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2023.11.17

マスク/義体/装甲服…VRの【正装】としてのサイバーパンク・ファッション

2020年代に入り、メタバースに現れた「アバターを着る」という新しいファッションの形。そのカオティックな熱狂を象徴するムーブメントのひとつが、VRChatで行われる「集会」カルチャーだ。クローズドなサーバーに世界中から愛好家がアクセスし、おのおのアバターを披露しながら語り合う。そこにはパンデミックが生み出した異形の社交界といった雰囲気すら漂っている。
なかでも、超がつくほどディープな集会がある。
「サイバーパンク集会」。メカ化、人外化、巨大アバターは当たり前。朽ちかけた建造物とネオン広告、映画『ブレードランナー』のような荒廃した風景に、このうえなくゴージャスで挑発的な「改変(アバターをカスタマイズすること)」と、実験的なオリジナルアバターが行き交う。データ消費量はもちろん超重量級だ。
本記事では「サイバーパンク集会」主催者のDJ⑨氏にインタビュー。いままでの参加者たちの個性的なスタイリングを多数掲載。いま仮想空間で起きているアバターファッションの革命家たちの姿に迫った。
ファッションは、どこまで私たちの現実を拡張できるのだろう?
PROFILE|プロフィール
DJ⑨
DJ⑨

現実/仮想/創作を漂うサイバーパンク野郎。
主な活動に「サイバーパンク集会」主催、メタバース内で撮影された映画『NINE-PREQUEL OF EMETH-』主演など。

「魔改変」のパーティーへ

「サイバーパンク集会」について教えてください。
VRChatで行っている「サイバーパンク」愛好ユーザーのための集会です。私を含む運営メンバーのインスタンス(個人サーバー)にリクエストして参加するクローズドなイベント。2020年4月に第1回を開催し、不定期開催で続けてきました。
photo:seilin
photo:seilin
参加者は第1回が約40名。150名ほど集まった回もあります。BOOTHなどで販売されるアバターを自分なりにカスタマイズする「改変」はもちろん、クリエイターが自身自分のためにイチからモデリングした、世界に一体しかない「フルスクラッチ」のアバターを纏ったユーザーも多くいます。
海外からユーザーが訪れることも。アジアやアメリカ東海岸からなど、エリアもさまざまです。
メタバースならではのボーダレスな集会です。
ええ。VRは距離の概念が現実とまったく違います。何人集まってもコロナに感染することもないし、トラブルが起きても暴力で傷つけ合うこともない。イベントに参加するハードルが低くなり、集会の醍醐味であるコミュニケーションのおいしいとこどりができる。
開催場所はVRChat内のワールドを毎回選んで、オーナーにお借りする形式です。
どのような基準で開催するワールドをセレクトしていますか。
私が好きなサイバーパンクは、近未来、栄華極まる摩天楼に住む支配者階級と、スラムに暮らす貧困な労働者階級がいびつに共存している世界観です。街を見上げればきらびやかなネオン広告、足元にはゴミの山が溢れている。
最新回(2023年10月28日)会場より<br>world:NAKADINER2077<br>photo:れにお®️
最新回(2023年10月28日)会場より
world:NAKADINER2077
photo:れにお®️
そうした光と闇の強いコントラストのなかで生きるさまざまな人々の尊厳と飢餓感、反骨精神が体現された世界。同じ価値観を愛好するクリエイターが作ったワールドに出会うと、ぜひ集会の舞台にしたくなります。
集会内ではどんなイベントを?
運営側からは余計な仕掛けはしません。他の参加者に迷惑をかけなければ何でもあり。同じ嗜好の人が集まれば自然と化学反応が生まれますから。
photo:suma
photo:suma
アニメやゲームのコスプレをしていればその作品の話題で盛り上がりますし、何に影響を受けてアバターをデザインしたのか、どんなアイテムを使っているのかというVRファッションの話も出ます。
集まったアバターはデコラティブそのものです。
photo:suma
photo:suma
photo:電人コムソー
photo:電人コムソー
アバターの方向性はユーザーそれぞれですが、パーティクル(アバターの周囲に粒子が追従するエフェクト)やエミッション(ネオンのような光)を巧みに使っている方は多いですね。
model:AZAMI、hibiki<br>model/photo:ギュガちゃん
model:AZAMI、hibiki
model/photo:ギュガちゃん
人からバイク型に変形するアニメーションを備えていたり「光学迷彩」で目の前で消えてしまったり。巨大なロボットの姿の参加者もいます。毎回新鮮なアイディアが集まりお互いに刺激になる。
model:kanuchibe<br>model/photo:蒸しパんスリケン
model:kanuchibe
model/photo:蒸しパんスリケン
ファッションが持つ力は、リアルもバーチャルも変わらないと思います。ただし、メタバースのファッションはより自由で、可能性に溢れています。
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