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レッドウィングは、いかにして アメカジの定番ブーツになったのか

2026.11.02
軽くもなければ、柔らかいわけでもない。脱ぎ履きにも時間がかかる。それでも履きたくなる魅力が、レッドウィングのブーツにはある。アメリカの実用靴は、なぜ日本でアメカジに欠かせない一足となったのか。レッドウィング・ジャパンの阿部聖也さんと、その足跡を辿ろう。

アメリカの実用靴が、日本で憧れの一足に

レッドウィングは1905年、アメリカ中西部のミネソタ州で誕生した。1970年代には日本でも存在が知られるようになり、1980年代初め頃に正式な流通が始まった。
写真左は鉱山の作業風景。発祥の地であるミネソタ州は北米有数の鉄鉱石の産地で、過酷な労働には頑丈なブーツが欠かせなかった。写真右の赤い羽根のロゴは、創業の地レッドウィング・シティのシンボルに由来する
「日本で広まった背景には、アメリカ製品への憧れがある」と阿部さんは語る。
その象徴が、レッドウィングも紹介された1975年刊行の『Made in U.S.A. catalog』だ。こうした雑誌がアメリカの衣服や道具を紹介し、現地の実用品をファッションとして楽しむ文化を日本に広めていった。
90年代には、俳優やミュージシャンの着こなしも後押しとなり、レッドウィングはアメカジを好む若者たちの憧れの一足となった。
創業者チャールズ・ベックマン。靴店を営むなかで品質に満足できず、1905年に自ら靴づくりを始めたという
1909年に4階建てへ増築された第1工場。現在も修理や商品開発などの拠点として使われている

長く履けるだけでなく、履くほどに魅力が増す

熱狂的なブームが落ち着いた後も、レッドウィングを履き続ける人はいた。
「レッドウィングは、トレンドとは別の次元にいるブランドだと思っています。なぜなら、一足買ってきちんと付き合っていけば、ずっと履き続けられるからです」
長年の愛用を可能にするのが、丈夫なレザーと堅牢な製法、そして修理できる構造だ。レザーの手入れを重ね、すり減ったソールを交換すれば、10年でも20年でも履き続けられる。
しかも、履くほどにレザーにはシワやキズが刻まれ、色や艶が深まっていく。長く履けることに加え、履き込むほどに変化する革の表情も、レッドウィングならではの魅力となっている。
左の写真はグッドイヤーウェルト製法の底部。右の写真は、主にアッパーに用いる成牛の革・ステアハイド。アッパーとソールを細革のウェルトを介して縫い付けるため、アウトソールを複数回交換できる
「私自身、高校生のときに両親から誕生日にプレゼントしてもらったブーツを今も愛用しています。きっかけは、木村拓哉さんが出演するドラマ。母も木村さんの大ファンだったんです」
定番としての地位を支えてきたのは、こうした一足を長く履き続けるユーザーたちだ。
2020年にはアメリカ本社がサイバー攻撃を受け、生産や供給が不安定になる事態も経験した。日本では入荷の見通しが立たないなか、公式YouTubeなどを通じて既存モデルの魅力をあらためて発信するなど、ユーザーと直接つながる取り組みに力を入れていった。
写真左は製法を示す図解。写真右はブーツの機能を紹介する広告で、サイバー攻撃で製造データが失われた際、長年保管されていた紙の資料が手がかりとなった

日本のアメカジを支える定番ブーツたち

モデルごとに異なる個性的なデザインもレッドウィングの魅力だ。阿部さんに、現在の売れ筋モデルを選んでもらった。
「6インチ クラシックモック」は、“アイリッシュセッター”の呼び名でも親しまれてきた一足。その名は、かつてハンティングブーツに使われた革の色が、同名の猟犬の毛並みに似ていたことに由来する。
オレンジがかった茶色のオロ・レガシーレザーは、表面に塗装を施さず、革本来の肌目を生かした仕上げ。ソールはクッション性に富む白いトラクショントレッド・ソール。「6インチ クラシックモック(875)」 59,180円(税込)
つま先に縫い目のない「6インチ クラシックラウンド」もアイリッシュセッターに引けを取らない人気を誇る。ブラックの「8165」にはアッパーにブラック・クロームレザーが、ブラウンの「9111」にはカッパー・ラフ&タフレザーが使われている。同じ形でも、革の色や質感で印象は大きく変わる。
丸みのあるプレーントゥが特徴の「6インチ クラシックラウンド」。写真上は「9111」で、写真下が「8165」 各55,880円(税込)
「鍛冶職人」という名を冠したワークブーツ「ブラックスミス」は、近年人気を伸ばしているモデルだ。「3339」にはミュールスキナー・ラフアウトレザーを採用している。
昼は作業場で履き、夜は磨いて街へ出る。そんな時代のブーツに着想を得たモデル。革は繊維密度の高い銀面を内側に残したまま裏返して使うことで、丈夫さと擦り傷の目立ちにくさを実現。「ブラックスミス(3339)」 62,700円(税込)
明るいベージュのラフアウト・レザーが使われた「9インチ ペコス」は、アメリカの作業靴として親しまれてきた「866」をベースに、1996年に日本企画として誕生した。丸みのあるつま先と白いソールを備え、ウエスタンブーツの面影を残す。
乗馬に適したウエスタンブーツを幅広い作業に使えるよう発展させた「ペコス」。なお、「ペコス」の呼び名はレッドウィングだけが使える登録商標。「9インチ ペコス(8168)」 61,380円(税込)
用途に応じて生まれたブーツを、着こなしの個性として取り入れる。日本においてレッドウィングは、実用性に加えて独自のスタイルを楽しむ靴として定着した。

エンジニアブーツを主役にした令和のアメカジ

この日、阿部さんが履いていたのは「11インチ エンジニア」。1980年代後半から90年代前半の渋カジブームで人気を博した「2268」のスタイルを受け継ぐモデルで、黒の下から茶色が覗く“茶芯”の経年変化も楽しめる。
2016年に登場した本作はつま先の先芯がスチールから柔らかな樹脂に変更されている。その後一時生産を休止していたが、2025年に復活を遂げた。現在は予約販売中。「11インチ エンジニア(2966)」 84,480円(税込)
合わせたのはモノトーンのオンブレチェックシャツとディッキーズのブラウンのワークパンツ。ベストとキャップはクロムハーツで揃えた。
オーセンティックなアメカジをベースにクロムハーツを合わせ、全体の色数を抑えるのが阿部さん流だ。
阿部さんはヴィンテージのオンブレチェックシャツのコレクターでもある。ジーンズではなくブラウンのワークパンツを合わせるところが、エンジニアブーツの着こなしをスタイリッシュに見せるコツだとか

愛用者のスタイルこそが、一番説得力を持つ

レッドウィングは若い世代にも着実にユーザーを増やしている。次の世代に魅力を伝えるうえで、阿部さんが重視するのは、身近な愛用者の存在だ。父親や会社の先輩のブーツやその着こなしを見て、興味を持つ若いユーザーが多いという。
「40代、50代の方々が履き続けることが、次の世代との接点になると思います。長く使えることや経年変化の魅力も、実際に履いている一足を見れば伝わりやすいですから」
ショールームには、スタッフが長年履き込んだブーツも並ぶ。深いシワや艶といった経年変化もレッドウィングの醍醐味だ
ブランドもそのつながりを後押ししている。公式YouTubeや全国のイベントでユーザーと交流し、Instagramの「#MyOnlyRedWings」には、愛用者のブーツの姿や着こなしが集まる。
アメリカで生まれた実用靴は海を越え、日本のストリートで一世を風靡した。ブームが落ち着いても、丈夫なつくりや経年変化の魅力によって履き継がれ、愛用者のスタイルが次の世代へとその魅力を伝えてきた。そうしてレッドウィングは、日本のアメカジに欠かせない定番ブーツとして深く根づいているのだ。

Photo by Akinori Kawanishi
Text by Ryota Osujo

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