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日常に溶け込むスマートグラスはどう生まれた? テクノロジーを「最高のサポーター」にしたOakley Meta

2026.09.02
未来のインターフェースとして、長く期待されてきたスマートグラス。だが、かけ心地や操作性の課題も多く、これまで話題にはなるも一般的な普及にはなかなか至らなかった。
その課題の解決に挑んだのがOakleyだ。Meta社と共同開発したAI搭載グラス「Oakley Meta」が、ついに日本に上陸した。テクノロジーを搭載しながら、アイウエアとしての快適性を損なわないという課題解決のため、両社は何を分担し、どのような設計で解決を図ったのか。オークリー担当者への取材をもとに、その開発プロセスを紐解く。

テクノロジーを意識させない、日常に溶け込むことを重視

スマートグラスの普及を阻んできた要因のひとつが、装着時の違和感である。スマートフォンとは異なり、メガネは顔に長時間触れ続けるという絶対的な条件がある。重量が一部に偏れば鼻や耳への負担になり、フレームが大きくなれば日常的なデザインからは遠ざかる。操作のために頻繁な手の動きが必要になれば、ハンズフリーという利点も薄れてしまう。
「Oakley Meta HSTN」77,220円〜92,620円(税込)
Oakley Metaの開発においても、単にサングラスに機能を追加するのではなく、テクノロジーの存在を強く意識させないことが重視された。
「顔は非常に繊細な領域です。テクノロジーの存在を強く感じたり、新しい行動が強いられたりするような製品では、日常には浸透しません。Oakley Metaが目指したのは、AIやカメラ、オープンイヤーオーディオといった機能を搭載しながらも、日常的に身に着けたくなるデザインと自然な使い心地です」

OakleyとMeta、2つの技術をどう融合したのか

Oakley Metaの開発で軸となったのが、「アスレチック・インテリジェンス」という考え方だ。
これは、AIが人に代わって判断するのではなく、スポーツや日常で必要な情報をAIが適切なタイミングで提供し、人の行動を支えるという発想である。
その考え方を製品として形にするため、MetaはAIやソフトウエア、Oakleyは長年培ってきたアイウエア設計を担当した。それぞれの強みを融合させながら、スポーツでも日常でも自然に使えるウェアラブル製品の開発が進められた。
当初、Oakley Metaの開発は明確なゴールを定めていなかった。何を作るかではなく、OakleyのパフォーマンスアイウエアとMetaのAI・コネクテッドテクノロジーを組み合わせたとき、どのような体験が成立するかを探るところから始まった。
「今回の開発においては、最初からゴールを設定するのではなく、この製品にどのような可能性があるのかを探ることを重視していたのです」
両チームは早い段階で製品アーキテクチャを定義し、共通の基盤上で開発を進めた。担当者によれば、方向性が固まってから最初の試作機が完成するまでに要した期間は約10〜11ヶ月。開発スピードを支えたのは、アイウエアとデジタル機能を一体の製品として設計したことにある。
両者の役割分担は明快だ。MetaはAI、音声操作、カメラ、通信、アプリ連携といったデジタル基盤を担い、Oakleyは顔へのフィット、光学性能、スポーツ時の安定性、ヘルメットとの干渉を含むアイウエア設計の知見を提供した。最大の課題は、この2つを並置するのではなく、使用中に境界を感じさせない状態にまで統合することだった。
「Oakley Metaは“アスレチック・インテリジェンス”という考え方を体現したプロダクトだと考えています。これはAIをはじめとするテクノロジーが人間の能力や判断に置き換わるのではなく、その人本来が持つ可能性やパフォーマンスを最大限に引き出し、日々の体験をより豊かにするという考え方です。テクノロジーは支配者ではなく、あくまで最高のサポーターであるべきだと考えたのです。このコンセプトは、その後の製品開発における重要な指針となりました」

アイウエアの知見とAI技術、2つのDNAの融合

フレーム内には、カメラ、左右のオープンイヤースピーカー、複数のマイク、バッテリー、通信機能が収められている。
ライフスタイルモデルの「Oakley Meta HSTN」には1,200万画素カメラ、左右各1基のスピーカー、5マイクアレイ、32GBストレージを搭載し、通常使用で最大8時間駆動する。これらを日常的なシルエットに収めるには、部品を小さくするだけでなく、重量が鼻や耳の一部へ集中しない配置が必要になる。
担当者が開発上の重要テーマとして挙げたのも、フィット感と快適性だった。
「カメラやスピーカー、バッテリーなど複数のデバイスを限られたフレーム内に収めながらも、重量バランスを最適化し、長時間でも快適に装着できる設計を追求しました」
ここで生かされたのが、Oakleyが長年蓄積してきた人間工学に基づくフレーム設計だ。視線とレンズの位置関係を安定させること、動いたときもズレにくくすること、接触部への圧力を分散すること。電子機器としての内部設計と、アイウエアとしての外形設計を同時に詰めていくことで、機能の追加がそのまま装着負担の増加につながらないよう調整された。

視界がインターフェースに。アスリート体験を拡張する新次元

一方、操作設計にはMetaの知見が生かされた。音声コマンドとタッチ操作を採用し、カメラ撮影や通話など、手を動かさずMeta AIにアクセスできるようにした。
「Oakley Meta HSTN」では1,200万画素のカメラを搭載し、ハンズフリーで撮影が可能に
「アスリート視点の映像は、従来のスマートフォンやカメラでは残しにくかった臨場感のある体験の共有を可能にします」
従来はスマートフォンやカメラを取り出す必要があった場面でも、視線を大きく逸らすことなく記録できることが、Oakley Metaの特徴だ。ゴール前のスプリントや難コースを攻略する一打、山頂からの景色なども、装着者の視点のままリアルに記録・共有できる。
こうした体験を支えているのは、映像だけではない。周囲の環境音を自然に取り込みながらクリアな音声を届けるオープンイヤースピーカーも、その重要な要素だ。スポーツシーンや日常生活で周囲とのつながりを保ちながら、安全性にも配慮した音響設計となっている。
テンプル部分にオープンイヤースピーカーを搭載
「Oakley Meta Vanguard」では、グラス自体ですべての運動データを計測するのではなく、対応するGarminの腕時計やバイクコンピューターと連携する設計を採用した。心拍数、ペース、速度、標高、経過時間などの計測はスマートウォッチが担い、Meta AIがそのデータへのアクセスや音声による確認、運動後のサマリー表示を行う。
「Oakley Meta Vanguard」96,580円〜111,980円(税込)
「スポーツに集中したまま、スマートフォンを取り出すことなく、必要な機能へ自然とアクセスできることを目指しました」
新たな体験価値を、シリアスな競技シーンから日常までカバーしているのもポイントだ。
「Oakley Meta Vanguard」はスポーツのために設計されたフレームを採用した。動きや耐久性を重視し、IP67の高い防塵・防水性能を備えている。
「シールドレンズはヘルメット着用時にも自然にフィットし、激しい動きをするなかでも快適な装着性を実現します。またスポーツシーンに合わせて操作を割り当てられるカスタマイズ可能なアクションボタンも搭載しています」
「Oakley Meta Vanguard」は、ヘルメット着用時にも干渉しないように設計されている
一方「Oakley Meta HSTN」は、Oakleyの既存製品のシルエットをベースに、ゴルフやランニングなどのライトスポーツから、デイリーユースにも溶け込むデザインを採用した。フレーム素材には軽量性と耐久性を両立するO Matter™を用いている。
また両モデルとも調光レンズや、度付きレンズなどに対応している。通常のサングラスと同様、ライフスタイルに合わせて選ぶことができるのも魅力だ。
日常使いも意識したデザインの「Oakley Meta HSTN」
「最終的に目指しているのは、人々が『スマートグラス』という言葉を意識しなくなることかもしれません。メガネとして自然に身に着け、そのなかで必要な機能が当たり前のように使える。そんな体験が広がっていくことを期待しています」
スマートグラスが日常へ定着するかどうかは、機能の多さだけによるものではない。かけ続けられること、動きを妨げないこと、既存のギアやサービスと自然につながること。Oakley Metaは、ただ機能を増やすのではなく、アイウエアとしての装着性や自然な操作性を磨き上げることで、スマートグラス普及の課題に向き合ったプロダクトといえる。
Text by Junko Hayashida

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