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2023.10.24

アパレルの最新機器が低価格で利用できる「ビジネスサポートファクトリー」の魅力とは

東京都港区にある港区立産業振興センターは、最新の情報や技術を提供する「未来発展型の産業振興拠点」を目指す施設だ。
そのなかに、“ファッションテック”を推進し、クリエイター向けのアパレル3Dソフト「CLO」などの最新のアパレル機器を取り揃えている「ビジネスサポートファクトリー」と呼ばれるビジネス支援スペースがある。
ファッションテックとは、ファッションとテクノロジーが融合した分野を指し、近年急速に注目を集めている領域だが、なぜ港区がこのファッションテックを推進しているのだろうか。また、施設にはどのような機器があり、具体的に何を生み出すことができるのか。
今回は港区立産業振興センターの永田 愛海さんに、ファッションテック推進の背景、実際の活用例、今後の展望について伺った。

日本で数少ない“ファッションテック”に特化した施設

ビジネスサポートファクトリーは、クリエイター・デザイナー・エンジニアをはじめ、初心者からプロまで幅広く利用可能なアパレル機器を取り揃えている。
アパレルCAD(服飾特化の設計支援ソフトウェア)や電子刺繍ミシン、UVプリンタ等を使用してアパレル・雑貨を制作するだけでなく、「CLO」と呼ばれるアパレル3D着装シミュレーションシステムを使用して、現実世界のアパレルだけでなくデジタル空間上のアバター制作も可能だ。
また、機器の利用だけでなく、ビジネス支援やクリエイターコミュニティの形成を目指して定期的にセミナーを開催しているのも特徴のひとつである。
このように、施設では利用者のファッションテックをサポートする体制が整えられているが、そもそもなぜ、港区がこれらの取り組みを行っているのだろうか。
「港区には、ファッションの街とも言える青山・表参道や、現代アートの文化が根付いている六本木があり、テクノロジー産業やスタートアップも多いという特色があります。そこで、この2つの要素を持った港区こそアパレル産業のデジタル化、“ファッションテック”推進のポテンシャルがあるのでは、と考えています」
3Dプリンタやカッティングマシンなど、多様な機器を備えた所謂“ファブラボ施設”は日本にたくさんあるが、“ファッションテック”に特化している施設は多くない。
「最先端のアパレル機器を、公共の施設ならではの低価格で利用できるように設定することで、これからのアパレル業界を担うクリエイターの支援施設としてサポートできればと思っています」と、永田さんは運営者としての想いを語る。

最先端のアパレル機器を低コストで利用可能

ビジネスサポートファクトリーの最大の特徴は、最先端のアパレル機器が利用できることだが、具体的に何ができるのだろうか。
「CADを使用してアパレル製品のパターン作成から、各種ミシンによる縫製、アイロンによる仕上げまでの工程を、すべて施設内で行うことが可能です。また、昇華転写プリンタを活用して、オリジナルプリント生地の制作や、電子刺繍ミシンでオリジナル刺繍などの加工もできます。
個人デザイナーの方は販売品の製作や、ある程度販売数のあるブランドを運営されている方は、工場で量産を行うための試作等にご活用いただけます」
ビジネスサポートファクトリーを活用することで、アパレル機器を持っていない人でも、アイディア次第でさまざまな製品を生み出すことが可能になる。一方で、これからファッションテックに取り掛かる人にとっては、どの機器を使えばいいか分からない人も多いだろう。
「ファッションテックの最先端を体感するなら、『CLO』をおすすめします。すでに商社や一部のアパレルメーカーでは導入が進んでいますが、サンプルを制作することなくリアルな着用感を3Dでシミュレーションすることができるアパレル特化の3Dソフトです。
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