デザイナーのスサナ・リベイロ(Susana Ribeiro)は、この地域で生まれ育った経験から、古くから続くカーニバルの熱気と色彩を現代のファッションへと昇華させることを試みた。そのコレクションの多くは地元の職人たちの手によって丁寧に作られ、伝統的な手工芸技術と祝祭の精神が一着一着に息づいている。
今回は、ポルトガルのカーニバルの伝統と匠の技が融合した「Entrudo」の魅力に迫る。
カーニバルが導いた新たな挑戦
カーニバルと聞けば、多くの人が南米ブラジルを思い浮かべるだろう。しかし、ヨーロッパにも数世紀にわたってカーニバルの伝統を守り続ける地域がある。ポルトガル北部に位置する小さな村、ポデンセもそのひとつだ。ユネスコ無形世界遺産にも登録されているポデンセのカーニバルは、その起源をローマ時代にまで遡るとされている。春の訪れを前に豊作を祈る儀式から始まったという説が残されている。
3月上旬から中旬にかけての「肥沃な日曜日(Domingo Gordo)」から3日間続くこの祭りで特徴的なのが、「カレトス」と呼ばれる仮装者たちの存在だ。地元の若い男性たちが、マスクをかぶり、カラフルなフリンジ付きの衣装に身を包んで“逃げた悪鬼”に扮する。彼らは跳ね回り、叫びながら村中を駆け巡り、地元の人々もそれに呼応するように踊り騒ぐ。これこそがポデンセ流カーニバルの真髄なのである。