高機能素材と洗練されたデザインで、国内外から注目を集めるブランド「
F/CE.®(エフ/シーイー)」。都市生活の日常と旅やアウトドアなどの非日常をシームレスにつなぎ、暮らしをアップデートしてくれるブランドだ。
今回はF/CE.®のクリエイティブディレクターの山根 敏史さんにインタビューを行い、ブランドの世界観やデザインワークについて話を聞いた。
山根 敏史さんF/CE.®のブランド名につながる3つのキーワード
まずはブランド立ち上げ当初のエピソードや、ブランド名の由来について聞いた。「ブランドは2010年からスタートしているので、今年で16年目になります。最初はまったく別のブランド名でした。造語だったので誰も読めなくて、毎回説明するのが大変だったんです。そこで、誰でも読めるブランド名にしようと思い、F/CE.®に変更しました。
ブランド名はFunctionality(ファンクショナリティ)、Culture(カルチャー)、Exploration(エクスプロレーション)の3つの言葉から来ています。カルチャーからインスピレーションを受け、それを探求して機能に落とし込むという意味合いです。
機能性や利便性のあるものを作るというブランドコンセプトは、ブランドを始めた当初から今も変わっていません」
山根氏とF/CE.®のルーツ
山根氏がこれまでに影響を受けてきたカルチャーについても聞いた。「サブカルチャーというか、ハードコアやパンクなどは自分でもやっていました。1980年代のDOG TOWNのムーブメントや、ヒップホップのオールドスクール、ニュースクールなどですね。
1980〜90年代のカルチャーは政治や社会背景とも密接に関わっていて、その中に音楽がありました。たとえば欧米のパンクシーンでは菜食主義者が多いなど、そういった文化的な背景にも10代の頃は影響を受けました。
ブランドのデザインに直接的に反映しているわけではありませんが、自分のバンドのツアーに行くときに『バッグが必要だな』と思ったり、自分が納得できる便利なものが身近にあまりなかったんです。
大型のバックパックだとアウトドアブランドのものを買うしかありませんでした。山用のザックは当然登山用に設計されているので、街から街への移動では不要な機能が多かったり、逆に欲しい容量がないなと思っていたんです。
そうした経験をものづくりに生かすことができるのではないかと考え、ブランドが始まっていきました。バッグだけでなく、アパレルやフットウエアなどすべてに共通する考え方です」
訪れた国で得たインスピレーションをデザインへ
F/CE.®では毎シーズン、山根氏と妻の麻美氏が各国を訪れ、その土地で得たインスピレーションをシーズンテーマに反映しているという。「これまでは1つの国を1ヶ月ほどかけて一周し、そこで感じたことをデザインに落とし込んでいました。ただ最近はスケジュールの関係もあり、2週間ほどで集中的に回る形に変わってきています。
2026年春夏のコレクションではベルギーを訪れました。ベルギーは小さな国なので、一周しながらアール・ヌーヴォーのデザインを研究しました。その中で『ウィップラッシュカーブ』というデザイン手法に興味を持ちました。さらに深堀りしていくと、デザインの根源は植物にあることが分かりました。
そこからインスピレーションを得て、アール・ヌーヴォー的な装飾的ラインを洋服に取り入れ、F/CE.®らしい機能性と組み合わせながら今シーズンのデザインを構築しました」


山根氏が撮影したベルギーでの写真F/CE.® 2026SSコレクション
ここからは2026年春夏コレクションのアイテムを紹介する。「まずは今シーズンのキーアイテムから、アーティスト
榎本マリコさんとのコラボレーションによって製作されたプリントTシャツです。
榎本さんのアーカイブから本コレクションの世界観に呼応する作品を選出し、F/CE.®のグラフィックとテキストを加えることで、毒々しくも魅力的なシュルレアリスム[1]のような作品になっています。もともと榎本さんがそのような作品を制作されていたことに興味を持ちオファーさせていただき完成させました。
さらにプリントの上から加工を施すことで、機能性のある素材に古びたような手法をレイヤーすることで、今シーズンのテーマとも重ね合わせた風合いを表現しました。
素材には再生コットンを使用し、さまざまな繊維長が混在することでヴィンテージライクな質感に仕上がっています」
F/CE. MY QUEEN BY M.ENOMOTO T 18,700円(税込)
背面はF/CE.®のグラフィックとテキスト「続いては『
SUICOKE(スイコック)』に別注を依頼し、フラッグシップモデルである『MOTO(モト)』と『ZAVO(ザボ)』を融合させた、F/CE.®完全別注のハイブリッドミュールです。都市とアウトドアを横断する機能性と快適性を追求した一足になります。
取り外し可能なヒールストラップにより、フィット感と着脱性を両立しました。SUICOKE × Vibram(ビブラム)共同開発のフットベッドと、Vibram MORFLEXアウトソールを採用した一足です」
F/CE. × SUICOKE ZAVOT-VS BY F/CE. 33,000円(税込)
取り外し可能なヒールストラップ「さらに、斜めに配されたファスナーが特徴的なプルオーバー風ジップジャケットです。ミリタリーライクな、ゆったりとした太袖シルエットに、軽量な20デニールナイロンタフタ素材を組み合わせた一着です。
裾のスピンドルを絞ることでショート丈にアレンジすることも可能です。製品染めのような風合いと、ドライな肌触りが特徴で、超軽量かつストレッチ性・通気性に優れ、街からアウトドアまで活躍するライトアウターとなっています」
20D NYLON OUT SEAM SMOCK JK 55,000円(税込)
特徴的な斜めに配されたファスナーショップと海外展開
海外展開や直営店についても聞いた。「ブランドを始めたときから海外展開は考えていました。『Capsule(カプセル)』や『MAN/WOMAN(マン/ウーマン)』といった大きな合同展示会には1年目から出展しています。
直営店は2014年に代官山にオープンしました。奥にオフィスがあるようなニューヨークのショップをイメージして物件を探しました。最初はセレクトショップとしてスタートしましたが、2021年に改装し、旗艦店として『F/CE. Flagship Store Tokyo』が誕生しました。
さらに2024年には大阪にも旗艦店がオープンしています」
F/CE. Flagship Store Tokyo
F/CE. Flagship Store Osakaブランド立ち上げから変わらぬ姿勢で、カルチャーと機能性を融合させたプロダクトを発信し続けてきたF/CE.®。世界各地で得たインスピレーションをデザインへと落とし込みながら、そのコレクションは常に新しい視点を提示している。
都市と旅を横断するライフスタイルを背景に、F/CE.®はこれからも独自のクリエイションを展開していく。
[1]シュルレアリスム:フランスの詩人、文学者、アンドレ・ブルトンが1924年に定義した、夢や無意識、非合理な世界を探求する20世紀最大の芸術運動
PROFILE
山根 敏史(やまね さとし)ファッションデザイナー/クリエイティブディレクター
株式会社OPEN YOUR EYESの創業者であり、ブランド「F/CE.®」のクリエィティブディレクター・デザイナーを務める。
2010年に同社を設立し、「Functionality, Culture, Exploration」をコンセプトに掲げたF/CE.®をスタート。各国のカルチャーやライフスタイルから着想を得たコレクションと、高機能素材を融合させたプロダクトで国内外から高い評価を獲得している。
2018年秋冬シーズンには、デザイナーである妻・山根麻美とともに東京ファッションアワードを受賞。以降も複数のグローバルブランドにおいてクリエイティブディレクターとして参画し、領域を横断したクリエイションを展開してきた。
2023年には、妻でデザイナーの山根麻美とともにイギリス・ロンドンにF/CE. LONDON LAB LTDを設立。日本発のクリエイティブの国際的な認知拡大を目的に、欧州を拠点とした活動を展開している。現在は日本とイギリスの2拠点をベースに活動
2024年には自身のデザインスタジオ「山根敏史デザイン事務所」を設立。ファッションにとどまらず、プロダクト、ブランディング、ディレクションなど多岐にわたるクリエイティブ業務を手がけている。
また、インストゥルメンタル・バンド「toe(トー)」のベーシストとしても知られ、音楽とファッションの両領域で独自の表現活動を続けている。