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旅のためのバッグを作り続けて半世紀以上、「Tough Traveler」が貫くMade in USA

2026.09.07
1970年の創業以来、ニューヨーク州の小さな町でMade in USAを貫いてきたバッグブランド「Tough Traveler(タフ トラベラー)」。半世紀以上にわたる堅実なものづくりの歴史を持つ一方で、ピーナッツ型のバッグや極薄のウエストポーチなど、どこかユニークで遊び心のあるプロダクトも生み出している。
日本では株式会社BLUEMOON COMPANYがその展開を担い、アメリカらしい質実剛健なものづくりと、現代のファッションにも馴染む個性的なアイテムが注目を集めている。
今回は、BLUEMOON COMPANYで商品部 副部長を務める田下 雄介氏に、Tough Travelerの歩みから日本での展開、長く受け継がれてきたものづくりの姿勢について話を聞いた。

4~5年の空白期間を経た日本での再始動

1970年、ニューヨーク州スケネクタディという自然豊かな小さな町で「Tough Traveler」は産声を上げた。「旅に出かけるために良い商品を作る」をコンセプトに、半世紀以上にわたりデザインから製造までを一貫してアメリカ国内で行う、「Made in USA」を貫くバッグブランドだ。
BLUEMOON COMPANYが日本代理店として同ブランドとの取引を始めたのは約10年前。同社はアメリカ製のインポートブランドを主軸に展開し、日本ではミニポーチやサコッシュが人気を博した。しかし、コロナ禍を前にその取引は一時中断。約4~5年の空白期間が生まれることとなった。
そして2026年、満を持して同社は日本で再びTough Travelerを展開することを決める。この再始動にあたり、改めてブランドのラインナップを見つめ直した担当の田下氏は、そこに新たな可能性を見出すことになる。
「お休み期間が空いた上で、もう一度始めようと改めてTough Travelerを眺めたときに、結構面白いラインナップが多いことに気づいたんです。たとえばウエストポーチが今のトレンドに合っていたり、ミニサイズのボディバッグタイプのものが、バイヤーさんからとても反応が良かったりする状況でした」
ニューヨーク州スケネクタディにあるTough Traveler

ローテクから生まれるユニークな形

田下氏が「面白い」と語るように、現在のTough Travelerの日本展開における主力商品は、かつてのクラシックなイメージを心地よく裏切るユニークなものが多い。
その筆頭が、ピーナッツのさやのような独特のフォルムが目を引く「PEANUT SLING BAG(ピーナッツ スリング バッグ)」。ワンショルダーのミニリュックで、シンプルな構造ながらも抜群の存在感を放つ。また、ランニングブームも意識したという極薄のウエストポーチ「CELL BELT(セル ベルト)」は、スマートフォンとカード程度しか入らないミニマルさが潔い。
さらにこのポーチは横長の「Horizontal(ホリゾンタル)」と、縦長の「Vertical(ヴァーチカル)」という2つの形状を展開するなど、遊び心にあふれている。
ワンショルダーが特徴的なPEANUT SLING BAG 12,650円(税込)
CELL BELT horizontal 7,920円(税込)
CELL BELT vertical 7,920円(税込)
これらの個性的な製品は、決して奇をてらったものではない。トレンドに左右されず、自分たちの作りたいものを作るという、ものづくりに対するブランドの揺るぎない姿勢の表れだ。田下氏によれば、Tough Travelerには今も社内にデザイナーが在籍し、日々実験的なものづくりを続けているという。
「ブランドを手がける本人たちは、これが今日本でウケるかなどとはまったく考えていないと思います。あくまでその膨大なラインナップの中から、弊社の方でピックアップしたり、時には別注を提案したりしている段階です。ハイテクに頼らず、ミシンを使った完全なローテク製法で、新しいことをし続ける。その姿勢が面白いんです」
こうした背景から生まれるプロダクトは、どこか懐かしくも新しい。そのキャラクターの立ったデザインが、今の日本の市場に新鮮な魅力として映っているのだ。
本国で人気の個性あふれるアイテム「DOG PERCH BACKPACK(ドッグ パーチ バックパック)」※日本では未発売

50年以上貫くMade in USA

Tough Travelerのユニークな創造性は、創業以来変わらない「Made in USA」への強いこだわりに支えられている。創業者のマーク・ゴールドスタイン氏が始めた工場は、今も創業の地スケネクタディに根を下ろし、地域の住民を雇用しながら生産を続ける、典型的な家族経営のスタイルを維持している。
そのこだわりは、製品の細部にまで宿る。生地にはアメリカ製のパッククロスナイロンやコーデュラナイロンを使用。YKKのジッパーといった部材も含め、実に95%がアメリカ製の素材で構成されているという。
「Made in USAへのこだわりは非常に強いですね。ライセンス生産で海外に拠点を移すブランドが多いなか、それを貫いているところに意志の強さを感じます」
田下氏がそう語るように、そのクラフトマンシップは高く評価されている。2019年にはホワイトハウスに招待され、「Made in USA製品展示会」にニューヨーク州代表として参加。これはブランドにとって大きな誇りとなっている。
創業者の妻が事業を担った後、その逝去によって数年の空白期間が生まれた。その後、娘のアンバー・ゴールドスタイン氏が事業を引き継ぎ、親子2代にわたって受け継がれるものづくりに宿る魂こそが、Tough Travelerの決して真似できない魅力の源泉なのだ。
現在もスケネクタディにあるTough Travelerの工場にて、パターンメイキング、裁断の様子
縫製シーンとストックルーム

日本にも待っているファンがいる

2026年7月から日本での本格的な展開を再開したTough Traveler。しかし、市場環境は決して追い風ではない。記録的な円安により、アメリカ製品の輸入ビジネスからは撤退する同業者も少なくないのが実情だ。
それでもBLUEMOON COMPANYが展開を続けるのは、Tough Travelerが持つ普遍的な価値を信じているからに他ならない。一過性のトレンドではなく、長年培われたブランドの哲学や背景を丁寧に伝えることで、確かな手応えを感じているという。
「弊社の中でも、こうしたインポートブランドの展開を続けてきた経緯を大事にしたいというメッセージに切り替えています。その中で、Tough Travelerの話を熱く聞いてくれるバイヤーさんが増え、話が盛り上がるケースが多くなりました。地方の有力なセレクトショップさんが、『待ってました』とばかりに取引を復活させてくれたことも多く、自分たちの方向性は間違ってないのだと実感しています」
全国のセレクトショップや、オーナーの審美眼という独自の強みが光る店舗に、その価値は着実に届いている。効率やトレンドが優先されがちな時代だからこそ、Tough Travelerの愚直なまでのものづくりが、新たな共感を呼んでいるのだ。

親から娘へ受け継がれるブランド

創業から半世紀以上。創業者マーク・ゴールドスタイン氏から娘のアンバー氏へと、そのクラフトマンシップは確かに受け継がれている。トレンドを追うのではなく、自分たちが良いと信じるものを作り続ける。その姿勢は、ともすれば不器用に映ることもある。
しかし、その実直なものづくりから生まれる普遍的な価値とユニークな個性は、時代や国境を超える。円安という逆風の中、Tough Travelerが日本で見せる新たな輝きは、まだ始まったばかりだ。

PROFILE

田下 雄介(たしも ゆうすけ)

BLUEMOON COMPANY 商品部 副部長

2005年より「GOOD DEAL」で販売やバイヤー、MDマネージャーを務めコラボや企画を担当。現在はインポート・国内ブランド部門責任者として新規発掘や商品企画を統括。

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