JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

服と人

あの頃のデニムが、いまにつながっている──服とPUFFYの物語

2026.05.13
人気ヴィンテージショップ『ベルベルジン』ディレクター・藤原裕さんをホストに迎え、藤原さんとゆかりのあるゲストとともに、“服と人”との関わりを深く掘り下げていく対談連載。今回のゲストはデビュー30周年を迎えるPUFFYが登場してくれた。

PROFILE

PUFFY(ぱふぃー)

1996年、大貫亜美と吉村由美によるユニット「PUFFY」としてデビュー。奥田民生プロデュースのもと、「アジアの純真」などのヒット曲で一躍人気を獲得。力の抜けたスタイルと自然体のキャラクターで支持を集め、日本のみならずアメリカへもその活動を広げている。現在も音楽活動を軸に、CMやイベント出演など幅広い分野で活躍。7月には初主催となる音楽フェス「PUFFYの“P”FES」を開催する。

PROFILE

藤原 裕(ふじはら ゆたか)

ベルベルジン・ディレクター

原宿のヴィンテージショップ『ベルベルジン』店長。ヴィンテージデニムマイスターとしても認知されている一方、多くのブランドでデニムをプロデュースするなど、現在のデニム人気を担っている。

由美さんの受け継がれるデニムと、手放せない一着

藤原お2人には5年前に別件で一度お会いして以来ですね。私にとっての憧れの存在なので、あの時もだいぶ緊張しましたが、今日もガチガチです(笑)。
この日、藤原さんが持参した90年代に購入したという私物の雑誌『BOON!PUFFY!BOON!』。サインは5年前に会った際に書いてもらったそう
大貫 ありがとうございます。私は藤原さんとは共通の友達を通じて何度かお会いしていますが、緊張しているようには見えないですよ。
藤原いえいえ、もうずっとドキドキしています。今日はよろしくお願いします。早速ですが、今日お持ちいただいた私物についてうかがってもいこうかなと。まず由美さんのジーンズからお願いします。やっぱりPUFFYといえばヴィンテージデニム。期待どおりでうれしいです。
吉村これ、いつ買ったのか分からなくて。ただサイズが小さいから、おそらく子どもにいいかなと思ってとってあったんだと思います。501だったということも全然把握していなくて。
高校時代、由美さんは地元大阪のアメ村にあった古着屋で安い服を買い漁っていたという
藤原立派なヴィンテージですね。60年代後半製のビッグ「E」です。
吉村まだ丈が少し長いので息子には大きいんですけど、30年くらいずっと保管してあって。
「ヴィンテージデニムは、他にも眠っているはず」と由美さん。大至急探していただきたい
藤原お店で洗濯もさせていただきますので、もしよろしければ持ち帰りますよ。
大貫ちなみに、私は先日めっちゃ洗濯してもらったから(笑)。だって嫌じゃん、なんか変なふうに洗濯して、色が落ちすぎたりとかしたら。
吉村たしかに。あと古着って謎のにおいもするし。じゃあお願いしちゃおうかしら(笑)。
藤原もちろんです。せっかく状態もいいので丁寧に洗わせていただきます。あと、お2人は当時から素晴らしいデニムを穿いていらっしゃいましたが、あの頃って貴重なヴィンテージジーンズを穿いているという認識はあったんですか?
吉村全然ないです。
大貫ただ、ヴィンテージジーンズということは一応知らされてはいたよね。私たち的にあまり価値が分かっていなかったというだけで。あの当時は会社のボスが買ってきてくれて。
吉村アメリカで買ってきてくれることが多かったですね。それを亜美ちゃんと私で、サイズが合う方を穿くっていう。このTシャツも同じように、たしか20歳過ぎぐらいのときにボスが買ってきたもので。
ラモーンズのTシャツは、ヴィンテージの個体をベースにリメイクを施したもの
吉村着すぎたせいかだいぶ褪色していますけど、いまは主に中学2年の息子が着ています。古着特有の柔らかな着心地が気に入っているみたい。亜美ちゃんが以前、うちの息子にくれたジミヘンのTシャツも持ってくればよかった。
大貫あー、あったね。あれもヴィンテージだよね。
鼎談を引っ張ってくれた亜美さん。センスの光る独特のワードチョイスが印象的だった
吉村亜美ちゃんが娘に着せていたTシャツを、うちの息子にくれたりっていう流れなんかもあって。
藤原お2人の間で古着が循環しているんですね。僕も店頭に立っていると、最近は制服姿の学生を以前よりも多く見かけるようになったので、お2人のお子さんの世代にまで古着の魅力が伝わっていることを実感しています。あと、こちらのラルフローレンもかっこいいですね。
吉村これは大阪に行ったときにふらっと入ったミナミの古着屋さんにあって。こんなの見たことないし、かわいかったので買いました。
インパクトのあるデザインの真っ赤なつなぎ。背面には、大きな「POLO」のロゴ入り
藤原タグを見る限り、これは正規で販売されていたものだと思います。
大貫寝間着じゃないの?
吉村私も思ったけど、ジップがついているから違うんじゃないかな。最近はあまり出番がないんですけど、買ったときは中にシャツを挟んで着たりしていました。
あとこのジャケットは、亜美ちゃんから「由美ちゃんが死んだらちょうだい」って言われているものです。
好きすぎるあまり最近は劣化するのが怖くなり、着るのは年に2回ほどにしているそう
藤原ムートンですね。70年代頃のものかな。交換ではなくあげるんですね。
大貫形見でもらううちの一着です(笑)。
吉村パリの蚤の市で買って、そこからすごい好きで。ずっと着ていたからだいぶ汚くなっていますけど。
大貫その裏地のやつはシミ? 茶色のやつ。
吉村どうだろう、柄なのかな。買ったときからついてる。ポケットとか破れたら自分で縫ったりして。そのくらい愛着があります。私の死後は亜美ちゃんが受け継ぐ予定です。
藤原逆に亜美さんの死後、由美さんが受け継ぐものってあるんですか?
吉村かっこいい時計を持っているので、「それちょうだい」って言ったら「無理」って言われました(笑)。
終始自然体で気さくな人柄が滲み出ていた由美さん

服に刻まれた記憶とカルチャー、亜美さんのワードローブ

藤原続いて亜美さんのプライベートアイテムについて教えてください。エッシャーのTシャツ、かっこいいですね。アートTシャツの中でもエッシャーは安定的な人気を誇っています。特にこのマルチプリントのタイプは支持率が高いです。
オランダの芸術家、M.C.エッシャーのTシャツの真骨頂は、遠近法や幾何学などを駆使した、緻密で芸術的な「だまし絵」プリント。こちらは複数の作品をマルチに施した豪華なデザインがポイント
大貫エッシャーの作品が昔から好きで、たまたま入った原宿の『ベルベルジン』っていうお店にあったので買いました。ゆったりとしたサイズ感と、いい感じのダメージが気に入っています。
藤原いいお店ですね(笑)。
大貫けっこう高くないですか(笑)? 特に地下はやばいですよね。
藤原ものにもよりますが、たしかに地下にあるものは高額なものが多いです(笑)。
大貫あとはパウエルのTシャツ。
吉村めっちゃ懐かしい。これよく見たかも。
大貫いま思うと、私が古着のTシャツを好きになるきっかけになったのがパウエルだったような気がして。いくつか持ってるけど、これはよく着ていたので持ってきました。
パウエル・ペラルタは、70年代に誕生したアメリカを代表する伝説的なスケートブランド。ブランドのアイコンである、ボーン(骨)をかたどってデザインした、サークルロゴデザインが印象的
大貫 スケートブランドのものは他にもいっぱいあって。それこそ90年代にめっちゃ流行っていたじゃないですか。当時は小さめに着るのがトレンドだったから、「S」サイズのものが多いです。いまでも見つけるとすぐ買っちゃう。特にパウエルはかわいいプリントが多いから。
藤原やっぱりすごいのを持ってますね。ここ数年、オールドスケートTシャツの中ではパウエルが一番人気があるんです。
大貫スケート以外にも、バンドTが好きでまあまあ買っているのでまとめて持ってきました。
(右上から時計回りに)マイケル・ジャクソン、ヘビメタバンドのトゥイステッド・シスター、メタルバンドのコーン、ロックバンドのサブライムのもの
藤原最近もチェックされているんですか?
大貫しています。古着屋さんに行くと、まずはバンドTシャツをチェックします。
藤原ライブとかで地方へ行ったときなんかも回られるんですか?
大貫行きますよ。特に大阪とかは古着屋さんがいっぱいあるし、あとは都内だと高円寺とか吉祥寺へ行ったりします。
藤原あと、このデュラン・デュランのTシャツもかわいいですね。
大貫これは私が持っている中で一番古いというか、私が小学校のときから着ているものです。
吉村私、だいぶ昔に借りたのを覚えてる!
大貫そうだったね。
80年代イギリスを代表するロックバンド、デュラン・デュランのラグラン
藤原バックに「84(年)」のプリントが入っていて、古着ではなく新品で買ったものではないでしょうか。
大貫そうそう。新品だったと思う。これはまだ普通に1軍アイテムとして着ています。
藤原小学生のときに流行っていたんですか?
大貫それが流行っていたんですよ。あと親が好きだったので、その影響もあったと思います。
藤原物持ちが良すぎです。コンディションも抜群でまだまだ着られる。
吉村どうやって保管してるの?
大貫もう普通に畳んでポイッて感じで。あとこれ系のパンツもずっと集めているのでご紹介しようかと。
これはパジャマですが、他にもフリース素材など、ふわふわした古着の総柄パンツが好きで見つけると買っちゃいますね。
ロサンゼルス レイカーズのパジャマパンツ
藤原かわいいですね。この辺のアイテムはヴィンテージでも、まだちょくちょく見つかると思うので、バイヤーと共有させていただきます。それこそ実際にパジャマで着てもいいですね。
大貫パジャマはあっちのスヌーピーのスウェット。マジでパジャマとして着ていました。
藤原あれをパジャマで着ているのは亜美さんくらいだと思いますよ(笑)。
大貫さっき価値を聞いてびっくり。
藤原いつ頃買われたんですか?
シリーズの中でもチャーリーブラウンは、屈指の人気キャラクター。長年パジャマとして愛用していたとはいえ、生地感はまだまだふわふわであることに加え、大きめのサイズ、さらに「MAYO SPRUCE」社のタグも残存しているので、市場価値は高い
大貫それこそ90年代に撮影のとき、衣装で着させてもらったものを買い取ったんです。
藤原 (昔の雑誌を取り出して)もしかしてこれじゃないですかね?
大貫そうそう! これ。
実際に亜美さんが撮影で着用していた雑誌『BOON!PUFFY!BOON!』の一コマ。スウェットの色の変化に注目
吉村写真の方がだいぶきれいだよね? 色も濃いし。実物の方はだいぶくたびれてる。
大貫何も気にせず着続けるとこうなるってことだよね。
藤原ピーナッツはスウェットの中でも昔から人気のシリーズです。スプルース社製のボディを使用した60年代のもので、スヌーピーを筆頭にルーシーやシュローダーなど主要なキャラクターを起用しているのが特徴です。ここ4〜5年で一気に値段が上がってしまいました。
大貫今日から即1軍です。

30年経っても変わらない、“普通でかっこいい”というPUFFYの強さ

藤原デビューされた90年代当時は、街を歩けばお2人を真似た人たちで溢れていましたが、当事者であるお2人はその現象についてどう思っていましたか?
憧れの2人を目の当たりにし、いつもより緊張気味の藤原さん
大貫ありふれたファッションのままテレビに出ちゃっただけで、街を歩けばこちらの方が「ほんとすいません」っていうぐらい。現場に行くとジーンズとTシャツがポンッと置いてあって、「君たちこれに着替えて」「はーい」みたいな。
藤原当時僕は高校生で、古着の世界にハマっていたときに、木村拓哉さんや浜田雅功さんなど、アメカジをかっこよく着こなす人に憧れを抱いていました。ただ女性ではお2人のようにそこまでゴリゴリな人はいなかったので、勝手に好きになっていました。「こんな人がいるのか!?」っていう感じで。
大貫ありがとうございます。
吉村ありがとうございます。
藤原私服でも古着を着ていたんですか?
大貫いや、あくまで衣装としてって感じで。私服で着るとそれこそ「PUFFYだ!」ってなるから。
吉村 でも気を抜くとこういう、今回紹介したような服になっちゃうっていう(笑)。やっぱり古着が好きなんですよね。
藤原そもそも、おしゃれに目覚めたきっかけは何だったんですか?
吉村何だろう。高校時代にティンバーランドのブーツが流行ったときは欲しかったけど買えませんでしたし、当時は安いというだけでアメ村で買った古着を着たり、レッドウィングを履いたりしていました。あとはおばあちゃんが作ってくれた服を着たりなんかも。だからお仕事をするようになって、自分で好きなものが買えるようになってからですね。
大貫私は、原宿で仲良くなった女の子が当時アンダーカバーで働いていて、その子がすごくオシャレで、同じようなものが着たいと思ったときかな。お店のものを着るのは当たり前だけど、着こなし方がすっごいかっこよくて。
ハードコアバンド、スーサイダル・テンデンシーズのスウェットは亜美さんの私物
藤原お仕事を始めて、買いたいものが買えるようになったときは何を買ったんですか?
吉村どこにいったか分からないけど、デニムは買いましたよ。多分元々ジーパンは好きで、仕事をしていくうちに、だんだん興味を持ち始めてより好きになっていったのかも。
大貫私は身につけるものではなく、クロムハーツのペッツとかテディベアとかをゴロゴロ持っていたんです。
吉村持ってたねー!
大貫 どこ行ったんだろうあれ。大きいのも小さいのもいっぱい持ってたけど。
吉村大きなクマはネックレスしてたよね。
大貫そうそう。でも買ったはいいけど置くと邪魔だったので、衣装ケースにしまった記憶があるんですけど。どこにあるかな(苦笑)。
藤原デビュー30周年迎えられていかがですか?
大貫こうやって昔のお話をさせていただかないと思い出さなかったこともあるので、そのくらい年月が経っていたんだなって実感します。
吉村周年ごとに忘れていたことを思い出すみたいな。
大貫(スヌーピーのスウェットを見ながら)少なくとも、あのスウェットが値上がりするぐらいの年月は経ってるということですよ。あの色がだいぶ褪せるくらい。
吉村そう考えると30年は長いね。
藤原今後どのようなファッションを楽しんでいきたいですか?
大貫今回の撮影のための服を選ぶ際、クローゼットを見たら古着だらけだったので、やっぱり古着が好きなんだと改めて思いました。今後も変わらず古着を集めつつ、古着のリメイクとかのお洋服がきっと好きなんだろうなって。だからこのままのテイストでいくと思います。
吉村何でも着たいんです。カチッとしたものも着たいですし、黒っぽいモードなものも。もちろん古着も楽しみたい。あとそうそう、自分に合うゴワゴワしてないクタクタのネルシャツが欲しいかな。
大貫サイズ感はちなみにどれくらいがいいの?
吉村オーバーサイズかな。何かの上に羽織るっていう感じだから。最近はちょっとネルシャツが気になっていて。20代の頃に着てからずっと着てないですし。
藤原探しておきます! 先ほども話しましたが、僕にとってお2人は特別な存在です。90年代から原宿のファッションを引っ張り、なおかついまのアメカジやヴィンテージブームを作った方という印象です。今回の30周年のどこかで、当時のようにジーンズに古着のTシャツ、足元はレッドウィングというファッションを見せてほしいです。
大貫それはどこかでできたら頑張ります。
──30年という時間を経てもなお色褪せないPUFFYのスタイル。その根底にあるのは、気負わず“好き”を貫く姿勢だった。人から人へ、世代へと巡っていく服の物語は、これからも新たなカルチャーを生み続けていく。

Photo by Akinori Kawanishi
Text by Kei Osawa

Tags

この記事はいかがでしたか?

シェアリンクをコピーしました

この連載トップへ

服と人

Related Articles

Related Database