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今のメガネの原型を作った、現存するアメリカ最古のアイウエアブランド「American Optical」とは
1833年創業の現存するアメリカ最古のアイウエアブランド「American Optical(アメリカン オプティカル)」が、日本国内のファッション市場に向けた本格的な展開を開始した。
これまで眼鏡店を中心に扱われてきた歴史的なアイウエアを、なぜ今、洋服屋の視点からファッションアイテムとして再定義し、新たな層に届けようとしたのか。
この記事では、株式会社メイデン・カンパニー USONIAN GOODS STORE(ユーソニアン グッズ ストア)店長の高橋 康平氏に話を聞き、ブランドが歩んできた深い歴史と確かなものづくりの軌跡をたどりながら、その本質的な魅力を明らかにする。
宝石商の探求心が生んだ現代眼鏡の原点
1833年、アメリカ・マサチューセッツ州サウスブリッジ。ウィリアム・ビーチャー氏によってAmerican Opticalは産声を上げた。当時のアメリカにおいて眼鏡は、本を読むような知識階級や富裕層のみが手にできる装飾品としての側面が強かった。創業者のビーチャー氏もまた、もともとは宝石商として生計を立てていた人物である。ヨーロッパからのインポート品を扱うなかで、彼は自らの手でさらに質の高いアイウエアを作れると確信し、ブランドを立ち上げた。
ブランドの足跡をたどると、現代の私たちが当たり前のように使っている眼鏡の構造には、彼らが開発した技術が数多く生かされていることがわかる。自動車の普及に伴う視界確保のため、レンズの中央にあったテンプルを上部にずらす「フルビュー」と呼ばれる仕様の特許を1930年に取得するなど、常に業界の最先端を走り続けてきた。
「今の眼鏡の原型を作ったのは彼らだと言っても過言ではなく、1930年のフルビューよりもっと昔の1874年には初の『リムレス』を製造し、『鼻パッド』も彼らが開発しました。」
一人の宝石商の探求心から生まれた革新的な技術の数々は、アメリカの眼鏡産業全体を力強く牽引していく。そしてその確かな品質と開発力は、軍用アイウエアという新たな舞台へとブランドを押し上げていくことになった。

右上:American Opticalが開発したリムレスモデル
右下:1930年ごろのものと思われるフルビューのアドバタイジング
空と宇宙を制したミリタリーアイウエアの軌跡
1910年代に入ると、American Opticalはアメリカ軍との提携を開始し、過酷な環境に耐えうるアイウエアの開発に着手する。第1次世界大戦のころには、初期の空軍パイロットに向けたフライトゴーグルの製造を手がけるようになっていた。高い耐久性と、衝撃を吸収する柔軟性の両立が求められるミリタリースペックの製品開発は、ブランドの技術力を飛躍的に向上させた。1942年にはポラロイド社との共同開発によって偏光サングラスを世に送り出し、日光の強烈な反射に悩まされるパイロットたちの視界をクリアに保つことに成功した。さらにその品質への信頼は地球上にとどまらず、1969年のアポロ11号による月面着陸の際にも、クルーのサバイバルキットの同梱品に彼らのサングラスが携帯されるという歴史的快挙を成し遂げている。
「彼らの歴史の中で、軍との関わりは非常に古くから続いています。戦闘機を操縦する際にかかる重力や衝撃に耐えうる高い技術が必要だったため、現在のティアドロップの原型に近いゴーグルが作られました。それが現在のモデルに引き継がれています」
高橋氏が言及する代表作「Original Pilot®(オリジナル パイロット)」は、現在もブランドを象徴する名作として語り継がれている。最大の特徴は、テンプルの耳にかける部分が曲がっていないストレートな形状にある。これはヘルメットを着用したままでもスムーズに着脱できるように考え抜かれた、まさに実用性から生まれた機能美である。
1976年の映画『タクシードライバー』でロバート・デ・ニーロが着用したことで、その存在はファッションアイコンとして広く世界に知れ渡ることとなった。

写真 向かって左下:American Opticalが製作したアメリカ空軍のフライトゴーグル
写真 中央下:アメリカ空軍の飛行士専用にデザインされたアビエイターサングラス
写真 向かって右下:ポラロイド社との共同開発で作られた偏光サングラス


時代を彩った象徴的なフレームと歴史の断片
ミリタリーでの実績と並行して、American Opticalは一般市場においても数々の名作を生み出し、時代を象徴する人物たちに愛されてきた。1950年代に誕生した「Saratoga(サラトガ)」は、外に向けて少し釣り上がったスクエア型のフレームが特徴的で、当時のトレンドを反映したスポーティな印象を与える。「サラトガは1950年代を象徴する眼鏡の一つです。アメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディ氏は非常にファッションに敏感な人物で、サングラスもクリアフレームもAmerican Opticalを愛用していたことが確認されています。当時のトレンドでもあったスポーティな形状は、現在でもサングラスとして非常に様になるデザインです」
現在でもブランドの定番として高い人気を誇る「Saratoga」に続いて、歴史的な背景を持つモデルとして「Sirmont®(サーモント)」の存在も見逃せない。このフレームは、アメリカ陸軍将校であったモント氏の「眉毛が薄く威厳がない」という悩みを解決するために作られたという話も残っている。上部にボリュームを持たせたブロータイプのデザインは、のちに人権活動家として知られるマルコムX氏のトレードマークとなり、彼を象徴するアイテムとして語り継がれている。
現在「Sirmont®」という名称と特徴的なデザインのヒンジ [1]を使用できるのは、American Opticalと、同ブランドを日本に広めたBROS JAPAN GROUP (ブロスジャパン グループ)のみとなる。また、軍や工業作業員向けに配られていたセーフティーグラスをタウンユースに落とし込んだ「Explorer(エクスプローラー)」など、それぞれのモデルが独自のストーリーを内包している。歴史の断片を纏うようなこれらアイウエアは、単なる道具としての枠を超え、アメリカの文化そのものを体現する普遍的な存在として、今日まで愛され続けている。




ファッション市場への挑戦と変わらない価値観
こうした深い歴史を持つAmerican Opticalだが、日本国内では長らく眼鏡専門店での展開が中心であり、次のステップとしてファッション市場へのアプローチを考えていた。日本展開を担う福井県鯖江市のBROS JAPAN GROUPは、本国と密接な関係を築いてきた。彼らもまた、この歴史的ブランドをより多くのファッション層に届けたいという思いを抱えていた。USONIAN GOODS STOREでアメリカンクラシックを提案していた高橋氏は、私物として同ブランドのアイウエアを愛用していた。その背景にあるストーリーと品質に強く惹かれ、店舗での取り扱いを求めて自らコンタクトを取った。そこから両社の思いが合致し、1年ほど前からアパレルショップでの本格的な展開がスタートしたのである。
「American Opticalの魅力は、アメリカの眼鏡の歴史を作った人々が提供する、トレンドに左右されない形のクオリティにあります。本当にベーシックな眼鏡がいつでもアメリカ製で買えるということに、大きな価値を感じています」
American Opticalは現在でも、軍用アイウエアの製造を主軸としながらも、新たなデザインの開発にも意欲的に取り組んでいる。イリノイ州の工場で作られる確かなアメリカ製アイウエアは、古き良き伝統を守りつつ、日本の消費者にも着実に受け入れられ始めている。
現在、USONIAN GOODS STOREでは定番のモデルを中心に展開しつつ、新しいバリエーションも少しずつ紹介していく方針をとっている。
歴史的背景に裏付けられた確かなプロダクトは、これからも時代を超えて、私たちの視界と日常のファッションを鮮やかに彩り続けるだろう。
[1] ヒンジ
フロント部分と、耳にかかるテンプルをつなぐ部品で「丁番」とも呼ばれる
PROFILE

高橋 康平(たかはし こうへい)
株式会社メイデン・カンパニー
USONIAN GOODS STORE店長
国産デニムブランドスタッフ、大手古着店販売員、セレクトショップ販売員を経て、2021年に株式会社メイデン・カンパニーに入社。
本社勤務ののち、2024年7月にUSONIAN GOODS STOREの店長に就任。






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