

「ジャクソンマティス」代表・渡邊雅義さんのオフィス兼仕事部屋には、ヴィンテージTシャツやスニーカー、フィギュア、BMXなど、長年集めてきたものが所狭しと並んでいる。
一見するとジャンルレスといえる状態だが、話を聞いていくうちに、その一つひとつが映画や音楽、スケートなど、渡邊さんが影響を受けてきた“アメリカ”につながっていることが分かる。
渡邊さんにとって、アメカジの「定番」とは何なのか。なぜ何十年経っても好きなものは変わらないのか。愛用品が詰まった空間を訪ね、その理由を聞いた。
PROFILE

渡邊 雅義(わたなべ まさよし)
ジャクソンマティス代表・デザイナー
1973年生まれ 新潟県出身 東京都在住。AD、広告代理店での勤務を経て、インポートのおもちゃ、古着の輸入を始める。アメリカントイ、古着好きが高じて、自身のブランド「ジャクソンマティス」の立ち上げに至る。オフィス兼仕事部屋にも、そのアメカジ好きが詰まっている。
映画から始まった、“アメリカ”への憧れ
渡邊さんにとって「アメリカンカジュアル」とは、どのようなスタイルを指すのでしょうか。
一概に捉えるのは難しいですが、僕の中ではスケートやカレッジ、古着といったカルチャーが原点になっています。幅広いジャンルを内包しているのがアメカジだと思います。
そうしたアメリカのカルチャーに興味を持つようになったのは、いつ頃からですか?
昔はテレビで『金曜ロードショー』なんかをよく見ていて、大半がアメリカの映画じゃないですか。だから、知らず知らずのうちにアメリカという存在を刷り込まれていたんだと思います。自然とアメリカが好きになっていった感じです。
その憧れがさらに強くなったのが、実際にアメリカを訪れたときだったのでしょうか?
もともとおもちゃのバイヤーをやっていて、フィギュアブームの頃には年に6、7回アメリカへ買い付けに行っていたんです。初めてアメリカに行ったときのインパクトが、モノを集め始める大きなきっかけになりました。空港に降り立った瞬間から、「ああ、アメリカに来たな」と。道路は広いし、空は青いし、見るものすべてが新鮮で、そこからもう「買うことが止まらなくなっちゃった」というのが正直なところです。
Tシャツと「ヴァンズ」、変わらないアメカジの定番
オフィスにはTシャツが山積みになっています。これまで、どんなTシャツを集めてきたのでしょうか?
その時々ですね。スケート系を集めるときもあれば、カレッジもの、キャラクターものばかり集めるときもあります。サンタクルーズの「スクリーミングハンド」みたいな、当時のスケートブランドのTシャツは今となっては貴重ですけど、特にこだわりなく、そのときいいと思ったものを集めてきました。


なかでも、ヴィンテージの白いTシャツは希少だそうですね。
そうなんです。特にスケートTシャツは、みんなスケートをするときに実用で着るので、汚れたら捨ててしまう。だから白はほとんど残っていないんです。状態のいいものとなると、本当に出てきません。


「ヴァンズ」の中でも、特に愛用しているモデルはありますか?
ほぼ「オーセンティック」です。元祖のモデルなので。最近はインソールにクッション性があって疲れにくいスケートラインのモデルが出ているので、そっちを履くことが多いです。昔のモデルはソールが薄くて足が痛くなるので……(笑)。
アイテムだけでなく、着こなしにも渡邊さんなりの“定番”はありますか?
いや、何もないですね。ずっとこの感じです。4月から11月くらいまでショーツをはいていて、長ズボンはあまりはかない。トレンドを取り入れることもほとんどないと思います。

映画もトイもBMXも。服だけでは語れない“アメカジ”の魅力
渡邊さんのお話を聞いていると、アメカジの「定番」は洋服だけではなく、映画や音楽、トイなどのカルチャーともつながっているように感じます。おもちゃはどんな基準で集めているのでしょうか?
これはもう、単純に「かわいいな」と思ったものを買ってしまうだけ(笑)。昔の『スター・ウォーズ』のフィギュアもあれば、好きだった安室奈美恵さんとコラボしたジェニー人形もあります。フィギュアは最近の精巧なものより、昔ながらの「顔が全然似てないじゃん!」っていうくらいのほうが味があって好きですね。似てないからいいかな、みたいな(笑)。

BMXも、映画への憧れから手に入れたものだそうですね。
はい。もともと映画の『グーニーズ』が好きで、そこからBMXに興味を持ちました。後に『E.T.』で主人公が乗っていたクワハラ社のBMXの復刻版が出たときも、子どもの頃は買えなかった反動で、「予約していいですか」って大人買いしちゃうほど(笑)。
でも、BMXはタイヤが小さいから長距離は疲れるので、結局は乗らずにディスプレイになっちゃっています。BMXあるあるですね。

これだけさまざまなものを集めていると、買うこと自体が楽しみになっている部分もありますか?
そうなんです。参考書を買って勉強した気になるのと一緒で、買って満足しちゃう。結局履かない靴とかも多いですね。でも収集癖は止まらないです(笑)。
集めたものを、どうしまって、どう眺める?
これだけのアイテムを、どのように保管しているのですか?
基本的に几帳面な性格なので、Tシャツはきれいに畳まないと気持ち悪いんです。おもちゃも前に小さいもの、後ろに大きいものを置いて、全体的にきれいに見えるように飾っています。飾っているものの日焼けについては、それも味かなと思っているのであまり気にしません。靴は、どの靴か一目で分かるように箱のまま保管しています。




アメカジは「ずっと着れるもの」
渡邊さん自身が何十年も変わらず着続けているように、アメカジが“定番”として長く支持され続ける理由はどこにあるのでしょうか?
やっぱり「着やすさ」じゃないですかね。男性、女性、子どもからお年寄りまで、誰でも着ようと思えば着られる。ハイブランドと合わせてもいいし、古着だけでも成立する。その合わせやすさが、マスに受け入れられている理由だと思います。
最後に、渡邊さんにとって「アメカジの定番」とは何でしょうか?
「ずっと着れるもの」ですね。80歳になっても90歳になっても、きっと同じような格好をしていると思います。洋服も、おもちゃも、多分この先もずっと集め続けるんじゃないでしょうか。趣味って、そうそう変わらないですから。

スケートやカレッジといった古着、映画、音楽、アメリカントイ——。渡邊さんの部屋に並ぶものは一見ジャンルレスだが、その一つひとつをたどると、子どもの頃から惹かれてきた“アメリカ”へとつながっていく。
さまざまなTシャツやスニーカーを集めても、足元は結局「ヴァンズ」に落ち着き、着こなしも昔からほとんど変わらない。「アメカジは、ずっと着れるもの」。流行や年齢に左右されず、好きなものを変わらず身につけ続けられること。それこそが、渡邊さんにとってのアメカジの“定番”なのだろう。
Photo by Junmaru Sayama
Movie by Hiroto Sawano
Director by Junnosuke Futo
Text by Yasuyuki Ushijima(NO-TECH)
Original Movie













