JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

Articles

1980年代の“普段着”を現代に再現「Healthknit(ヘルスニット)」のクラシックスウェット

2026.09.29
1900年にアメリカ・テネシー州で創業したアンダーウエアブランド「Healthknit(ヘルスニット)」。120年以上にわたる歴史の中で培ってきたものづくりを背景に、1980年代のカジュアルスウェットを現代に蘇らせた「クラシックスウェットシリーズ」が人気を集めている。
今回は、ヘルスニット・ブランズ株式会社で営業を担当する原田 芳輝氏に、ブランドの歴史を振り返りながら、1980年代のアーカイブを現代に蘇らせるものづくりについて話を聞いた。

1980年代の“レギュラー古着”から生まれたクラシックスウェット

1900年、アメリカのテネシー州ノックスビルで、アンダーウエアブランドとして産声を上げたHealthknit。
創業者エドワード・J・マクミランが設立したスタンダードニッティングミルズ社の自社ブランドとして誕生し、最盛期には東京ドーム2個分にも及ぶ広大な自社工場で、アメリカ国民のデイリーウエアを支えてきた。
特に1940年代に登場した3つボタンの「ヘンリーネック」は、ブランドのアイコンとして今なお多くの人々に愛されている。
1940年ごろのスタンダードニッティングミルズ社
そんな長い歴史を持つ同社が、2022年秋冬シーズンから新たにスタートさせたのが「クラシックスウェットシリーズ」だ。興味深いことにその着想源は、いわゆる希少価値の高い「ヴィンテージ」ではなかった。Healthknitが光を当てたのは、1980年代から1990年代にかけて若者たちが日常的に袖を通していた、ごくありふれたカジュアルスウェットだった。
ヘルスニット・ブランズの原田 芳輝氏は、その狙いをこう語る。
「イメージとしては、ヴィンテージよりも1980年代から1990年代くらいのストリート的なカジュアルアイテムです。ヴィンテージに見られる特殊なディテールを備えたものではなく、比較的シンプルな縫製で作られていた時代のものになります」
あえてヴィンテージ特有の凝ったディテールを削ぎ落とすこと。それは、マニアックな古着好きだけでなく、より多くの人々が現代のファッションとして自然に取り入れられるようにという意図があった。歴史を重んじながらも、あくまで今のユーザーに寄り添う。そんなブランドの姿勢が、このシリーズの根底には貫かれている。

コットン50%・ポリエステル50%の混紡生地を再現

シリーズの核となるのが、当時の雰囲気を忠実に再現したオリジナル生地だ。素材はコットン50%、ポリエステル50%の混紡。これは、1988年当時のカタログに掲載されていた「クラシックスウェット」のスペックを踏襲したものだ。
「僕らのほうで保管している当時の工場カタログに、コットン50%、ポリエステル50%のスウェットがあったんです。今回はそれをリプロダクトするというイメージで企画を進めました」
この混紡素材の選択は、単なる懐古趣味によるものではない。そこには極めて合理的な理由が存在すると原田氏が続ける。
「素材的には、吸水性に優れたコットンと、速乾性・耐久性に優れるポリエステルを混合したものになっています。さらに裏側を起毛させているので、より柔らかく、着心地がよくなっているのも特徴です」
実際に当時のカタログを紐解くと、「ゆったりとしたアスレチックカット」「現代のアクティブな顧客に最適なギア」といった言葉が並ぶ。スウェットというアイテムが、元々はスポーツウエアとして開発された歴史を考えれば、この機能性は必然だったと言える。
汗を吸い、素早く乾き、タフなうえに動きやすい。1980年代において、このコットン/ポリ混紡素材は、まさしく時代の要求に応える最新の機能素材だったのである。同シリーズは、そんな時代の空気感と合理的な機能美を、現代に再び蘇らせたのだ。
1988年にアメリカで作られたカタログに掲載されていたクラシックスウェットシリーズ

ブランドの象徴「ヘンリーネック」がシリーズの人気モデルに

クラシックスウェットシリーズは、「クルーネック」、「スウェットパンツ」、そしてブランドの代名詞でもある「ヘンリーネック」など、多彩なラインナップで始まった。中でも、発売当初から大きな反響を呼び、ヒット商品となったのがヘンリーネックだった。
「スウェットというと、どうしてもいくつかの強力な競合がいます。そこで、他社が展開していないアイテムとしてヘンリーネックに力を入れました。これが市場に受け入れられ、ヒットにつながりました。
さらに、レディースにも人気が波及して、ユニセックスのヒット商品になったことで、ブランドにとっても大事な主力アイテムになりましたね」
競合との差別化、そしてユニセックス市場への広がり。これらがヒットの大きな要因だった。もちろん、ディテールへのこだわりも抜かりはない。ボタンにはブランドの象徴である「猫目ボタン」を採用している。
さらに、ボタンホールを当時の仕様にならって横向きにするなど、細かな再現性がファンの心を掴んだ。税込みで6,930円という手頃な価格設定も人気を後押ししたことは言うまでもないだろう。ブランドのDNAと市場のニーズが、絶妙なバランスで交差した瞬間だった。
スタンダードなクルーネックスウェット
54006 クラシックスウェット クルーネック長袖 6,490円(税込)
54005 クラシックスウェット ヘンリーネック長袖 6,930円(税込)
印象的な猫目ボタンとHealthknitならではの横向きのボタンホール仕様
ヘルスニット・ブランズ社で保管されている1980年代当時のオリジナルのクラシックスウェット ヘンリーネック。タグのデザインは違うが、生地感、猫目ボタン、ボタンホールの仕様が高いクオリティで復刻されていることがわかる

ヴィンテージのディテールを取り入れた現代的なアレンジ

このシリーズの魅力は、単なる復刻に留まらない点にある。定番アイテムに加え、毎シーズン現代的な解釈を加えた新たなモデルが登場するのも楽しみの一つだ。
たとえば、新作の「ハーフジップスウェット」。ここには、1950年代から1960年代のヴィンテージウエアに見られる「片爪」仕様のジッパーが採用されている。1980年代というテーマを軸にしつつも、さらに古い時代のディテールをミックスさせる遊び心が光る。
また、バッハ、ベートーベン、ブラームスといった音楽家の肖像をプリントした、通称“3B”シリーズもユニークだ。
「ヴィンテージ市場で、こうした音楽家のプリントが入ったスウェットが何十万円という高値で取引されているんです。それを知っている方に向けて、『今、これを手頃な価格で着たら面白いよね』という発想から生まれました。1980年代のカジュアルなスウェットにこのプリントを載せるという組み合わせも、他ではあまり見ないと思います」
歴史への深い敬意を払いながらも、それを現代の文脈でどう解釈し、どう遊ぶか。ハーフジップのサックスブルーという爽やかな新色展開も含め、シリーズ全体からブランドの柔軟な企画力がうかがえる。それは、ただ過去をなぞるのではなく、歴史を編集して新たな価値を創造する営みそのものだ。
54036 クラシックスウェット ハーフジップクルーネック長袖 8,910円(税込)
1950年代から1960年代のヴィンテージウエアによく見られた片爪ジッパー。スライダー裏の片側に爪が付き、これによりジッパーの開閉がロックできるという仕様になっている
向かって左:54020 クラシックスウェット クルーネック長袖(バッハ) 7,150円(税込)
中央:54018 クラシックスウェット クルーネック長袖(ベートーベン) 7,150円(税込)
右:54019 クラシックスウェット クルーネック長袖(ブラームス) 7,150円(税込)

定番色と新色で広がるクラシックスウェットシリーズ

クラシックスウェットシリーズは、アッシュグレーやフェードブラックといった定番カラーを軸に、毎シーズン1~2色の新色が追加される。現在は約8色の豊富なカラーバリエーションを誇り、ファンを飽きさせることがない。また、商品を専用の袋に入れて販売するパッケージも特徴的で、かつてパックTシャツで名を馳せたブランドを彷彿とさせる。
ブランドの膨大なアーカイブの中から一つの時代を切り取り、その本質を捉えながら現代の市場に合わせて再解釈する。クラシックスウェットシリーズは、歴史を未来へと繋ぐための、一つの答えを示している。過去に敬意を払いながら、縛られることは決してない。そのしなやかな姿勢こそが、Healthknitが1世紀以上にわたって愛され続ける理由なのかもしれない。
クラシックスウェットのパッケージ。本シリーズのアイテムはすべてこのデザインのパッケージ入りで販売されている

PROFILE

原田 芳輝(はらだ よしてる)

ヘルスニット・ブランズ株式会社 営業

1981年生まれ。アメカジショップの店員を経て、2012年に入社。入社時から同ブランドの営業を担当。

Tags

この記事はいかがでしたか?

シェアリンクをコピーしました

Related Articles

Related Database