自分なりに再現したりしていました。
藤原へえ! そうだったんだ。でもちゃんと古着から入っていたんですね。
河合そうですね。古着自体はずっと興味はありました。でもその後、10代後半から 20代前半ぐらいはマスターマインドやロエン、ロアーを着たり、4〜5年前にフェンディにハマったりしていろいろ着ました(笑)。ちなみに藤原さんは、古着以外にハマったことはないですか?

藤原じつは入社前、一瞬だけ古着から離れてサーフィンにハマって、その時にエイプのボーダーTを着たりしていましたよ(笑)。ただサーフィンは、ウェットスーツを作ったり板を買ったり、さらに毎週末海に行くとなると出費がかさみまくって、「これだと古着が買えなくなる!」と思ってやめました……(笑)。
河合そうだったんですか! その時の藤原さんは超貴重ですね(笑)!
藤原後にも先にも、古着から遠ざかったのは人生でその時だけです。
クイーンがガンズ……?
藤原じゃあさっそく私物を見せていただきましょう。これは501XXかな。
河合そうです。まだA.B.C-Zに所属していたときに、熊本の「ブラウン ユーズド クロージング」で購入しました。番組で古着屋さんに連れていってもらったのですが、その時のものです。これが自分にとって初めてのヴィンテージです。
藤原センターのベルトループがオフセットなので、50年代製のレザーパッチですね。

河合当時の僕にとってはだいぶ高額でしたが、思い切って買わせていただきました。ただ穿きすぎてボロボロになってしまい、最近はあまり出番がないんです。
藤原ダメージが素晴らしいです。ただこのまま穿き続けると、どんどん傷口が広がっていってしまうので、リペア屋さんに出した方がいいですよ。
河合生き返りますか?
藤原生き返るどころか、これからもずっと穿けますよ。渋谷区富ヶ谷にある「オキドキ」という古着屋さんはリペアも受け付けているのでおすすめです。たとえば白い横糸を残してほしいとか、細かな要望にも応えてくれますし。
河合それはありがたいです! 思い入れが強いジーンズなので、また穿けるようになったらうれしいです。
藤原あとこちらのデニムもなかなかの逸品ですね。
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河合今年、群馬の「タイムズ アー チェインジン」さんで買わせていただいた501 ZXXです。YouTubeの撮影でお邪魔したときにすすめていただいて、サイズがぴったりだったので購入しました。
藤原このタロンジップだと、おそらく62年ごろまでのものだと思います。ギャラ入りの紙パッチになったのが58年から62年までの4年間なので、これはその中でも後期の方だと思います。そうそう、ジッパータイプを穿き出すと楽すぎて、ボタンフライのものを穿かなくなりませんか?
河合確かに楽なんですけど、でも僕はボタンの方が気合が入って好きなんです。「今日デニム穿いてるぞ!」っていう。だから稼働率としては、今日穿いている「ベルベルジン」さんで買わせてもらった501XXの方が高いです。
藤原河合くんらしいですね(笑)。あとこのバンドTも見覚えがあります。

河合そうですね、ガンズ アンド ローゼズとモトリー クルーのものですが、完全に木村(拓哉)さんの影響です(笑)。ガンズの方は、ドラマ『プライド』で木村さんが着用していて。当時僕は高校生でまだガンズのことは知らなかったことに加え、ドラマの主題歌がクイーンだったので、あの頃はクイーンがガンズなのかなって思っていました(笑)。
藤原確かにそう思うのが自然かもしれないですね(笑)。フットボールTとかはどうですか?

河合これはチャンピオンのもので、VCMで購入しました。古着に興味を持つきっかけになったのは木村さんですが、古着にガッツリハマるきっかけになったのはさらば青春の光・森田さんなんです。僕の中で森田さんといえばフットボールTという感じですね。あとこのTシャツもそうですが、赤い古着が好きでよく買っています。
藤原僕も昔から好きなんですけど、古着業界で赤はなぜか人気がなくて……。
河合そうみたいですよね。自分が好きな色ということもありますが、YouTubeの撮影で古着屋さんに行ったときは、なるべく赤の商品を紹介するようにしています。

藤原このボウリングシャツもいいですね。おそらく50年代のもので、ミリタリーに関するものかなと思います。
河合これはYouTube撮影でお邪魔した際に、「フェイクアルファ」さんで買わせていただきました。本当に赤が好きで、他にもレーシングジャケットやリバースウィーブなども持っています。
藤原ジャーマニーのスーベニアジャケットもかっこいいですね。ロード・ランナーが入っているものは人気が高いんです。

河合そうなんですね。「タイムズ アー チェインジン」さんで2年ほど前に買わせていただきました。アメリカのアニメ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー』が大好きで……。そのことを知っていたお店の方から「ロード・ランナーありますよ」って言っていただいて、つい買ってしまいました(笑)。
あと、“OKINAWA”の刺繍入りスカジャンは、まさに沖縄県にある古着屋の「サイクロン」というお店で出会ってしまいました。そういえば、藤原さんはあまりスカジャンを着ているイメージがないですよね。


藤原確かにあまり着ないかも。以前は“HOKKAIDO”って刺繍の入った真っ白なスカジャンを持っていたけど、北海道出身の後輩に会うたびに、「それは高知県出身の裕さんが着るものじゃないです」って言われるから譲ってしまって。正直ちょっと後悔しています(笑)。
いつか自分で古着屋をやってみたい!
藤原古着を本格的に追求し出してから、何か変化はありましたか?
河合めちゃくちゃ変わりました。2年前に自分のYouTube始めてからというもの、服に対する愛着は、今が人生で一番強いですね。服の量も人生で最多になっています。とうとう自宅のクローゼットに入らなくなって、最近はYouTubeの部屋に収納し始めました。
あと、今までより頻繁に古着屋さんに通うようになり、藤原さんをはじめお店の方や古着系YouTuberの方など、いろんな人と出会って古着のことを知っていくにつれて、どんどん好きになって抜け出せなくなっています(笑)。とにかく同じものがふたつとないことに加え、自分の体型に合ったものに出会えることがすごくうれしいです。

藤原河合くんのYouTubeを見ていると、全国津々浦々、いろんな古着屋さんに行くのがすごく楽しそうで羨ましいです。新たな人に出会って、新たな知識を吸収して、新たな私物も買えるっていう(笑)。まだ出会ってからそこまで時間は経ってないですが、会うたびに“古着の好き度”が更新されているなと感じています。
河合ありがとうございます。あと、これも全国のいろんなお店を回らせていただいて感じたことなんですけど。世の中的に、ぶっちゃけ「ベルベルジン」って、すごい高額なものしか置いてないっていうイメージがあるじゃないですか。でもこれだけは言わせてください。「ベルベルジン」は高くないです!
藤原わ、うれしいです(笑)
河合もちろん、めちゃくちゃ古いのにコンディション抜群のヴィンテージデニムを筆頭に、それなりに市場価値の高い一部のアイテムは仕方ないと思うんですけど、他は良心的だなと思っています。まだ足を運んだことのない人は、まずは一度行ってみてほしいです。
じつは僕自身も“「ベルベルジン」は高い”、あと“藤原さんは怖い”っていう勝手なイメージを抱いていましたが、どっちもそんなことは全然ありませんから(笑)。藤原さんの優しさはこの対談からも伝わると思いますが、商品もたとえばリバースウィーブなんか、さっきチラッと見たら8,000円台からあったり……。
別に藤原さんが目の前にいるから言っているわけではなく、リアルにそうなんです。それこそこの前、さらばの森田さんと話してて、「結局、なんだかんだ言ってベルべルが一番安いよね?」ってなりました(笑)。

藤原そう思ってもらえるのは本当にありがたいです。というのもうちは社長を中心に、どこよりも安く古着を提供して、ひとりでも多くのお客様に古着に興味を持ってほしいという思いを会社全体で共有しているんです。
特に「ベルベルジン原宿本店」の1階は、リバースウィーブや、70〜90年代のアメリカ製のツラのいいプリントTなど、いわゆる定番的なトゥルーヴィンテージは安く出すように心掛けています。
河合そうだったんですね。僕みたいな古着初心者こそ、行ってほしいなと思います。
藤原ありがとうございます。では、今後やってみたいことはありますか?
河合いつかアメリカに行って、買い付けの現場とかを自分の目で見てみたいです。ただ「ベルベルジン遊歩道」の蒔田(康介)さんのYouTubeを見ていると現地でのリアルな空気感が伝わってきて、これは大変だろうなって……。

藤原蒔田は毎月のようにロスからサンフランシスコまで車で行っているので、スケジュールが完全には合わなくても、そのどこかで合流するのが理想かもしれませんね。
河合見学してみたいです。やはりせっかく古着にハマったからには、売っている人の気持ちもちゃんと知りたいなと思っています。あと、大変な部分も経験してみたいです。
藤原将来的にお店をやりたい気持ちもあるんですか?
河合いつになるかわかりませんが、ひとつの夢としてあります。僕の兄貴もアパレルをしているので、将来一緒にできたらいいねみたいな話もしているんです。
藤原じゃあその時は自分も、アドバイザーとしてぜひ参加させてください。
河合いやいや、おそれ多いです……(笑)!
──河合さんにとって古着とは、服であると同時に、人との出会いや過ごした時間の記憶でもある。誰かに影響を受け、語らい、納得して手にした一着が、彼自身のスタイルになっていく──。藤原裕が語るヴィンテージの価値と河合の実感は、「服は人を映す」というこの連載のテーマを静かに体現していた。
Photo by Akinori Kawanishi
Text by Kei Osawa







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