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2023.09.13

「つくる人とつかう人の暮らしを豊かに」itobanashiが伝える、インド刺繍の魅力

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インドの伝統工芸"インド刺繍"。インド各地で独自の技法とデザインで発展してきたこの刺繍は、衣類をはじめ装飾品や家具などさまざまなものに施されている。
そんなインド刺繍の魅力を伝えるファッションブランド「itobanashi(イトバナシ)」。伊達文香さんが代表を務めるこのブランドは、インドの刺繍生地から衣服をつくって販売している。
伊達さんがインド刺繍に魅せられ、起業を決めたきっかけは学生時代に遡るという。itobanashiが誕生するまでの背景にあるストーリーをインタビューで深掘りした。
PROFILE|プロフィール
伊達文香(だてふみか)

CEO、デザイナー
広島大学大学院在学中にitobanashiを設立。2010年より年に2回のペースでインドを訪れ、衣服のデザイン全般を手掛ける。

歴史や文化、人々の暮らしを反映するインド刺繍

まず、インドやインド刺繍との出会いについて教えてください。
2011年の大学1年の頃にインドを訪れたことで、インドと日本の社会的な違いや女性の問題に関心を持つようになりました。その後、学生主導でスタディーツアーを定期的に開催し、貧困や教育格差をテーマに活動しました。
その中で、人身売買の被害を受け、違法な売春婦として働かされていた女性たちを支援するための職業訓練を行うNGOと出会いました。
その職業訓練では女性たちに縫い物を教えており、そこでつくられる商品はとても魅力的でしたが、販売することが難しいとの相談を受け、ファッションショーを通じて販売促進や女性たちの達成感を高める機会を提供したいと考えました。
大学院進学後、1年間の休学を経てインドに半年間留学。その間、ファッションショーを企画し、そのときに出会ったのがインド刺繍でした。
インドに留学していた際、職業訓練中の女性が縫っていた刺繍に「かわいいね」と声をかけたところ、「この刺繍をしていると故郷のことを思い出せるの」と言われました。その一言がとても衝撃的で、人身売買の被害を受けた女性が故郷を慈しむことができる刺繍に興味を持ったんです。
その後、インドの各地を旅して刺繍を学び、2016年に個人事業として「itobanashi」を立ち上げました。2017年には株式会社化し、現在はインドの刺繍を生かした服や雑貨を販売しています。
「itobanashi」は、どんなブランドなのでしょうか。
 "つくる人とつかう人の暮らしを豊かに" というスローガンを掲げ、刺繍職人をはじめとした、つくる人には適正な賃金や労働環境、そして高い技術の維持継承を目指すブランドになります。
お客様をはじめ、つかう人の暮らしが丁寧につくられた手仕事で彩られるような、つくり手の想いが伝わるような衣服や雑貨を届けることを目指しています。
ブランドに関わる全ての人が、おはなしの主人公のように繋がっていけるように、という想いをこめて、"糸からはじまるおはなし" で、ブランド名は「itobanashi」という名前をつけました。
itobanashiで扱うインド刺繍の種類(アリ刺繍・カンタ刺繍・チカン刺繍)について教えてください。
アリ刺繍はカシミール地方発祥の刺繍です。"アリ"と呼ばれるかぎ針を使います。寒い地域ならではのウール糸や生地を使うのも特徴で、刺繍枠を使わずに刺繍します。職人の男女比率はちょうど50%ずつくらいで、刺繍が産業として残っている証拠でもあります。
カンタ刺繍は、ベンガル地方(インドの西ベンガル州とバングラデシュ)発祥で、日本の刺し子と同じ技法を使っています。
インドの刺繍には珍しく、人や動物といった生き物がデザインに取り入れられます。偶像崇拝が禁止されたイスラム教の人が行うことの多い刺繍仕事で、人や動物が出てくる理由としては、一説には宗教観が生まれる前から、村の暮らしなどの歴史を残すツールとして、カンタ刺繍があったからでは、と言われています。
チカン刺繍は、インドのウッドラプラデシュ州の州都ラクノウという地域が発祥です。技法は33種類からなり、複雑な技法の組み合わせで美しさを醸し出します。特に"シャドウワーク"という生地の裏側にたくさん刺繍する技法が一番有名と言われます。
ムガール帝国時代は王族しか身につけられなかった刺繍で、白一色の糸で行う"ホワイトワーク"によって、その高貴さを演出しています。今もなおまったく機械化されていない、手刺繍のみの技法となります。
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