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なぜ“山でも街でもはける”のか? コロンビア「Yamagenic」が解いた登山パンツの課題

2026.06.03
「#自然界隈」や「#登山女子」など、近年SNSでは登山に関するさまざまなハッシュタグが生まれ、若年層や女性の「ゆる登山」への流入が話題になっている。
そうした潮流のなか、コロンビアが女性のための登山パンツ「Yamagenic Pants (ヤマジェニック パンツ)」を発売した。女性ならではの視点を取り入れたプロダクトと開発背景について、株式会社コロンビアスポーツウェアジャパンの大槻由紀子さんに話を伺った。

PROFILE

大槻由紀子(おおつき ゆきこ)

株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン
商品本部 アパレルマーチャンダイジング部 マネージャー

パンツの丈やシルエットなどは何度も試着を重ね改良された

女性視点から見えた登山ウエアの課題

「アウトドア業界はメンズが主軸になりがちですが、女性の参加も増えてきており、ウィメンズの需要には大きな可能性があるのではないかと考え、女性向け商品の開発プロジェクトがスタートしました」
プロジェクトを進めるなかで、さまざまな課題が浮かび上がってきた。そのなかで特に重要なテーマとなったのが、パンツの設計だった。トップスはユニセックス化が進んでいる一方で、体型やシルエットの影響を受けやすいパンツは、女性向けならではの工夫や設計思想が反映されやすいアイテムでもあった。
実用性だけでなく、スタイルが良く見えるデザインにもこだわった
また、アウトドアウエアは機能性が重視されがちだが、最近ではファッション性を重視するコンシューマーも増えているなかで、フィット感やシルエットがスタイリングに大きく影響するパンツは差別化を図れると考えた。
そこで、ファッション関係者やインフルエンサーなどへの外部ヒアリングも行ったところ、新たな登山の傾向も見えてきた。
「本格登山だけでなく、気軽な低山ハイクや山ごはんなど、楽しみ方の幅が広がっていることがわかりました。そのなかで印象的だったのが、“いかにも山登り”という格好は少し恥ずかしいという意見が多かったことです。たとえば高尾山に行くとき、電車で現地に向かい、帰りに新宿に寄ってお惣菜を買って帰りたいと思うことがあるという方もいらっしゃいました」

“山専用”から日常へと広がる登山ウエア

従来のように“山に登るためだけの服”ではなく“街と山をシームレスに行き来できる服”という都市型のニーズの高まりを受けて、「ヤマジェニック」は“山でも街でもはける”というコンセプトが設定された。
「たとえば一般的な登山パンツは動きやすさを優先し、膝まわりにダーツを入れる設計が多いのですが、普段使いをするにはアウトドア感が強過ぎると感じました。そこで今回はあえて膝のダーツをなくし、街ばきができるシルエットにしました。
ただし動きにくくならないよう、前後のパーツバランスなど、細かな部分で調整を重ねました」
腰まわりにタックを入れることで、動きやすさを意識
さらに腰まわりにはタックを入れてゆとりを確保している。ヒップまわりの窮屈さやしゃがんだときのストレスを軽減しつつ、脚がすっきり見えるシルエットを実現した。こうした設計には、およそ150人の女性の声が反映されているという。

急登でもインナーのラインが響かないストレッチ素材

素材には4方向に伸縮性のあるCORDURA®の4ウェイストレッチ素材を採用した。縦横だけでなく斜め方向にも伸びることで、登山時の足上げ動作がスムーズに感じられる。
「この素材は他の商品にも使われていますが、私自身、山登りにおいて一番安心感がある生地だと感じています。たとえば急登では足を高く上げるため、どうしてもインナーのラインが出やすいのですが、この素材は外に響きにくいです。また適度に厚みがあるので、体のラインも出にくいのが特徴です。
本プロジェクトは商品開発部門にとどまらず、営業や店舗スタッフ、さらには在庫管理など、部署の垣根を越えて女性社員が参加しました。コロンビアで働く女性たちを一人の消費者として捉え、日々感じている違和感やニーズを持ち寄ることで、従来のアウトドアウエアとは異なる視点で開発が進められました」
タックと素材の相乗効果で下着や体のラインが出にくい構造になっている
さらにこの“厚み”は見た目以上に重要な役割を果たしている。
「山は天候が変わりやすく、急に寒くなることがあります。トップスは脱ぎ着で調整できますが、ボトムスは温度調整が難しいと感じています。その点、この素材は厚手なので、気温の低下時や岩場に座ったときなどにも、寒さや冷たさを感じにくいのが利点です。
山中での寒さは不安につながりやすいので、快適性はとても重要です。このパンツなら春夏秋の3シーズン、さらに下にタイツを重ねれば、冬でもはくことが可能です」
加えて、耐摩擦性や引き裂き強度といった耐久性などにも優れ、コロンビア独自の撥水機能「オムニシールド」と、UVカット機能「オムニシェイド」加工も施されている。
「標高が高くなると紫外線量も増加します。日焼けを気にされる女性は非常に多いので、UPF50を担保しています」

登山タイプや好みに合わせて選べる3シルエット

今回展開されたモデルは、本格登山から低山ハイクまで対応する3シルエットで構成されている。それぞれが「山でも街でも」というコンセプトを軸に設計されている。
「足さばきの良さが求められる本格登山や上級者の方にはすっきりとした“スリム”がおすすめです。また、標高が高いところでは落下物の心配もあるため、ポケットはすべてジップ仕様にしています」
『W Yamagenic Tight Pant』14,300円(税込)
一方、低山ハイクには、トレンドシルエットを取り入れた“ワイド”をラインナップした。
「リサーチでもワイドが欲しいという声が多く寄せられました。ワイドパンツはどうしても生地が寄ってしまうことがあるので、単純に幅を広げるのではなく、はいたときに脚が筒の真ん中を通り、きれいなラインに見えるよう設計しています」
『W Yamagenic Wide Pant』15,950円(税込)
見た目の美しさだけでなく、ワイドシルエット特有の課題にも対応している。
「裾がもたつくと登山では引っかかる危険性があるため、裾にはドローコードをつけています。低山ハイクやアクティビティのときはしっかりと絞って安全性を確保し、街ではくときは緩めて、通常のワイドパンツのようなシルエットを楽しむことができます」
登山時はドローコードで裾をまとめることが推奨されている
ベーシックはこの2つのパンツの中間に位置するモデルとして設計されている。
『W Yamagenic Pant』14,850円(税込)
「ウェビングベルトについては、必要という方と不要という方で意見が分かれたため、このモデルのみに採用しています。一方で、スリムとワイドについてはベルトループをつけ、スタイリングの幅を広げられるようにしました」
ベーシックのみウェビングベルトを採用

シルエットごとに最適化されたカラーセレクトも魅力!

カラー展開についても、シルエットごとに意図を持たせている。
「カラーはインフルエンサーやスタイリストの方とセッションを行って決めました。基本カラーは3シルエット共通ですが、たとえばワイドはトレンド性があるシルエットなので、ピンクのようなこれまでの登山パンツでは見ないような色を採用しました。
一方で、ベーシックは幅広いスタイリングに合わせられるよう、淡いトーンを中心に構成しています」
ワイドのピンクは想定以上の売れ行きとなっている
発売後の反響についても手応えを感じているという。
「試着された方は複数のシルエットをはき比べてくださることが多く、それぞれの良さを評価いただいています。こちらが想定していない着こなしをしてくださる方も多く、弊社としても刺激をもらっています。
コロンビアには素材や機能性の知見が多くあります。今回のファーストシーズンでの反応を分析しつつ、今後もユーザーの方々の声を考慮しながら、知見を生かして改良や商品ラインナップを拡充し、多くの方に新しい登山の楽しみ方を提案していきたいと考えています」
山と街を行き来する現代の登山スタイルに対応する「ヤマジェニック」コレクションは、“山でも街でもはける”という課題に対するひとつの解答であり、登山パンツのあり方そのものを更新する存在といえる。

Text by Junko Hayashida

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