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「形」から見えてくる日本のものづくり──ザ・コンランショップ「Katachi 」の視点

2026.10.01
ザ・コンランショップは10月18日まで、日本各地の風土や素材、受け継がれてきた技術から生まれる「形」に焦点を当てた企画「Katachi」を各店で開催している。家具や器といった用途別ではなく、「音色の形」「灯の形」「釉の形」「用の形」「森の形」「継ぐ形」「妙の形」「構えの形」という8つの視点から、日本のものづくりを捉え直す試みだ。
英国発のホームファニシングショップとして、世界各地の家具や生活道具を独自の審美眼で紹介してきたザ・コンランショップが、なぜいま日本のものづくりに目を向け、「形」という言葉を軸に据えたのか。コンランショップ・ジャパンのマーケティング部でプレスを担当する小泉絵美さんに、企画の背景とセレクトに通底する思想を聞いた。

「Katachi」展とは何か? 日本のものづくりを見つめ直す試み

「Katachi」の出発点にあったのは、日本らしい意匠を集めることではない。素材や技術、用途、土地の風土、作り手の発想が重なった結果、ものがどのような姿を得て生み出されたのか。その成り立ちに目を向けるための言葉として選ばれたのが「形」だった。
器や照明、木工など、多様な「形」から日本のものづくりを捉える企画「Katachi」
「当初は『wanomono(和のもの) 』というテーマも考えていました。ただ、SNSで発信する機会が多い現在は、凝った言葉より、シンプルに本質を伝えることが大切だと考え、結果、『Katachi(形) 』がもっともわかりやすいのではないかと思いました」
店内には8つの形を表した提灯をディスプレイ
ここでいう「形」は、目に見える輪郭だけを指すものではない。「音色の形」ではスピーカーが生み出す音や響き、「灯の形」では照明器具だけでなく、そこから広がる光と影までを捉える。「継ぐ形」は、受け継がれてきた技術が現代のデザインと結びつき、次の時代へ渡されていく過程そのものを示す。無形の感覚や時間までを「形」と見なすことで、異なるカテゴリーのプロダクトを横断的に見渡せるようになっている。

作り手の背景まで伝える。代官山店から始まった「Katachi」

企画の原点は、2023年4月にオープンした代官山店にある。同店では、日本とアジアのクラフトに焦点を当てた自主編集型の売り場を設けている。小泉さんは、そこで得た手応えを次のように話す。
「代官山店では、店頭のスタッフが作り手に直接会いに行くことで、単純にものをセレクトするのではなく、作り手の背景や思いをお客様へ伝える取り組みを続けてきました。その経験から、日本にある素晴らしいものを全店で伝えていこうと考えたことが、今回の企画につながっています」
軽井沢を拠点に活動するデザイナー・須長檀さんが手がけた「Resöma」。杉材でデメリットとされがちな「節」に着目し、木の個性や表情としてデザインに生かしている
小泉さんは、日本の手仕事や民芸に対する関心の高まりも感じているという。同じものでも世代によって受け止め方が異なると見ている。
「上の世代には懐かしく映るものが、若い世代にはかえって新鮮に感じていただいています。世代ごとに違った視点が交差するなかで、日本のものづくりに見られる繊細さや、使い手への細やかな配慮が改めて評価されているのだと思います」

伝統と現代を分けない、「日本のもの」の選び方

「Katachi」が紹介するのは、「伝統工芸」や「日本のもの」という枠にとどまらない。岐阜提灯の技術を生かした照明、有田焼、博多曲物などに加え、国産材を用いた家具、漆と耐熱樹脂を組み合わせた器、香り、座布団、アイウエアまでが並ぶ。
URUSHICA 漆琳堂 X ZOZO NEXT。耐熱樹脂に漆を施し、漆器の質感と日常での扱いやすさを両立している
その一例が、漆琳堂とZOZO NEXTによる「URUSHICA」だ。漆器の魅力を受け継ぎながら、食器洗浄機や電子レンジにも対応するなど、現代の暮らしに取り入れやすい点が評価され、「Katachi」のラインナップに選ばれた。伝統的な漆の技術を新しい表現へつないでいることから、8つのテーマでは「継ぐ形」に位置づけられている。
「私たちが考える『日本のもの』は、伝統的であることだけが条件ではありません。素材の選び方や土地に根づいた背景があり、なおかつ現在の暮らしに自然に溶け込み、違和感なく使い続けられることを大切にしています」
ザ・コンランショップのセレクトを支えているのが、創業者テレンス・コンランが重視した「Plain, Simple, Useful(無駄がなくシンプルで機能的)」という考え方である。「Katachi」の選定にも、この基準が通底している。
創業420年以上の歴史を持つ「博多曲物 玉樹」。軽量性と通気性を備えた曲物を「用の形」で紹介
「時代に左右されず、暮らしのなかに長く残っていけるものが、本当に良いものだと考えています。デザインがシンプルで、その時々の流れに必要以上に抗わないものは、いつの時代の人々にとっても良いと思えるのではないでしょうか」
ただし、「長く使える」ことは、形が変わらないことと同義ではない。受け継ぐためには、次の世代が手に取りたくなる更新も時として必要になる。
MLBのチームキャップなどをかぶったこけし。日本の伝統とアメリカのスポーツ文化が融合している
たとえば「妙の形」で紹介されるWOODWORKの「B-KOKESHI」がそれだ。昭和期に親しまれたこけしに木製のキャップを組み合わせ、新しい表情を与えることで、若い世代が「面白い」「かわいい」と感じる入り口をつくる。伝統を保存するだけでなく、現代の感性と結び直すこともまた、技術や文化を未来へ継ぐ方法だ。

ものを売るだけではない。「時代対応業」としてのショップの役割

オンラインで多くのものを簡単に購入できる時代に、実店舗は何を担うのか。小泉さんは、ショップの役割を「時代対応業」という独自の言葉で表現する。
「伝統的な技術を現代の暮らしに合わせた形で提案し、次へつなげていくことが、店の役割の一つだと思っています。そのためには、もののストーリーをきちんと伝え、その良さを理解していただいたうえで手に取ってもらう必要があります」
「音色の形」ではカリモク家具とOjasのコラボレーションアイテムを展示
こうした店の役割を支えるのが、スタッフによるコミュニケーションである。
「スタッフが愛着を持ち、その良さを自分の言葉で伝えられれば、その思いはお客様にも届くはずです。価格には、素材や技術、作り手の工夫といったさまざまな理由があります。その背景までを知り、納得して選んでいただくことは、実店舗だからこそ提供できる体験だと思います」
そのためスタッフへの勉強会も積極的に行っているという。まずスタッフ自らが作り手の考えに触れ、商品の背景を学ぶ。素材や技術、作り手が凝らす工夫など、その商品が持つ価値を伝えることで、ユーザーの理解を深め、ものを長く使いたいという気持ちにつなげている。
ザ・コンランショップの「Katachi」を通じて浮かび上がるのは、良いものを選ぶ基準は、見た目や流行だけでは測れないということだ。素材や技術、土地の背景がどのように一つの形となり、それが現在の暮らしにどう息づいているのか。「形」というシンプルな言葉は、プロダクトの成り立ちや、その奥にある思想へ目を向けるための補助線になっている。

「Katachi」

【開催期間】
9月18日(金)~10月18日(日)
※丸の内店のみ、10月15日(木)まで

9月18日(金)~10月18日(日)まで
※ザ・コンランショップ 丸の内店のみ、10月15日(木)まで

【開催店舗】
ザ・コンランショップ 東京店
ザ・コンランショップ 丸の内店
ザ・コンランショップ 代官山店
オンラインショップ
※店舗により開催期間および取り扱いブランドが異なります。

Photo by Akinori Kawanishi
Text by Junko Hayashida

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