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幻のスウェット「星座シリーズ」を、ネクサスセブンがモダンにリプロダクト!

2026.04.30
ヴィンテージシーンでスウェットは近年、急激な高騰を見せている。なかでも60年代に製造されたスヌーピーシリーズは世界的な人気を誇る名作だ。そんな名作と同時期に、同じメーカーで作られながら流通量が極端に少なく、“幻”として語られてきたスウェットが存在する。
本項の主役である通称「星座(ZODIAC)シリーズ[1]」と呼ばれるもので、希少性が高くマニアの間では幻の存在として知られている。そんな伝説のアイテムを、この度ネクサスセブンが復刻した。
今回は、同ブランドのディレクターである今野智弘さんと、クリエイティブに関わったヴィンテージコレクターの大塚黎さんに本コレクションの製作に至る経緯などを訊いた。

PROFILE

今野 智弘(こんの ともひろ)

ネクサスセブンディレクター

PROFILE

大塚 黎(おおつか れい)

会社員

星座ごとに7色のボデイカラーが存在する。こちらは天秤座のイエロー。プリントはもちろん染み込み仕様。29,700円(税込)

12星座をコンプリートしたコレクターがいた!

背面はネクサスセブンのオリジナルロゴを施している
今野さんは業界屈指のヴィンテージラバーで、幅広いアイテムに精通している。その膨大なプライベートコレクションをソースにサンプリングされるネクサスセブンのアイテムは、完成度の高さで知られ、アパレル関係者の間でも評価が高い。単なる復刻にとどまらず、トレンド感を備えたファッション性の高いデザインが支持を集めている。
一方の大塚さんは、実父の影響で幼少期から古着とアメトイに触れてきた、生粋のコレクターだ。数百着に及ぶスウェットをはじめ、デニムやTシャツまで主要カテゴリーを網羅している。特にスヌーピー愛はアメトイ収集期から続いているという。
そして今回の主役「星座シリーズ」は、世界でも類を見ない12種コンプリートという圧倒的なコレクションを誇る。
デニムやミリタリーウエアをはじめ、多くのヴィンテージアイテムは、残されたオリジナル個体をもとに復元やリサイズなど、さまざまな形で復刻されてきた。しかし、原型が残っていなければ、それは不可能に近い。
今回の「星座シリーズ」のように、オリジナルがほとんど現存しないケースでは、これまで誰も復刻を実現できずにいた。そこで白羽の矢が立ったのが、コレクターの大塚さんだ。彼が所有する12星座すべての個体を手がかりに、絵柄のねじれや縮みまで細かく分析した。当時の風合いを残しつつ、現代的な要素を加えて蘇らせたのが今回の復刻版だ。

生地感、色味、プリント──イレギュラーすぎて大苦戦

これまで数多くの名作を、現代的にアレンジしながら丁寧に復刻してきた今野さんだが、「星座シリーズ」は特に難を極めたという。
「まず、シルエットづくりが本当に大変でした。オリジナルのボディは“丸胴”といって、脇に縫い目のない筒状の生地を使っていたので、そこはそのまま踏襲しています。
ただ、丸胴は胴の型に生地をぐるぐる巻き付けて作るため、基本的には1サイズしか作れないんです。
だからサイズ違いを展開するには、型をサイズごとに何枚も作らないといけないのです。特にXLのような大きいサイズは技術的に限界があるのですが、今回は特別に作っていただけました。
さらに、着ていくうちに退色したとき“糸と生地の色に差が出るように”するため、縫製糸もあえて綿糸を使用するなど、とにかく細部までこだわり抜いています」(今野さん)
ステッチの仕様やヴィンテージ特有の生地感まで繊細に再現している
ヴィンテージスウェットならではの生地の風合いや色味を出すことにも苦労したそう。再現することがいかに大変かを、「星座シリーズ」を熟知した大塚さんが語ってくれた。
「これはデニムなど他のアイテムにも当てはまることですが、同じ時代のまったく同じブランドで同じ生地を使っているにも関わらず、色や素材感の違いが生じるんです。
同じ染色工場で同じ色で染めているはずなのに、並べて見るとトーンが違っていたり──。これには、当時のオペレーションが今よりも不安定だったので、そういった影響が出ているのだと思います」(大塚さん)
「大塚くんからお借りした個体や、同じ『スプルース社』のスウェットを比較して色味の数値を取ってみたのですが、同じ色でも微妙にずれていたんです。おそらく、当時の着用頻度や保管環境の違いが影響しているのだと思います。
そこで色出しでは、当時の濃淡の振れ幅の中から“どの色味を基準にするか”を職人さんと相談しながら決めていきました。退色した後に理想的なトーンになることも意識しつつ、試行錯誤を重ねて進めました」(今野さん)
さらに、60年代のアメリカブランドの混沌とした工場の状況を、大塚さんが補足する。
「『星座シリーズ』にはコットン100%と、ポリエステルを10%混紡したものの2種類のボディが存在するので、洗濯機や乾燥機の質によってはサイズも変化しますし、後者の個体だとだいぶ縮んでいます。
ほかにもタグデザインが微妙に違ったり、極端なものだとプリントのデザインが前後で逆になっているものもあったり──。当時は統一された規格などが存在しないなかで作っていたのでしょう。ただ、そのラフな感じが当時のヴィンテージの魅力でもあるのですが──」(大塚さん)
ちなみに星座シリーズが発売された1969年はベトナム戦争の真っ只中で、アメリカも混迷していた時代だ。
「カウンターカルチャーが生まれ、ヒッピーブームが巻き起こっていたので、その影響からこういったポップでプレイフルな色味やロゴデザインとなっているのかもしれません」(大塚さん)
縫製や生地感などの高いハードルはクリアしたものの、なかなかうまくいかなかったのがプリントだったという。
「いろいろ試したのですが、ことごとくうまくいかなくて……。最後に“この人にお願いしてダメなら諦めよう”と思うくらい、藁にもすがる気持ちでとあるスペシャリストな友人に相談したんです。すると、そこでようやく可能性が見えてきました。
まず、ベースとなるオリジナルとまったく同じフォントを作り、それをもとに“洗濯すると縦横がどのくらい縮んで、どの程度ねじれるのか”をすべてデータ化しました。
さらに、オリジナルの形がもっともきれいに見える位置を探るため、すべての文字を個別に分解して検証しています。色や柄によって生地の特性が違うので、本当に大変な作業でした」(今野さん)
当時のプリントを再現するまでに、試行錯誤を重ねたという
試行錯誤を重ねた結果、素材感からプリントに至るまで、ほぼオリジナルに近い個体を再現することに成功した。しかし、あえて“微妙に異なる点”を残している。そこにこそ今野さん、そしてネクサスセブンの真骨頂がある。
「バックプリントのロゴデザインは変更しました。ネクサスセブンとしては、『これはヴィンテージそのものではない』というメッセージでもあります。ただし、フロントのデザインは12星座すべてを忠実に再現しています。
また、縫製手法はオリジナルに合わせていますが、シルエットは現代的に仕上げているので、見た目はヴィンテージでありながら、モダンに着られる一着になったと思います」(今野さん)

カラバリ豊富なTシャツもおすすめ

今回のネクサスセブンによる「星座シリーズ」スウェットは、展示会での受注分のみの生産となり、店頭には並ばない。そして、5月1日から5月10日の10日間限定でネクサスセブンの店舗にて第2弾の受注会(東京都渋谷区神宮前3-27-15 福住ビル1F-A)が行われるという。
「前回、一般の方にも初めて受注会を開いたのですが、とても楽しい時間でした。“星座シリーズ”を集めている方が想像以上に多く、手に入らず悔しい思いをされた方もいて……。今回の受注会も楽しみにしていただきたいです」(今野さん)
「今回はスウェットとあわせてTシャツも製作しました。こちらはオリジナルにはない新アイテムで、店頭販売も行います。星座ごとに7色のボディ、サイズはS〜XXLまで展開しています。スウェット同様、自信作です」(大塚さん)
改めて、今回のプロジェクトの感想を訊いた。
「大塚くんの知識量が本当にすごくて、『自分は何を見てきたんだろう』と考えさせられました。これまで追いかけてきたことが表層的だったのかもしれない、と(笑)。一緒に進めるなかで“掘り下げる力”の重要さを改めて実感しました。
古着がここまで世界で認知された背景には、大塚くんのように徹底的に追求してきた人たちの存在があります。ものづくりに携わる者として、もっと真摯に向き合わなければいけない、と強く感じました」(今野さん)
「僕はコレクターですが、いつかはプロダクトを作る側にも挑戦したいと思っていました。今回『星座シリーズ』の製作に関わることができて、本当に貴重な経験になりました。機会があれば、またぜひ挑戦したいです」(大塚さん)
今回の邂逅から生まれた「星座シリーズ」のモダン・リプロダクトは、幻と呼ばれたスウェットに新たな命を吹き込む試みとなった。底知れぬヴィンテージ愛と探究心を持つふたりが、次にどんな傑作を生み出すのか楽しみだ。

[1]1969年にメイヨー・スプルース社(通称:スプルース)のボディで作られた、各星座をモチーフにしたヴィンテージスウェット。12種類の星座ごとに異なるデザインが描かれたレアな逸品で、その希少性は1965年に製造されたスヌーピープリントよりも高いと言われている。

Text by Kei Osawa

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