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アウトドアの機能素材を日常着に落とし込む「JUGEM」のものづくり
アパレルメーカーのOEM事業を主軸としてきた株式会社ダブル・アイ・インターナショナルが、コロナ禍をきっかけに立ち上げた自社ブランド「JUGEM(ジュゲム)」。アウトドアウエアのOEMで培った高い技術力を持ちながら、ブランドが掲げたコンセプトは「最高の日常着」だった。
機能性を追求してきたものづくりのノウハウを、なぜ日常着へと注ぎ込んだのか。その背景には、OEMメーカーだからこそ見えていたこれからの服づくりのビジョンがあった。
今回は代表の玉木 丈也氏に、JUGEM誕生の経緯と、ブランドが目指すものづくりについて話を聞いた。
OEMメーカーがブランドを始めた理由
「JUGEM」を運営するダブル・アイ・インターナショナルは、もともとアパレルブランドのOEMやデザイン提案から製造までを請け負うODM事業を主体とする企業だ。特にアウトドアブランド向けのテクニカルな製品開発を得意とし、業界内で確固たる地位を築いてきた。しかし、コロナ禍がそのビジネスモデルに大きな揺さぶりをかける。代表の玉木 丈也氏は、ブランドを立ち上げた経緯をこう振り返る。
「コロナ禍で事業を取り巻く環境が大きく変わり、今までと同じこととやっていてはいけないということを痛感しました。そこで、自分たちである程度構築できる自社ブランドを、気分を変える意味も込めて始めよう、というのが立ち上げのきっかけです」
それは、これまでの事業構造に加え、未来のための必然的な一手だった。長年温めていたブランド構想を実行へと移すことで、2021年、「JUGEM」は産声を上げた。
最高の日常着を生む引き算の哲学
「JUGEM」のものづくりは、OEMで培った高機能素材への深い知見が基盤にある。しかし、玉木氏が目指したのは、本格的なアウトドアウエアの単なる焼き直しではなかった。「専門的なアウトドアブランドの服は、街で着るにはオーバースペックすぎることが多い。そこでJUGEMでは、素材の良さは生かしながら、街にフィットするように機能を『削ぎ落とす』作業を意識しています。必要ない機能はなくし、本当に必要な機能だけに特化して作る姿勢を大切にしています」
この「引き算の哲学」こそが、「JUGEM」を「最高の日常着」たらしめる核心だ。TRAVEL、OUTDOOR、LIFESTYLEという3つの要素を横断しながら、過剰なスペックではなく、日々の生活に寄り添う快適性を追求している。
ブランド名にも、その思想が反映されている。当初から海外展開を視野に入れ、外国人にも覚えやすい和名として「JUGEM」を選んだ。「寿限無」から着想を得たこの名前には、「限りない幸せ」という意味を込めたという。
「うちの服を着て、少しでもハッピーな気持ちになってくれればいいな、と。漢字の『寿限無』を、僕は『限りない幸せ』と捉えました」
海外では“ジュジェム”と呼ばれることも多いという。その響きとともに、ブランドの哲学は世界へと広がり始めている。

パリから始まった海外展開
満を持してスタートした「JUGEM」だが、その道のりは平坦ではなかった。当初は卸売りを行わず、自社のECサイトのみで毎月数型をリリースする戦略を取った。しかし、現実は厳しかった。「正直、少しなめていたところもあって、もっと簡単に売れるものと思っていました。でも、実際にやってみると本当に難しくて。改めて、モノを売る難しさを痛感しましたね」
この経験から、ブランドの認知を広げるためには卸売りが不可欠だと判断。ここで玉木氏は、国内よりも先に海外、それもファッションの中心地であるパリへと舵を切る。
ファッションウィーク期間中にショールームに出展したのがその第一歩だ。最初の挑戦では、ブランドの方向性とショールームの客層が合わないというミスマッチも経験した。しかし、挑戦を続けるなかで、韓国やアメリカのバイヤーの目に留まる。彼らがSNSで発信したことをきっかけに、問い合わせが徐々に増えていった。
「今もまだ種まき状態」と玉木氏は謙遜するが、パリでの地道な活動が、「JUGEM」がグローバルに認知されるための確かな土台を築いたことは間違いない。

Dyneema®が生む新しい日常着
「JUGEM」のものづくりは、シーズンごとに特定のテーマを設けることはせず、その時々で最良と判断した素材から着想を得るのが特徴だ。今季ブランドが特に注目するのが、高強度・軽量素材として知られる「Dyneema®(ダイニーマ)」である。玉木氏によれば、通常Dyneema®はバッグなどに使われる硬い生地が主流だが、特殊な糸とナイロンを掛け合わせた、ウエアに使えるしなやかな生地が新たに登場したという。この新素材に着目し、「JUGEM」はベスト、シャツ、ショーツ、キャップといった一連のアイテムを展開した。

たとえば、スタンドカラーの「DYNEEMA PACK SNAP VEST(ダイニーマ パック スナップ ベスト)」は、シャツの上からでも羽織りやすいようアームホールを広めに設計。裏地にはメッシュを配して肌離れを良くし、パッカブル仕様で持ち運びにも配慮した。


「DYNEEMA GURUKHA SHORTS(ダイニーマ グルカ ショーツ)」は膝下丈のワイドなシルエットが特徴。夏場はトップスがシンプルになることを見越し、スラッシュポケット内に搭載されたジップポケットや、左右非対称に配置されたカーゴポケットなど、豊富な収納力を備えている。
一見するとシンプルなデザインの中に、使う人の所作を考え抜いた機能が静かに息づいている。それこそが、「JUGEM」が提案する「最高の日常着」の姿だ。


パリでの挑戦から始まった「JUGEM」の卸展開は着実に実を結び、現在では国内約20店舗、海外約15店舗で取り扱われている。さらに台湾と中国では、ディストリビューターを通じてより広域な展開が始まった。
今後は、都内を中心にポップアップストアの開催頻度を増やし、顧客が製品に直接触れることのできる機会をより多く創出していく計画だ。さらに香港では現地の取扱店と共同で大規模なイベントを予定しており、ブランドのストーリーを深く伝える場にしていくという。
OEM事業の傍らで、年間約30型という厳選されたアイテムを丁寧に作り続ける「JUGEM」。玉木氏が最後に語った「ちょっとずつ、長く続けたい」という言葉には、一過性のブームではなく、本質的な価値を届け続けるという静かな決意が込められていた。
PROFILE

玉木 丈也(たまき たけや)
株式会社ダブル・アイ・インターナショナル 代表取締役
2015年に株式会社ダブル・アイ・インターナショナルを設立。アパレルメーカーからの製造を請け負うOEM事業や、デザイン提案から製造までを請け負うODM事業を手がける。2021年よりオリジナルブランド「JUGEM」を立ち上げ、国内外で展開している。
















