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16年のパタンナー経験から生まれた「CEIVE(シーヴ)」の“0.5歩先のデザイン”

2026.10.19
一見するとプレーンだが、細部には緻密な設計が潜んでいる。「CEIVE(シーヴ)」が掲げるのは、「全てにおいて理由のある服」。
約16年にわたり国内メゾンでパタンナーを務めた麻生 綾祐氏が追求するのは、着る人に解釈を委ねる「余白」と、日常に変化を加える“0.5歩先のデザイン”だ。
今回は麻生氏がブランドに込める思いと、デニムをはじめとするCEIVEのもの作りについて話を聞いた。

16年のパタンナー経験が支えるCEIVEの服作り

文化服装学院卒業後、国内メゾンで約16年パタンナーとして経験を積んだ麻生氏は、退職後にCEIVEをスタートさせた。肩書はデザイナーへと変わったが、本人の感覚は変わらないという。
「パターンを引くことがデザインの一部だと考えています。作りたいものを考え、自分でパターンを引いて服にする。前職のときから、やっていることは一緒ですね」
デザインとパターニングを分けず、構造から服を考える。その姿勢がCEIVEのもの作りの土台になっている。

「余白」を残し、着る人に解釈を委ねる

「CEIVE」は、receive(レシーヴ)、perceive(パーシーヴ)、conceive(コンシーヴ)などに含まれる語根に由来する。言葉が接頭辞によって意味を変えるように、服も着る人やシーンによって異なる表情を見せてほしいという思いが込められている。
「服自体を完成品と捉えるのではなく、着る人のマインドやスタイルによって、その時々でいろいろな見え方ができるブランドにしたいんです」
素材やパターン、仕様を「なんとなく」で決めることはなく、全てに理由を持たせているという。その一方で作り手の意図を押し付けないことも大切にしている。
「全てを伝えようとしてしまうと、それだけが正解の服になってしまう。あくまでもファッションは着る人の自由。だから、あえて前面に押し出して語ることはせず、『余白』を残したいんです」
作り手の明確なロジックと、着る人の自由な解釈。その両立がCEIVEらしさを形作る。
CEIVEのアトリエにて
デニムパンツなどのサンプルが並ぶ

日常着に加える“0.5歩先”の変化

CEIVEが目指すのは日常の延長線上にある服。そこに、素材や形、着こなし方によるわずかな変化を加える。麻生氏が“0.5歩先のデザイン”と呼ぶ考え方だ。
「一歩ではなく0.5歩。やりすぎず、着た人にしかその違いが分からない程度の変化を大事にしています」
一見ベーシックでも、袖を通すとシルエットのわずかな歪みや素材の持つ独自の質感に気づく。その繊細な違和感が、CEIVEを単なるベーシックウエアとは異なる存在にしている。
「一見普通だけれど、『やっぱり何か違う』。ブランドから強く提案するより、着る人自身に感じ取ってほしいですね」
主張しすぎず、身体感覚に静かに訴える。それがCEIVEのデザインの核心だ。

長く着ることを前提に選んだデニム

CEIVEにとってデニムは、ブランドの哲学を象徴する素材だ。
「長く着続けてもらうことが大前提です。デニムは丈夫で、破れてもサマになるし、リメイクもできる。ブランドの考えを体現する素材だと思っています」
設立当初の2シーズンはほぼデニムでコレクションを構成した。デニムからスタートし、それに合うアイテムを少しずつ広げていくのがCEIVEの基本姿勢だ。ワークウエアを出自とする無骨な素材でありながら、色落ち加工などで人工的な風合いを加えるのではなく、クリーンな表情を重視。素材そのものの良さと、緻密なパターンが生むシルエットで質の違いを見せる。
CEIVEのデニムパンツ

クラシックを再構築した「CLASSIC(クラシック)」

ブランド最初のプロダクトで、現在も定番として展開される「CLASSIC(クラシック)」。ステッチの色使いやベルトループなどにはヴィンテージに見られるクラシックな仕様を取り入れながら、過去のデニムを復刻したものではない。シルエットは麻生氏自身の解釈によって新たに構築されている。
「腰回りからヒップはタイトにしつつ、股上を少し深くしています。すっきりしているけれど、どこか抜け感がある形です」
脇のカーブを抑え、タイトなヒップラインを保ちながら股上だけを深くする。通常なら相反しやすい要素を、パターン上の操作によって両立させた。長年パタンナーとして膨大な数の線を引いてきた経験が、クラシックな仕様の中に新しいバランスを生み出している。過去の名作をただなぞるのではなく、今の感覚で新たなスタンダードを作ろうとする姿勢が表れた一本だ。
CLASSIC(BLACK) 53,900円(税込)
CLASSIC(INDIGO)LOOKBOOKからの一枚

パターンから生まれたねじれたデニム、「TWIST(ツイスト)」

“0.5歩先のデザイン”を象徴するのが「TWIST(ツイスト)」だ。脇線が脚に巻き付くようにねじれたシルエットは、奇抜さではなく、パターンから導き出された。
「テーパードパンツを斜めに履かせたらどうなるか、という発想が始まりです。線を移動させるだけではなく、実際に斜めに履かせるための構造を考え、意図的にねじっていきました」
ねじれによって裾には内側と外側で距離の違いが生まれ、前後に長さの差が生じる。通常ならきれいな直線になるよう修正する部分だが、麻生氏はその差をあえて残した。単なる装飾として線をずらすのではなく、実際にパンツを斜めに履かせる構造を突き詰めた結果として生まれた歪みだからこそ、その痕跡までをデザインとして見せるためだ。
「線を一本引くのにも意味がある。なんとなく違いが出るからではなく、歪みを残す理由まで含めて“0.5歩先のデザイン”だと思っています」
構造を考え抜いた結果として現れる違和感。そこにCEIVEのもの作りの本質がある。
TWIST WIDE 53,900円(税込)LOOKBOOKからの一枚
TWISTしたパターンにより段違いなった裾のディテール

シルエットと素材で見せる、クリーンなワークウエア

その考えはデニム以外にも通じる。「PADDED NEP TWILL COVERALLS(パデッド ネップ ツイル カバーオール)」は、ワークウエアをシルエットで再解釈した一着だ。
「身幅も袖幅も広く取りながら、着丈は長くしすぎない。奇をてらうのではなく、そのバランスの良さで見せたいと思いました」
大きなパッチポケットやコーデュロイの襟といったワーク由来のディテールを残しながら、印象はあくまでクリーン。麻生氏が考える「雰囲気」は、ダメージ加工や色落ちといった表面的な演出で作るものではない。パターンが生むシルエットや、素材そのものが持つ力によって自然に立ち上がるものだ。
PADDED NEP TWILL COVERALLS 107,800円(税込)
「WOOL RAGLAN OVER COAT(ウール ラグラン オーバー コート)」も同じ思想から生まれている。スーパー100とスーパー170という極細番手のウール糸を二重織りにしたショートビーバー生地を用い、重量感と豊かなボリュームを生かしたシンプルな設計に仕上げた。装飾に頼らず、服の骨格と素材で語る姿勢がここにも貫かれている。
WOOL RAGLAN OVER COAT 159,500円(税込)LOOKBOOKからの一枚
CEIVEは現在、全国の取扱店でのポップアップなど、実際に服へ触れてもらう機会を重ねている。
「見た目だけでは分からないブランドとしてのこだわりなどを、まずお店のスタッフさんに伝え、その先のお客様に届けていく。地道にその機会を増やしたいと思っています」
「全てにおいて理由のある服」。その言葉は、緻密に設計しながらも答えを押し付けず、最後の解釈を着る人に委ねるCEIVEの姿勢そのものだ。プレーンな日常着に潜むわずかな違和感は、パターン、素材、仕様を考え抜いた先に生まれている。“0.5歩先”という絶妙な距離を保ちながら、CEIVEは新しい日常着の形を探り続けている。

PROFILE

麻生 綾祐(あそう りょうすけ)

株式会社 Breathe

文化服装学院卒業後、国内メゾンブランド入社。約16年にわたりパタンナーとして勤務。退職後、2025年春夏シーズンよりCEIVEスタート。

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